今日の読書 毒草師/高田崇史
これは高田崇史のメインのシリーズである「QED」シリーズのスピンオフ作品といえるものですね。主人公というか、探偵役は「QED」シリーズ9作目になる「QED神器封殺」で初登場した御名形史紋。「QED」シリーズの探偵役である桑原崇とキャラがかぶる部分も多い人物であり、実際にこの2人の会話は知識の範囲からなにから常人ではないのも含めて、非常に息があっている部分もあるんだが、周りは置いてけぼりというか、読んでいる分には面白いが、実際に現実として側にいられると非常に厄介に感じる類の人物像(往々にして推理小説の探偵はそういう部分がありますが)ただ、桑原と違って御名形の方がよりインチキ臭いというか、浮世離れしていると感じざるを得ないのが、桑原は漢方の薬剤師としての本業があるのに対して、御名形は日本で唯一の毒草師というところでしょうか。まぁ肩書きが違うだけでそれ以外はかなりキャラはかぶると思うので好けどもね。で、「QED」シリーズが現実の事件といわゆる歴史の謎とを絡めたスタイルのミステリーなわけですが、スピンオフ企画も基本的には全く同じ。しいて言えば他のレギュラーメンバーを使わないことによってシリーズものではやりにくい部分を表現したというか、利用したということぐらいでしょうね。メインで扱われている歴史ネタとしては、「伊勢物語」ということで、「QED」シリーズでもたびたび出てくる当時の貴族の傲慢な思考と、和歌に込められた何重にも張り巡らされたダブルミーニング、トリプルミーニング。そして、1つ目。シリーズを読み続けていると、またここで使うかとニヤリとしてしまうというか、そろそろ別の時代もやってはくれませんか?と思ってしまったりとか。大仕掛けという事はこのシリーズではない(と錯覚しているだけかもしれないが)のですが、いわゆる歴史の授業で習うものとは違う、勝者が歴史を作るという当たり前の流れの裏に込められた恨みつらみ呪いなどは読んでいて興味の沸くものでもありますし、授業としての歴史を大いに苦手とする立場としては、こういう事を歴史の授業で取り上げれば、もっと良い成績がとれるものを!と八つ当たりしながら読んでみたり。で、このスピンオフ企画というのは、今後も続くのかは気になるところですね。「QED」シリーズは大好きですが、なんとなくこのシリーズは人間関係の進展の方にどうするつもりなんだろう?とかを思ってしまうので、そういうことを心配しないで読める分、別の側面が楽しめるので。ちょっと気になるのは、「QED」シリーズを読んでいない人がこれを単体で読むとどういう風に映るのだろう?ということでしょうかね。