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ちほ日記 [全165件]

佐藤英明『スタンダード所得税法』  (7)
[ 及び腰か勇み足な書評 ]  


弘文堂の本については、『基礎から分かる会社法』で結構なことを書きましたので、バランスをとるために、おすすめできる本もあげておきます。

二色刷、重要度に応じてフォントを変える、ケースを多用しているといったことは、今時の教科書と同じ傾向ですが、税法の教科書では極めて珍しいですよね。

しかも、ケースというのも、単なる判例を簡略化したものではなく、制度の理解を深めるために、同じようなケースでいろんなパターンを出したりしています。このことが特に活きていると思ったのが、たとえば、租税における垂直的平等とか水平的平等といったものについて、いろんなパターンをあげることで、どうやってバランスをとるべきなのかを具体的に検討しているところなどです。

他の本では抽象的に論じられてしまうところも、極めて具体的に考えられるということです。これまた先日あげた『ベーシック税法』では、抽象的な記述にとどまってしまってるところが多いのと比べると、具体的に理解してもらうという配慮が、とても徹底しています。

フォントを落とした部分は、確かに本文よりも難しいのですが、ここでもきちんとケースを用いて具体的に解説されていますので、抽象的で何いっているか全く理解できない、ということにはなりません。

で、話は最初に戻りますが、なぜこれほどの本が出せる出版社が、会社法のスタンダードの本ではああいう本を出してしまうのかが不思議なわけです。


最終更新日時 2009年5月4日 0時5分6秒
コメント(7) | トラックバック(3) | コメントを書く


2009年5月3日

大内伸哉『雇用はなぜ壊れたのか−会社の論理VS.労働者の論理』
[ 及び腰か勇み足な書評 ]  


会社の論理と労働者・生活者の論理という対立する論理を分析枠組として用いることで、労働問題を解説していく本。

例によって、タイトルにあるような「なぜ」雇用が壊れたかに対する回答はありませんし、そもそも雇用が「壊れた」のかどうかも、よくわかりません。

労働法は労働者の権利を保護するためだけにあると思っていた人にとっては、それが誤解であることを気づくのに役に立つかもしれませんけど、そうでない人にとっては、まあ普通です。

ある程度の知識がある人は読まなくてもいいんじゃないですか。新書といえども、何か光るものがあればいいなと思うのですが、この本にはそういう期待はしないほうがいいみたい。思わせぶりなタイトルに惑わされないように。


最終更新日時 2009年5月3日 1時21分43秒
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タグ:労働法 , 雇用

2009年5月2日

コリンP.A.ジョーンズ『手ごわい頭脳 アメリカン弁護士の思考法』
[ 及び腰か勇み足な書評 ]  


例によって、タイトルと中身がいまいち一致しない新書。「手ごわい頭脳」って何でしょう?以下、この本に書いてあることというよりも、この本から連想したことを書きます。

・アメリカの弁護士の思考法について書かれた本というより、アメリカ司法の入門書とみたほうがいいかもしれません。というのも、陪審に代表されるアメリカの司法制度の下で、弁護士が最大限の効果をもたらすにはどのように思考すべきか、ということで、その前提となるアメリカの司法制度の説明が分かりやすく書かれているからです(なので、アメリカの法廷ドラマを楽しくみるための基礎知識としても役に立つと思います)。

・また、このことからすれば、アメリカの弁護士の思考法というのが、アメリカの司法制度がどういう制度であるかによって既定されているということでもあるわけです。この点、先日紹介した『プロ弁護士の思考術』が、日本の司法制度がこうだから日本の弁護士はこう思考する、という形では論じておらず、普通のビジネス書に書かれていることと内容的にあまり変わらないのとは対照的。

日本では、弁護士は、一般的なものの考え方でも十分通用するということなんでしょうか。それは別に日本が劣っているということではなく、日本の司法が一般社会でのお作法とそれほど違っていないということを表していることになるわけですが。逆に、アメリカでは、「弁護士的な考え方」というと、司法向けに特化した思考法だということになるわけです(程度問題でしょうが)。

・いわゆる「リーガルマインド」といわれるものや「法の解釈」についても、あくまで印象論ですが、日本では、現行の司法制度べったりではない、抽象的なものとして捉えている気がします。なので、日本のおけるその手の本では、諸外国の学者の、法の解釈に関する見解を、国の違い、時代の違いに応じて相対化しないで、抽象的に引用できるのかもしれません。

他方で、この本からすれば、アメリカでは、たとえば陪審制度のもとでは陪審員向けの法解釈というものがあるのであって、宛名のない、抽象的な「法の解釈」というものは、(そういうものが存在するかどうかは別として)考えなくてもいいことになりそうです。

そうすると、たとえば「法と経済学」という学問は、日本では最初に、法に対するアプローチとして正しいか否か、という問題の立て方をされることがありますが、アメリカの場合、そういう議論は置いておいて、陪審員向けに考えた場合には難しすぎて役に立たないので使わないが、経済学の素養のある裁判官向けには、正義云々という言葉よりも経済学的手法のほうが理解してもらいやすいので使おう、というように、「正しいか否か」ではなく「役に立つか否か」によって場面ごとに使い分ける、という考え方になるのでしょうか。

・「訴訟大国」「訴訟社会」などとして、日本では時に劇画タッチにイメージされることの多いアメリカですが、この本を読むことで、そういったイメージが正確でないことが分かります。

・政府に対する不信が基礎となって存在するアメリカの陪審制度が、消費者訴訟、行政訴訟などで大きな成果をもたらしているのを読むにつけ、日本の裁判員制度が、対象事件を殺人事件などの刑事事件に限っていることの不思議さを感じざるをえません。

・念のためもう一度いっておきますが、ここに書いたことはあくまで私がこの本を読んで勝手に連想したことがほとんどで、この本自体にこういうことがそのまま書いてあるわけではありません。


最終更新日時 2009年5月2日 0時21分49秒
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2009年5月1日

大竹文雄 『経済学的思考のセンス お金がない人を助けるには』
[ 及び腰か勇み足な書評 ]  

様々な素材をあげて、経済学的な分析の仕方を解説した本。

・素人的には「因果関係」と「インセンティブ」の意味が分かれば十分ってことですね。
で、因果関係については、どっちが原因でどっちが結果かということをきちんと分析して見極める必要があるということ、インセンティブについては、あくまで人間を対象とするものだから、金銭的なものだけでなく、非金銭的なものにも配慮しなければならないということが、素材を通して分かります。

・「数式」はありませんので、経済学に苦手意識がある人でも、安心して読めると思います。ただ、後半から徐々に素材が固めになっていくので、一読してすぐ理解できないところもあるかもしれません。

・こういう経済学の本は、往々にして、わざと常識はずれの結論が導かれる素材を選んで読者をびっくりさせようとすることがありますが、この本は結論的にはそれほどおかしいことは言っていないと思います。これは、おそらく著者が、結論を導くためのプロセスを理解してもらいたいのだと考えているからなんでしょう。まあ、刺激がほしい人には物足りないかもしれませんが。


最終更新日時 2009年5月1日 9時5分17秒
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タグ:経済学 , 思考

2009年4月30日

近藤光男他『基礎から学べる会社法』
[ 及び腰か勇み足な書評 ]  


・第1刷の間違いのすさまじさは、なぜここまでの間違いに気づかないまま出版できたのか、逆に不思議でたまりません。

・二色刷で図表も多用しているので、何やら分かりやすそうに思ってしまいますが、内容についてはさっぱり初学者に対する配慮が感じられません。例によって、条文引き写しがほとんど。具体的なイメージなんてさっぱりつかめません。

・「計算」のところなんてアリバイ的に一応ひととおりのことは書いておきました程度の内容。わざわざ貸借対照表と損益計算書をそれぞれ丸々1頁つかって載っけていますが、その中身に対する説明もないので、ページの無駄遣いにしかなっていません。

「企業会計原則」とか、わざわざ色を変えて太字にしているにもかかわらず、その言葉に対して何の注釈もないので、初学者は、それが何だか分からないでしょう。

・ということで、初学者にとって理解しやすい本だとは、とても思えません。かといって、勉強の進んでいる人にとっても、この本を読むくらいなら普通の教科書を読んだ方がいいと思います。

なので、この本を読んでもいい人というのは、せいぜい、昔に会社法を勉強したことがあって新会社法を勉強し直したいが、分量の多いのは避けたい、かといって、ビジネス書も避けたい、という人ぐらいじゃないんですかね。


最終更新日時 2009年4月30日 11時21分39秒
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2009年4月29日

三木義一『日本の税金』
[ 及び腰か勇み足な書評 ]  


・何の味も素っ気もないタイトルですね。さすが岩波新書。でも、中身は非常に充実しています。

・単なる制度の羅列ではなく、各種税法の問題点について批判的に検討されています。しかも、こういう新書で税法の批判をするとなると、「納税者の権利が不当に侵害されているから違憲」とか、どうしても、憲法論を振り回した大味な理由付けで終わりになりがちなところですが、この本ではひとつひとつきちんとした検討がなされていて、このボリュームでよくここまでの論点を詰め込めたなあ、って感心します。

・そのせいでしょうけども、予備知識のない人にとってはやや説明不足なところもありますので、そういう人は、『よくわかる税法入門』から読んだ方がいいと思います。


最終更新日時 2009年4月29日 0時48分25秒
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2009年4月28日

三木義一『給与明細は謎だらけ』


タイトルをそのまま受け取ると、何やら給与明細自体に謎があるみたいな感じになってますが、そうではなくって、給与明細を受け取っているサラリーマンの皆さんは、給与明細に書かれていることの意味がよく分かってないでしょ、ってことのようです。まあ、今時の新書ならではのタイトルですね。

ということで、給与明細に記載されていることについて、その内容をひとつひとつ解説していくというスタイルの本です。サブタイトルが「サラリーマンのための所得税入門」となっていますが、確かに、サラリーマンにとっては、ただ単に税法の解説をされたり、自分と関係のない制度をあれこれ説明されても興味を持ちにくいでしょうから、こういうスタイルはいいんじゃないですかね。

スタンスとしては、源泉徴収+年末調整によって税に対する関心から引き離されてしまっているサラリーマンに対して、もっと関心をもったほうがいいよ、という感じで進んでいきます。

文章は具体的な数字をあてはめたりして分かりやすいので、非常に読みやすいと思います。


最終更新日時 2009年4月28日 11時11分11秒
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