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森本コスオの小さな脳みそ

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January 24, 2011
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18.※R15です。


三人が食べ終わると、洋斗は智に食後のデザートを出した。
モカの甘い香りがほのかにするパウンドケーキは、食欲をそそる。
智はフォークで、ケーキを一口大に切り分け口に運んだ。

「今晩、勉強会と忘年会がある。」
携帯電話を片手に、孝司がそう呟くと
洋斗がさっと顔を上げ、孝司の方を窺った。
「スーツある?」
そう訊かれ、洋斗は躊躇いがちに小さく頷いた。
孝司のスーツは、昨晩彼が着てきたものがある。
一応それは、空気清浄機の近くに提げているのだが、
置いてある場所が、洋斗の寝室なのだ。
洋斗は隣に智がいるので、彼を気にしている。
智は、口の中で広がる甘くも苦いパウンドケーキを
少し大人びた気持ちで噛みしめて呑気なため息をこぼしている。
洋斗はそれでも気が気ではない。
今日の孝司の行動に、実はハラハラしている。

「洋斗さん、そういえば今日何時に開けます?」
少し緊張で張り詰めていた洋斗が、智にそう訊かれ
彼の方を振り向けば、
彼はケーキを完食して、今にも何か指示をくれとばかりに洋斗を見つめている。
彼も彼で、孝司がいるのに居心地の悪さを感じているのだ。
洋斗はそうだね、と自分の腕時計を見て考えていると、
孝司が立ち上がり、部屋を出た。
何も言わずに出る孝司を不思議な顔で見送る洋斗だったが、
すぐに智の方を向いて
「あと一時間後ってとこかな。」
とにこやかに答えた。
「僕はここ片付けたら降りるから、店の方任せていいかな?」
「いっすよ。」
智がそう答えると、二人は立ち上がって食器を洗い場の方へ寄せた。
その時、智が神妙な顔を洋斗に向け、少しいいかと訊いてきた。
洋斗も同じ顔になり、どうしたのかと尋ねた。
一瞬、何事かと驚いてしまったが。

「昨日、クリスマスでしたよね。」
智の質問なのか、同調を求めるものなのかわからない曖昧な話口調に
洋斗は声を出さず頷いた。
「俺絶対、今年こそ彼女と遊ぶって決めてたんですけど。」
話が途切れ、洋斗が頷く。
「それしなかったんです。」
洋斗が首を傾げた。
「今年一年、それを目標にしてたんですけど。」
と、智が笑った。
「いきなりその気が失せたんですよね。」
え?、と洋斗が声をもらした。
もしかしたら、無理なシフトを組んでいたのだろうかと心配になったのだ。
「だから、俺マジで洋斗さんとこで働くんで!
 よろしくっす~。」
智はまた笑顔で洋斗に言った。
そして洋斗から離れ、階下へ向かおうとした。
だがすぐに振り返ってへへっと微笑むと、
先程食べた昼飯もケーキも美味しかったと律儀に言ってくれた。
洋斗はこういう智がかわいいと思う。

残された洋斗は、ほっとしたような、まだ不安なような複雑な気持ちのまま
後片付けに戻った。
智が彼女のことを諦めたのには、自分の以前言った一言が関係するのか
はっきりしないまま悶々としてしまっている。

食器を片付け終えると、なかなか戻らない孝司を気にして洋斗は廊下に出た。
居間を出てすぐの手洗い場をノックしたが返事はなかった。
洋斗は自分の寝室へ向かった。
すると、孝司はそこにいた。
クローゼットを開けて、ネクタイを見ていた。
孝司?、と洋斗が問いかけながら彼の方へ近付くと
彼は振り返って洋斗を確認すると、ネクタイをどれにしようと訊いてきた。
洋斗も孝司の隣に並んで一緒に悩み始めた。

勉強会とは、地元の税理士会の会員による会合だ。
孝司はいつも父親に付き添って参加している。
この会に合わせてスーツを着るつもりでいるのだが、
ネクタイは昨日とは違うのにしたいらしい。
洋斗の家には孝司用に五本のネクタイが常備してある。

「シャツはどうする?」
クローゼットを掻き回して目ぼしいのを孝司に当てながら洋斗が訊く。
孝司はグレーのシャツを選び、それを自分で持って
洋斗にネクタイを選んでもらう。
「これでいいかな。」
と、洋斗が光沢のあるネイビーのネクタイを孝司に渡した。
それに孝司も納得したようで、渡された二つをクローゼットに戻すと
孝司は咄嗟に洋斗の背中に抱きついた。

洋斗の着ているカットソーの裾から手を差し込み
細いが引き締まった彼の腹を柔らかく撫で上げた。
小さく悲鳴をこぼした洋斗だが、孝司の手を止めようとはしなかった。
暖房の付いていない寝室にずっといたためか、孝司の手は冷たい。
その手が鳥肌の立った脇腹をなぞり、胸まで到達すると
洋斗はあんまりにもやり過ぎだと思い、孝司に伝えた。
「でも、立ってる。」
耳元に息を吹き掛けるように言われ、洋斗は頬を赤くした。
孝司の指が、小さく尖った洋斗の乳首に触れている。
「孝司、だめだ。」
「したい。」
「だめ。」
後ろから抱き締められ、指と爪で乳首を弄られても
洋斗は下に智がいることを主張して孝司を拒んだ。
孝司は洋斗の首に顔を埋め、懇願する。
「今日が最後なんだぜ?」
「でも、智を待たせてる。」
孝司は、今年最後の二人の時間なのだと言いたいつもりなのだろう。
だが洋斗は、それでも彼を拒み続けた。

「もう帰しちまえよ。今日はもう店閉めろ。」
洋斗は、孝司のわがままにため息を吐いた。
それでも洋斗は店を開けるつもりだった。
「孝司?」
洋斗は少し首を傾げ、黙りこくった孝司を伺った。
彼は俯いたままだったが、片手を洋斗の顎に添えると
唇を押し付け、無理矢理キスをした。





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Last updated  March 2, 2011 04:35:41 PM
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