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"なた豆"は毒か?薬か?第2の大豆か?改訂版

【改訂版v2】
【改訂箇所】大豆サポニンの記述(1行)
===
「なた豆」は毒か?薬か?第2の大豆か?(試論)

『なた豆日記』と『なた豆入門』の共通試論(未定稿)

●日本人から見た「なた豆」の2大系統

「なた豆」の仲間は世界中に分布しています。
ナタマメ属は数十種類あるといわれています。

毒性の強い種類もあれば、薬用に利用される種類もあります。
食用、飼料、肥料などに利用される種類もあれば、
野生のまま利用されることの少ない種類もあります。

日本で、観賞用や健康食品として利用される「なた豆」は、
中国伝来のカナバリア・グラディアータという系統が主流です。
「赤なた豆」や「白なた豆」が、この仲間です。

「赤なた豆」は「なた豆」の別称として使われることもあります。
完熟した豆には、毒性があるといわれます。

「白なた豆」は、「赤なた豆」の変異種という説もあり、
毒性はなく、食べることができるといわれています。

グラディアータの系統は熱帯アジア原産といわれています。
インドや東南アジアでも利用されているようですが、
日本人にとって身近なグラディアータの主要生産国は中国です。

中国には多くの呼び名があり、日本で親しまれている呼び名は
「刀豆(Dao Dou)」(ダオドウ)です。
中国の青竜刀にサヤの形が似ているからといわれます。

日本には中国から伝来したものと思われ、
江戸時代には庶民の間でも各地で栽培が行われました。

江戸時代には呼び名も地方色豊かに様々ありましたが、
「鉈(なた)」にサヤの形が似ていることから
中国の「刀豆(ダオドウ)」という漢字を「なたまめ」と
そのまま訓読みする呼び方が文献に残っています。

清水の次郎長が「なた豆キセル」を吸っていたという
記載が残っていることなどから、「なた豆」が
江戸の庶民にとってポピュラーな存在だったといえます。
ここでいう「なた豆キセル」とは、なた豆のサヤの形に似た
キセルという意味で、なた豆で作ったキセルという意味
ではありません。

グラディアータ系統の「刀豆(ダオドウ)」は
中国南方を中心に栽培され、漢方原料以外に、
今では冷凍加工したりして世界中に輸出されています。

英語では「スウォード・ビーン(Sword Bean)」(剣の豆)と
中国名を英訳した呼び名になっています。
アメリカなどではあまり生産されていない模様で、
アメリカ人にとって「なた豆」といえば
後述する「ジャック・ビーン」(タチナタマメ)の系統を
指すと考えてよいでしょう。

グラディアータ(「赤なた豆」や「白なた豆」の仲間)の系統は
中国を中心とした東洋の系統といえるかも知れません。

現在、日本で栽培されたり、
中国から輸入して販売される「なた豆」は、
ほとんどが「赤なた豆」と「白なた豆」なので、
一般の消費者が「なた豆」という呼び名でイメージするのは、
グラディアータという系統だと覚えておけばよいでしょう。

これに対し、
アメリカ大陸(西インド諸島から中米)原産とされる
カナバリア・エンシフォーミスという種類も有名です。
日本では「たちなた豆(タチナタマメ)」と呼ばれています。

アメリカでは「ジャック・ビーン(Jack Bean)」と呼ばれ、
『ジャックと豆の木』のモデルになったともいわれます。

グラディアータ系統の「赤なた豆」に比べ、
「たちなた豆」は毒性が強いといわれます。

中国では”西洋の刀豆”という意味の中国訳である
「洋刀豆(Yang Dao Dou)」(ヤンダオドウ)という呼び名も
使われます。

アメリカでは「ジャック・ビーン」(タチナタマメ)は
飼料に利用したり、抽出成分(コンカナバリンAなど)を
薬品や実験用の試薬などに利用しているようです。

コンカナバリンAという成分は、タチナタマメから
1919年に世界で初めて精製、結晶化された赤血球凝集素です。

コンカナバリンAは1969年に悪性化細胞も凝集することが
発見されました。

このように欧米の科学的データは主としてタチナタマメから
抽出した純粋成分をもとに公開されてきましたが、
あくまで実験室レベル(試験管レベル)のデータであり、
東洋の別系統の「なた豆」が
食用後に生体内で消化吸収されて同様の働きをする
という実証的なデータではない点を認識しておきましょう。

系統も違えば、検証条件も違うということです。

アメリカの百科事典には「ジャックビーン」は
ポピュラーな豆として記載されていますが、
「スウォードビーン」は見つけにくいでしょう。

このように、
エンシフォーミス(日本名「タチナタマメ」)の系統は、
アメリカ大陸を中心とした系統といえるかも知れません。
(栽培量は少ないですが中国などでも生産はされています)

このほか、「なた豆」の仲間には
アフリカなどで食用や飼料として栽培されている系統もあり、
一口に「なた豆」といっても国や地域が異なれば
「その地域で代表的な種類」が違ってくる
ということを知っておく必要があります。

「所かわれば豆かわる」ということです。

●「なた豆」の毒性と薬効

ナタマメ属の完熟種子(サヤの中の豆)には
強い毒性を持つ種類もあり、
インド洋岸や南太平洋岸に自生する「タカナタマメ」
(ミクロカルパという系統)は食べると
激しい嘔吐、下痢、腹痛を起こし、
台湾で誤って食べた牛や馬が死んだ例もあるそうです。

世界的にみると、
「なた豆」の仲間は、毒性と薬効の二面性が応用される場合と、
毒性を極力取り除き、食用や飼料用に利用される場合に
分けられます。

食用の工夫としては、加熱・醗酵や、
部位・時期の限定(若サヤの福神漬け)などがあります。

薬効としては、漢方や世界の民間伝承例として、
主に次のような傾向があるようです。

下剤、痔ろうなど(消化器、泌尿器系)、
せき止め、去痰(たん)、しゃっくり止めなど(呼吸器系)、
口内炎、歯槽膿漏など(口腔、歯科系)、
消炎、排膿、抗腫瘍など(皮膚、鼻、内科、アレルギー系)、
その他
(注:漢方の腎強壮は、腎臓疾患治療と同義ではありません)

科学的根拠の是非はあまり定まっていない模様で、
あくまで経験則に基づく薬効が中心と思われます。
臨床への応用や実証的研究はこれからといえるでしょう。

また、もう一つはっきりしているのは
人類の長い経験から
「ある種の」完熟豆には毒性があり、
食用には注意や工夫が必要だ
ということでしょう。

「なた豆」はサヤの長さが30センチ前後にも成長し、
サヤの中から10粒前後の豆が収穫できるので、
飢饉や食料不足に悩んだ江戸時代の庶民は
「なた豆」を食用にしようと試行錯誤したようです。

「大豆(ダイズ)」が重要な栄養源であるように、
「なた豆」が食用に普及できたら画期的だったでしょう。

残念ながら江戸時代以降、
「なた豆」は「大豆」ほど食用として
普及することはありませんでした。

その理由のひとつが、
「なた豆」の毒性に起因する「扱いの難しさ」に
あったことは推測できます。

夏には一晩ごとに急速な成長を遂げる「なた豆」は、
旺盛な生命力があるので、一部の寒冷地を除き、
栽培自体は容易だったはずです。

しかし、
「赤なた豆」が江戸時代の栽培の中心だったせいか、
食用には毒性処理が面倒であること、
大豆に比べて豆腐や納豆など二次加工性能が劣り、
味も突出した特長がないなどの
理由から次第に江戸庶民は
応用範囲の狭い「なた豆」の栽培をあきらめ、
日本では戦後一部の地域を除き
「なた豆」栽培は衰えていったものと思われます。

思えば戦中の食糧難の時代でさえ、
「なた豆」は「大豆(ダイズ)」に並ぶ栄養源として
啓蒙普及が全国的に推し進められた形跡が見つかりません。


●「なた豆」の総称と別称を区別しよう!

日本では、「なた豆」という呼び名は、
「なた豆の仲間たちの総称」として使われるほか、
「赤なた豆の別称」としても使われます。
文献を読むときは、どちらを指しているか区別しましょう。

●3種類の豆を区別しよう!

世界には数多くの「なた豆の仲間たち」が分布しています。
その内、
私たちが知っておくべき代表的な「なた豆」は3種類です。
たちなた豆、赤なた豆、白なた豆です。

●たちなた豆(タチナタマメ)の扱い

「たちなた豆」(カナバリア・エンシフォーミス)は、
小さめの白い豆、淡い紫青色(有色)の花が特徴です。

日本では栽培量は少なく、取り扱い知識も普及していません。
一般には目にすることが稀と思われますが、
毒性が強いといわれる種類ですから逆に注意も必要です。

●赤なた豆(アカナタマメ)の扱い

「赤なた豆」(カナバリア・グラディアータ)は、
赤い(褐色の)豆、有色の花が特徴です。

豆や花の色は様々に形容されています。
「赤い、茶色、褐色、ピンク」などという豆の色の表現、
「青みがかったピンク、薄い紫」などという花の表現。
いろいろな表現がありますが、純白の花でなく有色の花、
白い豆でなく、有色の豆と覚えておくとよいでしょう。
(消防車のような「真っ赤な」豆と花とはいえません)

「たちなた豆」ほどではないが毒性が含まれるといわれます。
江戸時代の文献などには「毒あり」「食すべからず」
などと書いてあるものもあります。

●白なた豆(シロナタマメ)の扱い

「白なた豆」(バー・アルバ・マキノ)は毒性がないといわれ、
食用に供されてきた歴史があります。
「白餡(あん)」などに利用されていたという記述もあります。
白い豆、純白の花が特徴です。

江戸時代の文献にも「毒のない白なた豆という種類もある」
という記載があり、毒性や名称を「なた豆(赤なた豆)」と
区別している場合があります。

「赤なた豆」の変異種が「白なた豆」だという説もあります。

一般に、自然界では多数の有色種の中に、
希少な白色種が散見することがあります。
白馬、白豹など同一の動物種内にも珍しい白色種が見られます。

ただし、「赤なた豆」の毒性と「白なた豆」の無毒性が、
色と何らかの因果関係があるのかどうかまでは分かりません。
いずれにせよ、近い類縁関係にあることはすでに述べました。

前述した江戸時代の事例から類推すると、
「白なた豆」の栽培量は「なた豆(赤なた豆)」ほど
多くなかったのではないかと思われます。

●毒にも薬にもなる成分の働きとは?

世の中には、毒もうまく使えば薬という例があります。
農林水産省の「消費者の部屋」では、
完熟した「なた豆」の種子によっては、
毒性物質として次の4種類が含まれているそうです。

(1)溶血作用のあるサポニン
(2)青酸配糖体
(3)有毒性アミノ酸のカナバニン
(4)有毒性アミノ酸のコンカナバリンA
などに「由来する」物質。

(1)と(2)は配糖体の仲間。
配糖体は糖と非糖成分が結合した有機化合物で、
生物界に広く分布します。

最近話題の植物色素・アントシアニンや、
からし菜の辛味の主成分・からし油配糖体など
多くの物質がさまざまな働きをしています。

(3)と(4)はアミノ酸の仲間。
アミノ酸は自然界には50種類くらいあり、
たんぱく質を作るのはその内の20種類です。

さらにその中でヒトや動物が食物から摂取
しなければならないのは8種類のアミノ酸で、
必須アミノ酸と呼ばれます。

ですから、ヒトにとっては直接利用されないアミノ酸も多く、
場合によっては有害なアミノ酸も存在するということです。
(3)(4)は、そういう仲間といえるかも知れません。
毒キノコなどには有毒アミノ酸環が含まれているものがあります。

ここで、「~などに由来する」物質という
慎重な表現にも留意しましょう。

「たちなた豆」から抽出される純粋な薬品成分としての
コンカナバリンAのお話をすでにしましたが、
天然の「なた豆」自体は様々な成分が
組み合わさってできているということです。

つまり、「純粋な物質そのもの」と「由来する物質」とは
全く同じであるとは限らないということにも注意しましょう。

生体内の酵素の働きなど、消化吸収作用は
試験管内の単なる化学反応とは違い、複雑な働きをしています。

(1)サポニンの溶血作用を例にあげても、
試験管内で観察されたことが、
必ずしも体の中で同じように観察
されるということではない場合も考えられます。

たとえば、
自然界には数十種類の大豆サポニンが存在するといわれます。
===
一般に、サポニンは溶血作用があるといわれます。
血液は試験管に入れて放置すると、血球が沈殿し、
上澄み液(血清)が薄い黄色になります。
ところが、サポニンなどの溶血作用のある物質を加えると、
血球膜が壊れて赤い色素が外に溶け出すので、
上澄み液(血清)が赤色になるといわれます。

ところが、この溶血現象は試験管内などの血液に
直接純粋なサポニン成分を加えたときに見られるのであって、
大豆を食べて消化吸収されるサポニンやサポニン由来の物質は、
もっと複雑な処理を経ます。

消化の際、
サポニンは糖が離れてサポゲノールという物質になり、
溶血性は失われるといわれています。

それなら食べても大丈夫か?といえば、
大豆のサポニンとなた豆のサポニンが同じという
保障はありません。
ましてや、「それに由来する物質」が同じであるという
保障もありません。

大豆に比べ、なた豆の研究はあまり進んでいません。
やむをえないので、よく知られた事例から
(2)で掲げた「なた豆」の青酸配糖体の毒性を
類推してみましょう。

青酸が恐ろしい毒性物質であることは、
「青酸入りカレー殺人事件」などを連想される方も
おられるでしょう。

自然界の食材として知られている青酸の毒性に
キャッサバという熱帯産のイモ類があります。

キャッサバを食べた人が、青酸入りカレーを食べた人と
同じように七転八倒して死ぬことはほとんどありません。

ただ、ヨードの吸収が阻害され、ヨード欠乏症を起こし、
それが原因で甲状腺腫になる場合があることが知られています。

どうして、このようなことが起きるのでしょう?
キャッサバにはリナマリンという青酸配糖体が含まれます。
リナマリンは体内で分解されて青酸が遊離します。

青酸が体内に多量にとどまると、場合によっては呼吸障害を
起こして死ぬ場合もあるはずです。

ところが、ヒトには解毒機構があり、キャッサバに「由来する」
青酸の毒性を消去するために、肝臓でチオシアン基という
物質を生成し、解毒を行うことに成功します。

しかし、キャッサバを食べ続けると、解毒のために生成した
チオシアン基が血液中に増え、甲状腺に対してヨードと
同じような振る舞いをチオシアン基がとるため、
結果としてヨード吸収が阻害され、
甲状腺腫を発症することがあるのです。

キャッサバを食べる地域では、欠乏症対策として
ヨードを同時に食べる指導が行われているそうです。

大豆のサポニンやイソフラボノイドという物質にも
抗甲状腺作用があることが知られていますが、
詳しい仕組みはキャッサバほど解明されていません。

大豆の場合は、キャッサバほど強力な作用があるわけでなく、
もともとヨードが欠乏傾向にある地域で影響が懸念される
ということだそうで、
日本では海産物などからヨードを
摂取する量も多く、欠乏傾向がほとんどないことから、
日本に限っては通常は心配する必要はないそうです。
(世界的にはヨード欠乏症に悩む地域は少なくありません)

このように、ある程度研究の進んでいるはずの大豆の毒性
研究ですら、その複雑な作用が解明し尽くされているわけ
ではないのです。

ましてや、(一部の成分を除き)豆自体の研究が遅れている
「なた豆」にいたっては、安易な楽観論や、いたずらな
脅迫論は控えねばなりません。

自然界には分からない現象がたくさんあります。
生体内の化学反応にしても、私たちが知っている現象は
ごく一部に過ぎないと考えてもよいのではないでしょうか。

豆ひとつをとってみても未知の部分は多いのです。
私たちの体の中で、食べた豆がどう変化し、
どう働くのか?
まだまだ分からないことは少なくないのです。
この事実に謙虚になる必要があるのではないでしょうか?

(3)(4)の有毒性アミノ酸は「なた豆」に多く含まれ、
毒にもなれば薬にもなると論議されている代表的な物質です。
これに関しては、「タチナタマメ」から抽出した成分で、
実験レベルの研究成果が公開されてはいます。

しかし、(1)や(2)で見てきたように、
カナバニンやコンカナバリンAが「食用」として摂取され、
消化吸収を経てどのような生体内の毒性や薬効を示すか?
これについては実証的研究がまだ十分であるとは思えません。

一説には、
カナバニンは免疫力を高め、排膿作用を亢進する
とか、
コンカナバリンAはマウスの癌細胞の増殖を抑制する
などと紹介されています。

しかし、
これが原材料である「赤なた豆」や「白なた豆」から
作られた「なた豆茶」などの健康食品や
「歯磨き粉」などの製品からきちんと立証された事実
であるとは誰もいっていません。

「なた豆」に比較的多く含まれるといわれる
ウレアーゼという酵素を考えてみましょう。

ウレアーゼは尿素を分解することが知られています。
しかし、「なた豆」を摂取することで、消化吸収された
ウレアーゼが腎臓に直接働きかけて、腎機能を改善したり、
そのことで血液中の尿素を減少させて「物忘れを予防する」
などという脳内活性作用まで貢献するなどと飛躍して
よいものかどうか慎重に考えねばなりません。

また、薬効のみに目を奪われず、
毒性というコインの裏側にも目を向けなければなりません。

●「赤なた豆」の缶入りメッセージ玩具の問題

一部の玩具メーカーなどが観賞用として販売する
「赤なた豆」の缶入りメッセージ玩具などの場合は、
誤って食べた場合の毒性への配慮も不可欠です。

生体内の毒性や薬効が十分に解明されていない以上、
万が一の場合を想定し、毒性の指摘されてきた
「赤なた豆」などの使用は続けるべきではありません。

製品のコンセプトが問題なのではなく、
原材料を「白なた豆」などの毒性のない
豆にすべきだということです。

たわわに実った大きなサヤたちから秋以降収穫される豆を、
「鑑賞用だから口に入れないように」などと申し訳程度に
ただし書きに添えても、誤食の危険性はゼロになりません。

健康食品などは、一定の食品としての安全性が問われますが、
缶入り玩具などは食用安全性などのチェックはなく、
1年の間に数十万株から百万株もの「赤なた豆」が
全国に伝播する可能性があります。

これまで日本国内ではほとんど栽培されていなかった
「赤なた豆」が大量に中国から輸入され、
十分な栽培知識の啓蒙や経験がないまま
一部が野生化したり、交配することの危険性も無視できません。

そもそも園芸愛好家や農家が栽培管理するのと違い、
「赤なた豆」のメッセージ玩具をプレゼントされた人は
十分な栽培知識や管理責任を持ってはいません。
不特定多数の人が、ある日突然、栽培を始めるわけです。

今後、非食品、非作物として別の「なた豆の仲間」が
世界から輸入される可能性もあります。

その際、種類によっては猛烈な毒性を持つ「なた豆」が
混入交雑する恐れもあり、知らずに育てたり、
捨てられて野性化した「赤なた豆」たちが
予想外の毒性を持つ生態系を形成する温床となる
可能性も懸念されます。

中国などでは南方を中心に古くから栽培や利用の
経験伝統があるので、「なた豆」の管理態勢は
ある程度できています。

ところが、日本では実質的に江戸時代以来続いてきた
「なた豆」の栽培経験は一部地域を除いて途絶え、
植生に対する管理態勢は一部の商用栽培地域を除き
定着していません。

一説には、「なた豆の仲間」の毒性は、強い野生種の
交配によって取得されたという考えもあります。

今の日本は、世界中へ人々が行き交い、世界中から
珍奇な動植物が持ち込まれている現実があります。
危険な動物がペットとして輸入され野生化したり、
旅先の植物を密かに持ち帰り栽培する場合もあります。
(豆類はポケットに入れても持ち帰れます)

なた豆の場合は、世界各地に毒性の強い野生種があり、
今までの日本では栽培地域が極度に限定されていたので、
単独で有毒品種が持ち込まれても交配繁殖する可能性は
極めて少なかったのです。

しかし、今後は朝顔の栽培などと同じ感覚で
全国各地に「赤なた豆」の栽培が普及すると、
海外から持ち込まれた毒性の強い「なた豆」と
交配する危険性が増大します。

私の栽培経験では「なた豆」の開花時期は長く、
基本的には夏に開花が集中するとはいえ、
遅咲きの花が次々に時期をずらして交配を繰り返す
可能性があります。

そういう意味では、
2005年という年が「なた豆」栽培や
場合によっては日本の植生変化において
大きな一歩を踏み出す年ともなったわけです。

せっかく軌道に乗った商品栽培の「なた豆」農家も、
周辺住宅街の庭先にも神経を配る時代が来るかも知れません。

玩具販売の功罪は予想外に大きい可能性もあるわけです。
企業の営利が環境保護や消費者安全に優先するか?
地球温暖化という大きな問題だけでなく、
植生についても問われているのかも知れません。

本来は、大げさに考えなくても「赤なた豆」は
美しい花が咲き、観賞用としては楽しめます。

ただ、きちんとした知識がない人が
観賞用では済まず、ついつい実った豆を食べてしまう
危険性があることも否定はできません。
それは観葉植物などと違い、豆類であることにも起因します。

ユーカリの木には毒性がありますが、
オーストラリアの住民は豊かな自然環境の中の植生として
ユーカリと共生しています。

毒性のあるユーカリの葉を食べる可愛いコアラとともに、
人は緑のユーカリを大切に守っているのです。

毒性のある植物でも正しい知識と接し方が理解されていれば
人は十分に共生できるのです。

ただ、今の日本の現状では赤なた豆の共生には
ユーカリと違う点がひとつあります。

それは、知識の欠如ということです。
観賞用といくら限定しても誤食の危険性はあります。

赤なた豆は、ユーカリと違って豆類であるからです。
巨大なサヤができ、たくさんの豆が収穫されるからです。

●「なた豆」の毒性処理について

なた豆の毒性処理について述べた文献は多くありません。
一般に、豆類の毒性処理にはいくつかの方法があります。

主な方法は、
第1が水洗、
第2が加熱、
第3が加工
などで、
これらの方法を単独あるいは組み合わせで行います。

もちろん、細かく見れば様々な方法がありますが、
ここでは、水洗と加熱という一般的な方法を見てみます。

そもそも世界の豆類の生産量を見ると、
大豆(ダイズ)が60%、
インゲンとエンドウが各々10%ずつ、
ヒヨコマメが6%、
ソラマメが5%、
キマメが3%、
ヒラマメが3%、
その他が3%と、
栽培されている豆類のトップは大豆が抜きん出ています。
「なた豆」は、その他(3%)の一部に過ぎません。

日本では大豆の栽培知識や利用方法は発達定着しています。
大豆は4千年以上も前から中国で栽培されていたといわれます。
ある意味では「なた豆」以上に「大豆」は歴史も経験もある
というわけです。

世界の年間ダイズ生産量の80%以上が南北アメリカで生産
されていますが、
意外なことにアメリカのダイズ栽培の歴史は浅く、
1700年代後半に、ジョージアで栽培を始めるため、
中国で種子を買い入れたアメリカ人の航海士によって
もたらされたのだそうです。

アメリカのダイズは飼料の利用が多かったのに比べ、
中国や日本の大豆は食用として広く利用されました。

ですから、私たち日本人にとって最も身近な大豆の毒性処理
について先ず見てみましょう。

健康食品の王様のように思われている大豆にも
前述したサポニン(ゴイトロゲン)のほか、
トリプシンインヒビター、ヘマグルチニンなどという
聞き慣れない栄養阻害物質や有害物質が含まれています。

しかし、一般の食生活では大豆は「なた豆」ほど
強力な毒性を示すことはないので無意識の内に
毒性処理を行っているというのが現実に近いでしょう。

大豆の有害3物質は、共通した特性があります。
いずれも水溶性で水を加えれば溶けるのですが、
加熱には比較的強く、
100度以下の加熱では有害作用が残るといわれています。

たとえば、
豆腐製造工程では、豆乳中に18~20パーセント、
製品の豆腐にも11~12パーセントの
トリプシンインヒビターが残るといわれます。
ただ、実生活上は心配するほどの影響はありません。

市販豆乳は130度~140度の高熱処理を行うので、
有害物質の作用は完全に取り除かれているそうです。

また、第3の毒性処理方法として
大豆は納豆や味噌に代表されるように、
醗酵などの加工処理が発達しています。

家庭でも煮豆などの際に、よく豆を水洗し、
一晩、大豆を水につけたり、
じっくりと時間をかけて煮たり、
ゆでこぼしを適宜行うなどという
生活の知恵が伝えられています。

ここで注意したいのは、
健康上は問題となるほどではないものの、
大豆でも、理論上は加熱処理が不十分な場合などに
有害物質が残存することがあるという点です。

「なた豆」の水洗や加熱処理について考えてみます。
「赤なた豆」を例にとれば、大豆よりは
毒性の強いと思われる物質が含まれており、
下痢などの中毒症状を起こす危険性が指摘されています。

文献によれば、「赤なた豆」を料理する場合には、
かなり頻繁かつ大量に水洗を行うことや、
焙煎(ばいせん)などの加熱処理を行うことが推奨されています。

しかし、
豆の完熟の度合いや、
土壌、栄養分などの生育条件の違いや、
食べる量によっても、
毒性除去にどの程度の水洗や加熱が必要なのかは
画一的に基準(目安)を確定できません。

一般家庭では「なた豆」自体の知識が不足しており、
料理にあたっての生活の知恵はほとんどないのが現状です。

若いサヤをきざんで醤油漬けにしたり、
そのまま味噌漬けにしたりする加工処理の方法は
一部の栽培地域に伝えられてはいます。

中国の醤油漬けの伝統が日本でも「福神漬け」などに
応用されています。

そこで、一歩進めて「なた豆」の毒性を減らす特許
というものに注目してみることにしました。

健康食品会社のチラシなどに記載されている
「なた豆茶」の毒性を軽減する特許というものが、
もしかしたら、
高度の加熱処理技術などを応用しているかも知れません。
期待は高まります。
A4版の用紙で3枚ほどの特許2535311を調べてみましょう。

●「なた豆」の毒性軽減に関する特許2535311号

特許庁のインターネット検索サービスを利用すれば
誰でも登録された特許を自宅パソコンで見たり印刷できます。
検索方法は2つあります。

初心者向け検索と、通常検索です。
それぞれの検索方法を以下に述べますので、実際に
表示(印刷)してみましょう。

【初心者向け検索】
初心者向けとはいえ、2段階入力で、
かえって分かりにくいかも知れません。
ともあれ、先ず次のアドレスで検索ページに移動します。
http://www.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjbansaku.ipdl?N0000=110

上記ページから種別を「登録」
文献番号を「2535311」
と入力して、すぐ下の「照会」ボタンを押すと表示されます。
文献種別は「特許」です。

【通常検索】(こちらをおすすめ)
この方法なら1回で検索表示できます。
先ず以下のアドレスで検索ページに移動します。
http://www.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjsogodb.ipdl?N0000=101

1.の入力欄に以下を入力します。
文献種別「B」(注:Bは登録済みの特許の略号です)
文献番号「2535311」

表示形式はどちらをチェックしても可。。
PDF(右側ラジオボタン)がおすすめ。

表示種別は「全頁」を選び、
「文献番号照会」ボタンを押します。

表示画面では、左上の「特許2535311」の文字をクリックします。
PDFで表示した場合は、
下段左の「次頁」ボタンを押せば順に全3頁を閲覧印刷できます。

期待に胸をはずませて特許を読んでみましたが、
残念ながら加熱処理などの高度な技術特許ではありませんでした。
(高度技術でないから問題だという意味ではありません)

この特許の内容は、「なた豆茶」を作る場合に、
1袋のパッケージに10粒以上の「なた豆」を利用すると
毒性による副作用を起こす危険性があるので、
「なた豆」の利用は2~3粒程度にとどめ、
その他の薬効が期待される植物を何種類か混ぜ合わせる
という配合(比率)の特許でした。

これが、「なた豆」の毒性を抑え、健康増進を期待する
特許なのだそうです。
妥当性の是非はここでは触れないことにして、
予想外の毒性記述が見つかりましたので、
引用しておきます。

課題
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらナタマメを一粒乃至三粒使用した場合は
効き目は少ないが、
十粒以上使用した場合、ナタマメ本来の効果は強くなるが、
むくみとか、かゆみとか、皮膚の発赤を起こすことがある。

人によってはアレルギーによるじんま疹が生じることもある。
従ってナタマメの量を多くすることは、
人によっては副作用が出て必ずしも効果的とは言えない。
またその量によってはナタマメ本来の効果が生じない人もいる。

この様にナタマメは種々の症状を治癒するのに効果があるが、
強すぎたり、副作用があったり、効果が仲々生じない等の
欠点がある。

(途中略)
この発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、
少ない量でも確実にナタマメ本来の効果を生じ、
さらに副作用を発生させず誰にでも安心して飲むことができる
ナタマメを主成分とした健康茶を提供して
上記課題を解決しようとするものである。

●「なた豆」の魅力

なた豆は栽培も簡単で、成長を見るだけでもわくわくします。

注意点としては、
あまり小さな鉢に植えると成長しずらいので
大きな鉢や庭などの土壌に植えること、
夏の成長期には水を欠かさないこと、
人の背丈を超えるほど成長するので強風に耐える支柱を
しっかりと組むこと、
毎年同じ場所に連作しないこと、
などです。

窒素、燐酸、カリや、有機肥料など土作りも大切ですが、
ことさら栄養や病虫害を気にしなくても結構育ちます。

小さな芽が出たときから、栽培の楽しみは続きます。
生命力の感動を味わうことができるでしょう。
なた豆の花が咲くころ、ツルの先端から出る蜜を吸いに、
蟻たちが忙しく行き来する姿は夏の風物詩として
あなたの記憶の1ページに残されるでしょう。

大きなサヤの中から新しい豆がずらりと並んで収穫できます。
ふわふわした綿毛に覆われた豆はいとおしいものです。

「白なた豆」ならば、食用にも問題はなく、
私もいろいろな方法で料理したりして楽しめました。

ミキサーで粉砕した豆をフライパンで炒ったりして
「白なた豆茶」や「白なた豆コーヒー」にして飲みました。
癖のない味です。

センセーショナルな「なた豆茶」の効能を追い求めなくても、
「麦茶」や「ウーロン茶」などと同じように普通の飲料として
味わうことも楽しみのひとつと、ゆったり構えましょう。

様々な種類のお茶が市販されている現在、「なた豆茶」も
それらの一種と考えて、時には好みに応じてブレンドして
もよいでしょう。
ただし、過大な薬効に執着するのは理性的でありません。

「なた豆」の仲間は、まだまだ神秘のベールに包まれた
不思議な豆類なのだと想像することも、また別の意味で
楽しみの一つに数えることができるかも知れません。

以上


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