|
カテゴリ:沖縄
三上智恵監督の新作「戦雲」(いくさふむ)を桜坂劇場で。沖縄は米軍基地も何だけど、近年は離島に展開する自衛隊拠点の拡張が問題だ。そのことを以前から訴えてきた三上さんの、南西諸島での自衛隊基地と住民たちの関係に内容を絞った1作。
語り部となるのは、石川真生さんの写真にもよく登場する石垣島の山里節子さん。自衛隊拠点が築かれた島を順に辿る。まずは与那国島。与那国馬の放牧場を潰して作られた駐屯地、以前は雨宿り出来る場所があった馬たちが所在無さげに公道に散らばっている。モイストロールカフェの猪俣哲さん、かなり肩身の狭い思いをしているようだけど、健在ではあったか。昨年亡くなってしまった石垣島在住のKさんと共に、2016年に与那国島を訪れた際に、店を訪れて彼に少し話を聞いた。かつて島を分断した運動も、今や萎んでしまって反対の意志を表明し辛い状況なのはわかる。 その時に宿泊した、さきはら荘の狩野史江さんは、戦車が与那国島に運ばれる状況に衝撃を隠せない。当初は通信基地程度だったはずの与那国島の自衛隊駐屯地は、最早エスカレートする一方で、受入賛成だった人々にも戸惑いが拡がっている。尚も、受入を表明し、台湾有事の備えということで政府の主張を鵜呑みにする与那国町長、ちょっとイカれてるとしか思えない。 宮古島では、民家に程近い場所に弾薬庫が完成。攻撃を受けたら集落は消滅しかねない。地理的なリスクという点では、ここは最悪かも知れない。付近に住む住民が自ら町議会議員になって反対の意見書を提出するが・・・石垣島での自衛隊進出と拡充は、もう歯止めの効かない状況だ。つい先日は米軍の空母の帰港があって港湾労働者のストライキも行われた。山里さんが“とぅばらーま”の節にのせて、戦雲が立ち込める状況を歌い上げる。 沖縄本島でも、勝連にはすでに自衛隊分屯地があって、ここは謎が多いところらしい。更に、ゴルフ場跡地に射撃訓練場が作られる計画があったが、どうにか回避されたようだ。アメリカが意図する対中国の防衛線は、離島から沖縄本島にかけて完成しつつある。こんな状況を目の当たりにすると、現在は、タモリがいみじくも語った、“新しい戦前”そのものの状況にあるように思える。 島に暮らす生活者たちの描写にも尺を割いている。とりわけ、与那国の海人のおじいがサイコーだ。カジキに足を刺されて重傷を負うが、ハーリーでは大はしゃぎ。カジキへの復讐を近い、最後にそれを果たす。さしものおじいも、猟場での警戒船の多さに不穏な空気を嗅ぎ取る。自衛隊基地が無ければ問題なかったのにと。 玉城デニー知事や、あの「お笑い米軍基地」すら、米軍基地は批判しても、自衛隊基地への批判には及び腰だ。三上さんらを始めとする、島の人々の、この危機感をどれだけ共有出来るか。沖縄本島の住人だって、勿論、他人事ではない。"多少の犠牲はやむを得ない”の“多少”の中にウチナーンチュも含まれるのは間違いないのだから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年04月30日 12時00分27秒
コメント(0) | コメントを書く
[沖縄] カテゴリの最新記事
|
|