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カテゴリ:ミステリ(日本)
小路幸也 講談社文庫 ☆☆☆☆☆ みんなの顔が「のっぺらぼう」に見える、と息子が言い出したとき、凌一は二十年前に一人で出て行って、年賀状以外は音信不通になっている兄、恭一に連絡を取った。そして、彼らの元にやってきた恭一は、彼が体験したひと夏の不思議な体験を語り始める…。 こんな書き出しで始まるこの作品は、大人向きの文庫に収めるより、この出版社から出している、豪華製本の児童文学のシリーズに収録したほうがいいのではないかと思った。舞台はおそらく日本史上でいえば、高度経済成長からオイルショックにかけての時代。製紙工場を中心とした企業城下町を舞台とするが、この町のモデルと思しき町が北海道に実在するそうだ。(私は10年住んでいたが知らなかったけど)結構読んでいると、公害はまだ垂れ流し、工場お抱えで義肢を作る人もいたりするが、床屋さんもチケットだかクーポンのようなものを出せば無料。こんな町を舞台に不思議な殺人事件が起きる。子供相手には少々血なまぐさい事件だが、面白かった。子供達の友情や大人の事情、ちょっと不思議なアウトロー。登場人物の一人一人もとても優しい筆致で描かれていて、モノが殺人事件だと忘れてしまうほどだった。他の作品も読んでみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 12, 2007 01:26:45 AM
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