少子化対策:「両立支援より経済的支援」? それって誰が言っているんだろう?
ずっと気になっていたのですが、もう10日も前に、こんなニュースが出ていたの、記憶にありますか?「少子化対策、母親の7割「経済支援を」…内閣府調査」内閣府は8日、少子化対策に関する母親の意識調査の結果を発表した。少子化対策で重要な政策(複数回答)としては、「経済的支援措置」が69.9%で最も多く、「保育所など子供を預かる事業の拡充」が39.1%、「出産や育児のための休業・短時間勤務」が37.9%で続いた。経済支援を挙げた人に、具体的に望ましい対策(同)を質問すると、「保育料・幼稚園費の軽減」が67.7%に上り、「乳幼児の医療費の無料化」は45.8%、「児童手当の引き上げ」は44.7%だった。(中略)調査は、今年2~3月に子供を持つ全国の20~49歳の女性4000人を対象に実施し、2260人が回答した。ちなみに、調査の元ネタはこちらです。これにひとこと付け加えて記事にしているのが朝日新聞です。「子育て支援は「お金」が重要 内閣府の意識調査」なる記事中で、「1999年に総理府(当時)が行った意識調査で、必要な支援を聞いた際には「子育て中の夫婦が共に働けるような環境整備」が、税負担の軽減や現金給付の充実といった経済的支援を上回っていた。」ことを指摘し、「母親が重要と考える少子化対策は、仕事と子育ての両立支援から、保育料の軽減など「経済的支援」に変わってきている」とまとめています(実際はリード文)。背景としては、国民生活白書(2005年版)で、子育て世代の実質可処分所得が1990年以降ほとんど伸びていない一方で、世代内の所得格差が1997年から広がっていることを挙げています。記者発表だけに頼らず、自分でもいろいろ調べたことは評価しましょう。でも、問題はその内容。比較対象となっている総理府の調査というのは「少子化に関する世論調査」のことだと思いますが、質問票を見ると、今回の調査とは次のような違いがあります。内閣府調査は複数回答ですが、総理府調査は単一回答です。総理府調査では、内閣府調査で「経済的支援」とひとくくりにしている内容を「現金給付」と「税負担」に分けて質問しています総理府調査で「大いに働けるような環境の整備」とひとくくりにされていた内容が「子どもを預かる事業の拡充」「休業・短時間勤務」「再就職支援」「両立の推進に取り組む事業所への支援」といった具合に細分化されています要するに今回の調査は、最初から「経済的支援」と回答する比率が高くなるような調査設計になっているわけで、両者を単純に比較するのは意味のないことなのです。なのにここから無理矢理結論をひねり出して(ある意味ねつ造とも言う)世論や政策をミスリードしかねない記事を出したりするのは、報道機関としてどうなのかなあ、と思ってしまいます。あと、そういう調査設計のアンケートをした内閣府にどういう意図があったのかも、非常に気になるところです。子育て世代で世代内の所得格差が増えているのはそうなのでしょうし、そもそもお金はあって困るものではないので、経済的支援が充実されることは良いことなのですが。でも、それ以外の政策の重要度が低いというわけでは、恐らくないはずです。内閣府アンケートでも、フルタイム勤務者に限れば「子どもを預かる事業の拡充」「休業・短時間勤務」への支持は4割台(経済的支援は6割台)と全体より高いわけですし、実際、待機児童数だけを見ても、2001年には21,031人だったのが2004年には24,245人と大幅に増えているわけで(厚生労働省「保育所入所待機児童数調査」。実は2003年から2004年は、2000人ほど減っています。)、両立支援へのニーズが下がったなんて、まだまだ言える状況ではないと思うんですけどね。あと、たった1ヶ月子どもを育てた経験からすると(偉そうに。。。)、祖父母などの支援がほとんど得られない環境で、言葉の通じない子どもと24時間向き合うのは、(特に母親にとっては)精神的にも肉体的にも想像以上にきついものがあると感じています。私は幸いにも、自己判断で休みをまとめてとったり残業を短めにしたりすることができる会社にいるので少なくとも猫の手にはなったはず、、、、と信じてますが、世の中そうもいかない仕事の方が多いわけで。大きくなったら大きくなったで、必要なタイミングで保育園に入れる保証もなく、小学校に入れば学童保育も全然足りない、長期休暇にはどうするんだ、という話も待っていて、、、経済的支援を増やしてもらっても、ちょっと解決し難い問題がたくさん思い浮かびます。あ、でももしかして、経済的支援を増やして代わりに共働きを減らそう、という意図があるのか? それとも両立支援なんていらない人が本当に増えているのか? 実際のところは、どうなっているんでしょう?