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2005/09/08
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カテゴリ:なんでもお試し
各党の政策/マニフェストを読んでみる企画、第7回(いちおう最終回)は、自由民主党です。

自民党からは、120の約束と題された公約のほかに、もう少し具体的に書かれた重点施策2006が発表されています。

○郵政民営化
 自民党が今回の選挙で一番、もしくは唯一力を入れている政策が郵政民営化です。ですが、「120の約束」には「参議院において否決された民営化関連6法案を次期国会で成立させる」という1行が記されているのみです。提案理由や法案についての説明は一切ありません。まあ、法案の内容はもう十分浸透しているはず、という認識なのかも知れませんが、これで賛否を問おうというのは、確かに「変人以上」です。別にほめようとは思いませんが。
 もちろん「重点施策2006」にはもう少し詳しい説明があり、国債の購入や特殊法人向けの資金購入といった「官」の世界でのみ使われていた340兆円もの資産を、民間向け資金として活用する道を開く、という説明が筆頭にあります。小泉首相が1994年に出版した「郵政省解体論」でも、郵貯・簡保資金(を原資とする財政投融資が特殊法人に流れること)について共通した問題意識が示されており、そもそもの原点はこの巨大な資金にあると言えそうです。
 実は340兆円を民間に回す、という目的自体は、民主党のマニフェストにも共通しています。ただし民主党は、新会社が「自主的に」国債など購入する可能性がある政府案では民間に回る保証がないことを批判し、当面は預入上限をコントロールして徐々に民間に回す方法を提案しているわけです。とはいえ、民主党案にしても、預入上限を減らしても現実には家族名義の預金に移動させる人が多くなると考えられ、預金量が減少する保証がないこと、個人が上限を超えた分で個人向け国債など購入する可能性があることを考えると、民間に回る保証という点では民主党案も自民党案も五十歩百歩といえます。また、そもそも、郵便貯金や簡易保険の残高は、実質的にほとんどが国債で運用されているため、国債価格の暴落なしで民間に資金を回すのはもはや不可能に近い、という指摘もあります。その意味で「340兆円もの資産を民間向け資金として活用する」方法として民営化が最適と断言することは、現時点ではちょっと難しいのではないかと思います。
 また、郵便会社と競争することになる民間企業との競争条件については、全国にポスト10万本などという、高すぎる参入規制については手がつけられておらず、規定が不十分な面もあります。銀行・保険については預金限度額が設けられ、当面は新規事業や企業買収に政府の認可が必要という制限はありますが、公営企業から引き継いだ信頼感や店舗ネットワーク(例えば信用金庫は今年3月末現在、全国で7,879店舗と郵便局の半分以下)が大きなアドバンテージとなり、法案に規定された規制だけでは公正な競争が成り立たない可能性も否定できません。電電公社から民営化したNTTと新電電(KDDIとか日本テレコムとか)の固定電話シェアの差は、やっぱり技術力やサービス内容では説明しきれないと思いますし。
 このように、次期国会で成立を目指すという民営化関連6法案は、どうもまだ未完成といった方が良いのではないか、という印象を受けます。ただその一方で、やはり郵政事業を民営化することが望ましいのだとしたら、これが下手をすると最後の機会だという意見も、それはそれで分からないではありません。

○年金制度
 年金制度については、昨年6月に成立した年金改革法によって、一通りの対応が済んだという認識であるようで、「将来にわたって国民の信頼に応えられる持続可能で安心な年金制度を構築しました」と自己評価されています。復習しておくと、厚生年金の保険料率を2004年以降順次引き上げて18.3%にする、国民年金の保険料を2005年から順次引き上げて月額16,900円にする一方で、給付水準を現役世代の50.2%にまで順次引き下げる、国庫負担割合を2分の1まで増加させる、というものです。この制度、成立時点はもしかすると持続可能だったのかも知れませんが、その後出生率が想定以上に下がったため、早くも見直しの必要があるのではないか、と言われているのはご案内の通りです。
 今後の検討課題としては、公務員向けの共済年金と会社員向けの厚生年金の一元化や、非正規労働者の厚生年金加入が挙げられていますが、国民年金は一元化の対象外となっています。また、未納者の増加によるいわゆる「空洞化」や、無年金者・低年金者への対策については、特に記述がありません

○財政再建
 財政再建に資する政策としては、中央官庁と地方自治体の組織・人員の業務やスリム化が中心となっています。とはいえ、削減の数値目標は特に示されておらず、国家公務員の定員については「思い切った純減」、地方公務員の定員についても「過去5年間の実績を大きく上回る純減」という、今ひとつ想像がつきにくい表現になっています。ちなみに、総務省「平成16年地方公共団体定員管理調査結果」によれば、過去5年間の職員数は、特別行政(教育、警察、消防)および福祉関係を除いた一般管理だけでは5.8%の減少、両方をあわせると5.4%の減少とのことです。
 一方で公共事業については、2007年度までに15%程度のコスト削減を行うことや、「防災、地域再生、国際競争力強化などに厳しく重点化」といった文言はあるのですが、それでも「重点施策2006」で例示された公共事業のラインナップは非常に気合いが入ったものです。目立つものを抜粋すると、北海道新幹線、東北新幹線(八戸新青森間)、北陸新幹線、九州新幹線、大都市圏の環状道路、高規格幹線道路及び地域高規格道路などの自動車専用道路等のネットワークの整備、東京国際(羽田)空港の再拡張、成田国際空港の平行滑走路の2,500m化、関西国際空港の二期事業、既存空港の質的充実、等々。まあ、これもきっと厳しく重点化した結果なのでしょう。私も含め、全然そうは見えない人の方が多いと思いますが。
 ただ、予算編成プロセス等の改革に言及していることは高く評価できます。決算結果や政策評価を予算編成に生かすことや、「国家財政ナビゲーション」の整備などが具体的な内容です。このうち「国家財政ナビゲーション」は、現在世代の負担だけではなく将来世代の負担を事業単位でシミュレーションしながら予算編成できるというもので、詳しくは講談社現代新書の「公会計革命」で紹介されています。個人的には、本気でこれを活用するつもりがあるなら政策決定や予算編成のあり方は相当良い方向に変化するのではないか、と思っています。
 
○地方分権、地域産業振興
 地方自治体のスリム化に重点がおかれる一方で、税源移譲については民主党案に比べて大きく見劣りするものになっています。中核となっているのは、所得税から個人住民税への税源移譲で、規模は概ね3兆円とされています。なお、昨年の参院選では2006年までに4兆円を以上と公約、すでに実現したのが4,200億円ですので、これでほぼ打ち止めということになります。また、国から地方への補助金や地方交付税のあり方については「重要施策2006」でも、「地方六団体案を尊重しつつ税源移譲に結びつく改革を実現します。」と表現されているのみで、方向性は定かではありません。
 地域産業のうち農業については、農林水産省が今年3月に策定した新たな食料・農業・農村基本計画に沿った政策を推進する方向性が示されています。計画の主な内容としては、中核的な農家あるいはその集団に対する直接支払による所得保障や新規就農の支援、環境や農地・農業用水等の保全といった項目が挙げられます。総論としては、それほど他党の政策と変わらない印象を受けますが、違うとすれば、農業関係補助金の扱いでしょうか。他党は削減を明記していますが、自民党の政策にはそうした方針は見あたりません
 また、中小企業振興については、「約束」では融資だけでなく経営相談機能も含めた地域金融機関の役割強化が挙げられている程度であり、あまり重きをおかれていない印象を受けます。ただ、「重要施策2006」では、どの程度の経費をつぎ込むかは定かではありませんが、公設試験場による技術力の客観的な評価や、中小企業への研究開発支援の抜本的な強化といった方針が打ち出されています。基本的に、成長力が高いところに絞り込んで支援をするという考え方がとられているようです。むろん、同じ与党の公明党と同様、必要以上の企業を切り捨ててしまう懸念も感じないではありません。
 
○まとめ
 「自民党は変わった」のか、それとも変わっていないのか。公約を見る限り、変わったように見える部分もある一方で、イメージそのまんまの部分もあります
 郵政民営化が典型ではあるのですが、従来の支持母体の利益にならない政策を打ち出すようになったのは、確かに変わった点でしょう。中小企業や商工業者の支援策でも、最近では酒販店の逆特区に見られたような、ちょっとやり過ぎともいえる保護策は、少なくとも今回公表された政策文書からは姿を消しています。さらに、予算編成プロセスの改善といった話が公約に出てくる、というのも(もしかしたら昔からそうだったのかも知れませんが)自民党のイメージとは異なる部分です。
 その一方、公共事業のラインナップはこれぞ自民党、というべき豪華さ(?)ですし、先に挙げた「新たな食料・農業・農村基本計画(農林水産省)」「健康フロンティア戦略(厚生労働省)」「女性の再チャレンジ応援プラン(内閣府)」「u-Japan政策(総務省)」など、この数年の中央省庁の重点施策や2006年度予算の概算要求と一致する、良くも悪くも中央省庁との強い一体感を感じる政策も数多くあります。もちろん、政府与党がこれまでの政策を否定するような公約を出したらおかしいわけで、一概に悪いと言えないのは確かです。でも、中央省庁に対して、不要な事業を中止したり、やりたがらないが不可欠な事業を実施させたり、といったリーダーシップをどの程度発揮できるのか、言葉を変えればどのぐらい中央省庁から自立しているのか、公約からはちょっと計りかねる、というのが正直な感想です。





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Last updated  2005/09/08 09:29:45 PM
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