新パスポートと指紋
「新型のパスポートを発行します!! ~IC旅券の導入について~」外務省のサイトに6月22日付でこんなページが更新された。来年以降更新するパスポートには、ICチップが搭載され、そこに「顔情報」が記憶されることになるという(有効期限までは原則切り替えの義務はなし)。海外生活者にとって、とっても大切なパスポート(*)。でも、日本にいると、何気なく新聞やテレビから入ってくるこんな情報も、海外にいると意外と漏らしやすいので注意。しかも、外務省のお知らせには、ビックリマークが二つもついていて、如何にも「好消息」(よいお知らせ)のようだが、必ずしもそうとも言い切れなさそうなのだ……。○その理由1まずICチップの実費として、手数料が1,000円値上がりする。人民元に換算して約75元は決して安くない!○理由2次に、「これまでの再発給制度(パスポートを紛失等したときに、有効期間をそのまま引き継いだパスポートを発給する制度)は廃止され」る。実は私も中国でパスポートの盗難に遭い再発行を受けた経験者。このときは意外に早い対応で逆にびっくりだったが、今後はもっと手間がかかることになりそうな様子。○理由3さらに、日本でのパスポートの申請方法は変わらないとのことだが、「これまで以上に写真の品質に留意する必要があり、現在適切な規格(写真品質)について検討しているところ」だそう。ということは、中国でパスポートを更新ということになると、「適格な規格」の写真を入れるのに苦労する可能性がありそうだ。。。。※ただ、これまでは海外でパスポートを更新する際には、日本で発行されるのとは違う簡易版=「機会読み取り式でない旅券」(写真が刷り込まれておらずシールで貼り付けたもの、バーコードもないので入管で毎回インプットが必要)も発行されていたが、このような例外が今後もあり得るのかは不明。と、ここまでは、実務的な話。私のさらなる関心は、昨年5月に「指紋が危ない―指紋ビジネスとプライバシー」の中で書いたように、パスポートに指紋情報が加わるのか? だったが、今回はこれは見送られた。しかし、……である。911以降、米国では出入国管理に、生体情報認証技術(バイオメトリクス)を利用することを主張、パスポートに指紋情報を入れる圧力もあったのだ。これを日本政府がどう回避したのか? その辺の事情を新聞記事などで検索してみたが、まだ見つけられていない。ただ、パスポートとは別に、指紋付きのカードを持っていれば簡単に出国できる指紋カードを06年から導入する計画があることが報じられている。(「指紋カードで出国審査、旅券の照合を省略 希望者向け、法務省検討」05/3/13朝日朝刊)また、公安委員長が「パスポートに指紋情報をいれるべきだ」と記者会見で語ったことは報じられてもいて(6/17日経夕刊)、今後そうした動きが益々強まりそうな気配である。「別に悪いことしないなら、指紋なんて管理してもいいじゃん」「それより出入国管理がスムーズに早くなったほうがいいよ」そういう意見も強いだろう。一方で、最近、JTBが1,500人分のパスポート情報紛失したことがニュースになってもいる(6/10日経夕刊)。海外で身分を証明する大事なパスポート。それゆえに新しいパスポートにはちょっと関心を持っていたい。*中国に長期滞在する場合、以前は「居留証」を持っていれば良かったが、新制度によって、今後は、「満16歳以上の外国人が外出する時は、旅券を常時携帯すべきである」とされている。外国人査証及び居留に関する新制度施行(05.01.06)◎「IT大捜査線 電子パスポートにも採用 バイオメトリクス認証」(NTTコムウェア)のこのページはなかなか面白い。1800年代後半から始まった指紋研究は、英国研究者が、日本で証文に爪印を押すのを見たことがきっかけだ、なんていうエピソードもある。