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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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April 13, 2015
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 観てきました。

 今シーズンのメトライブビューイングで一番楽しみだったロッシーニ 、「湖上の美人」。3月にも現地で観たのですがすばらしく、ライブビューイングでもぜひ観たいとまた期待が高まりました。ビューイングの収録日も違うし、映画館で観ること、そしてインタビューを観ることも楽しみだったからです。

 いや、ほんとに、楽しめました。

 歌手陣は、あちこちでも書いてきましたが本当に粒揃い。今のロッシーニ歌手の充実は、ひょっとしたら初演当時以来なのではないでしょうか(まちがいなく「ロッシーニ・ルネッサンス」の成果です)。 輝かしい声がいちだんと深く、太くなったフローレス、情感豊かな声に劇的表現力が加わったディドナート、主役2人は歌唱の見事さ完璧さに加えて、それぞれの変化もかいま見られたのが興味深かった。フローレス、ひょっとしたら「仮面舞踏会」なんか歌ってくれたらいいのではないかと思ってしまいました(ロッシーニファンには怒られるかもしれませんが)。ディドナートは、インタビューでも「ロジーナやチェネレントラは卒業」と語っていましたが、やはりこれからはより劇的な役、ひょっとしたら「ノルマ」なんかもいいのではないかと想像してしまったり。

 ロドリーゴ役のオズボーンは、現地で見た時より好調のようで、明るめの声にははりがあり、テクニックも完璧に近いもの。第2幕の三重唱で同じ旋律をフローレスと張り合う部分は、まさに歌の快楽を味わいました。そして、素晴らしかったのはマルコム役のバルチェッローナ。メッゾの深さとイタリアらしい明るさを備えた声、ディクションが完璧で、せりふがくっきり浮かび上がるのも素晴らしい(これはフローレスも同様です)。恋に悩む男性(美人なのにね〜)という役どころの掘り下げ方も同に入っていて、貫禄の域。もともとバルチェッローナは、同役のような、ロッシーニのオペラ・セリアのズボン役で世界的名声を獲得したひとなのですが、なるほどこれは彼女の右に出るひとはなかなかいないだろうな、と思わせられるものでした。同じロッシーニを得意とするメッゾでも、ディドナートやバルトリはそうではないですから、興味深いです。

  マリオッティの指揮もほんとうに素晴らしいものでした。柔軟で、繊細で、表情に富み、テンポ感も抜群で、ぴた、と音楽につけている。ロッシーニのオーケストレーションの多彩さをあぶり出していたのはさすがとしかいいようがありません。ライブビューイングへの登場はもう4作位になると思いますが、初めてインタビューにも出てきてくれて、「「湖上の美人」は、生まれて初めてはまったオペラ」だと語っていたのには驚きました。それは、ペーザロのロッシーニフェスティバルの総裁の息子さんですから、子供のころからロッシーニ漬けだったようですが、それにしても初めてはまったオペラが「湖上の美人」とは。。。 

 マリオッティいわく、「湖上の美人」は「水のようなオペラ」だという。とらえどころがない、多面的な作品だということでしょうか。そして、「せりふにないことを音楽が語っている」とも。たとえばジャコモ(=ウベルト)とエレナの二重唱では、エレナが拒んでいるはずなのに音楽には官能的な雰囲気がある、エレナは相手の正体を知らないが、何かを感じているはず、と。なるほどねえ。プッチーニの「トスカ」第2幕での、スカルピアとトスカの二重唱に流れる微妙な空気のようなものでしょうか。

 主役歌手4人ともインタビューに出てきてくれましたが、みんなこの作品を知り尽くしていて、それぞれ自分の意見がある、とても貴重なインタビューでした。何しろこの4人、あるいは少なくともオズボーン以外の3人は、この作品を何年も、世界中で、それもマリオッティの指揮で歌いつづけて、紹介し続けている「湖上の美人」チームなのです。

 ディドナートは、「平和を追い求める」エレナという人物像に心から共感していましたが、 彼女自身、貧しい家庭の子供たちとモーツァルトのオペラをやったりするチャリティ精神の持ち主で、とても彼女らしいと思えましたし、フローレスは、冗談をとばす余裕を見せながら(たぶん作品を手の内にしている余裕もあるような)、「この作品は歌唱芸術の究極。ロッシーニは歌手のことをよく考えて作曲してくれている。第2幕冒頭のアリアは大好きだが、その前にちゃんと声を休めることができる」と。第2幕冒頭のアリアは生でも映画館でも絶品でしたが、この発言をきいて納得できました。

 2人揃ってできたオズボーンとバルチェッローナ。ロッシーニは「喉にいい」というバルチェッローナ、「フランスものを歌うのにもとてもよかった」とオズボーン。バルチェッローナには3月にメトでインタビューできましたが、噂通りの明るく素晴らしい人柄で、とても楽しい時間を過ごすことができたのですが、インタビューでもその太陽のような人柄はよく伝わりました。最近はヴェルディの諸役(そしてこの春には「カヴァレリア」のサントゥッツアのロールデビューもしたようです)など重い役柄にもシフトしていますが、そのことを訊ねられると、「両方をやるのがいい」と。インタビューでも同じことを言っていました。それを続けるつもりだ、とも。

 (このような歌手たちをみていると、これからはロッシーニ歌いがヴェルディに進出するのが普通になるように思えてきますし、期待できると感じます。)

 ライブビューイングのインタビュー、こういう内容をきけることは理想的です。よく「ただ役になり切るだけ」という発言があったりしますが、物足りない。やはり作品に対してあるいは作曲家に対してどう考え、掘り下げているのかききたいものです。

 映画館で観るのは、やはりせりふがよくわかり、舞台や表情の細部も確認できるのが長所です。今回はカメラワークもよかったような気がします。映画の影響かアップが多いことがしばしばあり、そうするとオペラ全体の雰囲気がつかみにくくて不満が残るのですが、今回はそういうこともありませんでした。

 スコットランドの大自然を意識したというポール・カランの演出は、実はこのプロダクションが初演されたサンタフェの自然に囲まれた劇場で観るといちだんと効果的だ、という話もききました。サンタフェにも、一度は足を運んでみてみたいものだと、映画館で思ってしまったことでした。

 「湖上の美人」は17日までです。お見逃しなく。

 http://www.shochiku.co.jp/met/program/1415/index.html#program_09 

 そして、うっかりしていましたが、バルチェッローナは6月にハンガリー国立歌劇場の公演で来日し、「セビリアの理髪師」のロジーナを歌います。「とても楽しく、リラックスして歌える役。大好き」だと語っていました。お見逃しなく!

 http://www.concertdoors.com/concert/476/ 

   

 






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最終更新日  April 14, 2015 07:18:02 PM


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