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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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January 18, 2015
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 オペラファンならご承知の方も多いと思いますが、オペラの世界では「ロッシーニ・ルネッサンス」ということがよく言われます。20世紀の末から、ロッシーニの知られていなかった作品が知られるようになり、劇場のレパートリーとして復活してきた現象です。

 その震源地になっているのが、生地ペーザロで行われる「ロッシーニフェスティバル」なのですが、そのフェスティバルの芸術監督であり、ルネッサンスの立役者であるアルベルト・ゼッダ氏が、藤原歌劇団「ファルスタッフ」のため来日をしている機会に、ロッシーニについての講演会を行いました。春に大阪フェスティバルホールで「ランスへの旅」を指揮するので、同作の魅力の紹介もかねてのことです。

 ゼッダ先生、ロッシーニのクリティカルエディションの校訂作業でも有名なので、学者肌のところもあるわけですが、もともとは指揮者。校訂を始めたきっかけも、自分で指揮した「セビリヤの理髪師」のレンタル譜を自筆譜とつきあわせてみたらあまりにも違っていて、訂正を書き込んだ、それがきっかけということらしい。自分は指揮者だからということで初めは辞退したのだが、やることになった。

 で、各地の図書館で、まだ出版されていないロッシーニのいろんな作品の自筆譜にあたったら、これがすごく魅力的で、「ロッシーニに恋をしてしまった」。「セビリヤ」など軽い作品の作曲家だと思われていて、ドラマティックなセリアの存在は知られていなかった(出版されていなかった)が、それらの作品が素晴らしかった。ロッシーニの真の偉大さ、独創性、神秘性がそこにはあった。

 (今では考えられませんが、ゼッダ先生がはじめそのようなことを周囲に言ったら、おかしなことを言いだした、と言われたそうです )

 そんな経緯があり、ロッシーニの魅力を知らしめるために、1979年に生地ペーザロに財団を創設して批判校訂版による全集を刊行しはじめ、80年からはロッシーニフェスティバルを創設。セリアをはじめ知られざる作品の上演に取り組んでいます。このフェスティバルにより、「新しいロッシーニ像が広まった」(ゼッダ先生)。とくに、1984年に蘇演された「ランスへの旅」は一大センセーションを巻き起こしました。オペラの常識を超えたオペラだったからです。その理由は、筋らしい筋もないのに、「ロッシーニの中でももつとも美しく作られている」から。「ロッシーニのオペラのすべてがわかる」。 

 ゼッダ先生いわく、「「ランス」には、ロッシーニが理想とした「感情」が描かれている」という。それはヴェルディやプッチーニの描いたリアルな感情ではなく、抽象的なもの。個人のレベルを超えた、人間を理想化した上での感情。それを音楽、歌で行うのが、ロッシーニの大きな魅力ということらしい。

  「だからロッシーニの音楽はモダンなんです。彼がオペラの作曲をやめたのは、モダンすぎたからなんです。知的。頭脳的。」

 それは分かる気がします。 

 けれど、魅力はそれだけではない。 

 「ロッシーニは、感情を軽くほほえみながら表現する。セリアのような悲劇でも喜劇的だし、ブッファのような喜劇でも悲劇的。両面がある。」

 そして音楽的な快感。「リズム、スピード感」。これは、バロック音楽にも共通する部分がありますね。

 日本にも、熱烈なロッシーニファンがかなりいて、毎年ペーザロもうでをしているひとも少なくありません。とはいえ新国立劇場での上演は少なく、ロッシーニの本格的な受容はこれからという面もあります。けれど、日本人はその分、「ロッシーニに対する偏見(=軽い作曲家という)がないので、幸運なのではないでしょうか」というのがゼッダ先生の意見でした。そして知的な日本人に、ロッシーニの音楽は受け入れられやすい、という意見も。

 1928年生まれ、87歳になったばかりのゼッダ先生。信じられないほどお元気で、お話もよどみなく、興味深く、引き込まれました。ゼッダ先生というマルチタレント(演奏も研究も教育も)な使徒を得て、天国のロッシーニもほんとうに幸運なことと思います。

 4月の大阪「ランスへの旅」の情報はこちらです。

 http://www.festivalhall.jp/program_information.html?id=574

  そしてゼッダ先生、今回の来日は、最初に書きましたが藤原歌劇団「ファルスタッフ」の指揮のため。これは今年の初めに一番楽しみにしている公演です。あるところのインタビューで、「ファルスタッフ」は「ポッペアの戴冠」とならんで、イタリアオペラ史上の傑作だ、と語っていらっしゃいました。それについても別の機会を設けて語ってほしかった、と切に思います。

 今回の講演でも、「ファルスタッフ」について、ヴェルディがロッシーニ的なものを獲得した作品、だとちょっと触れていました。悲劇のエッセンスがある喜劇。(モーツァルトの「ドンジョヴァンニ」や「コジファントウッテ」も同じだそうです。)悲劇ばかり書いてきた、分かりやすい大衆的な部分を棄てなかったヴェルディが、ロッシーニ的な抽象的な世界に足を踏み入れた作品ということでしょう。それは、どちらが上ということではなく、ヴェルディはヴェルディのやり方を全うした上で、最後にそのような世界に遊んだ、というこだと思います。

 そういえばリッカルド・ムーティは、「ヴェルディの作品は2つに分けられる。「ファルスタッフ」以前と「ファルスタッフ」だ」と語っていたのでした。 

 藤原歌劇団「ファルスタッフ」の公演情報はこちらです。

 http://jof.or.jp/2015falstaff/  

  

  

 






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最終更新日  January 18, 2015 11:07:26 PM


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