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*こおり鬼*

公平なはずのジャンケンにすら、何か仕組まれているのではないかと疑ってしまうんだ。














便利 ~切ない恋の物語 (違~















ミッチャンは毎日こおり鬼をした。


毎日ジャンケンで鬼を決める。


たまに、歌の歌詞を間違えた人が鬼にされることもあったが、たいていはちゃんとジャンケンで決めた。


毎日ジャンケンするのに、鬼は決まってコハマンになった。


ミッチャン、実はコハマンのことがあまり好きではない。


コハマンはいつも一言多いので私だって好きではない。


最初、ジャンケンは普通に行われていた。


でもある日からジャンケンは「グーとパーの多い方が勝ち」になった。


ミッチャンだ。


ミッチャンは、あらかじめ足が遅い人たちに自分が何を出すか言ってそれと同じものを出させた。


私はミッチャンの出すものの規則性を見抜いてそれを出せばいい。


コハマンは諦めていた。


自分がミッチャンにあまり良く思われていないことを知っていたし、それをどうこうしようという気にはならなかった。


コハマンは毎日鬼になった。


そして、不可能ともいえるこおり鬼ミッチャンコースを走り回った。


小学校は校舎が3階まであって、ミッチャンはその全域をこおり鬼コースと定めた。


こんな広いコースに鬼は1人。


小学生には体力的にも精神的にも厳しい。


しかしコハマンは毎日本気で走った。





どんなに走っても、終わりが来ないことを知っていても。





こおり鬼には、必ず私とミィが参加させられた。


ミィはミッチャンのお気に入りだ。


ミィは、あまり逃げ足が速いとはいえなくてすぐにコハマンにつかまってしまう。


ミィは鬼ごっこがあまり得意ではなくて、隠れることも苦手だ。


私やミッチャンのように計算して動かない。


頭はいいけど遊びではあまり頭を使わないのだ。


しかし、そんなミィが鬼になることは一度もなかった。





それはこおり鬼といぅシステムと、ミッチャンルールがあったからだ。





ミッチャンルール1.仲間がさわって助けられるのは3回まで。


ミッチャンルール2.その3回は、仲間内で分け合うことが出来る。


ミッチャンルール3.誰かを触っても気分が悪そうなら逃がす。じゃないとお手つき。





恐ろしいルールだ。


つまり、私とミッチャンがつかまらなければミィは9回助かることが出来るのだ。


1日でつかまる回数は平均4回くらい。


絶対にミィが鬼になることはないし、コハマンが鬼を脱出できることはない。


ミィのそばにはいつもミッチャンがいて、ミィがつかまると鬼(コハマン)に抗議する。





コハマン「もぅ6回さわった。」


ミッチャン「まだバナナのがあるし。」


コハマン「ぇ、でもバナナここにいないじゃん。あげていいの?」


ミッチャン「大丈夫。ちゃんと確認してある。」


コハマン「・・・・分かった。いいよ。」





といぅふうに、私がいなくてもミッチャンは勝手にミィに分け与えた。


私は、知らない間に自分の助かる回数が無くなっているかも知れないので、


絶対につかまってはならない。


私は窓から1階におりたり3階に登ったりすることでそれを避けていた。


時にはこんなこともあった。


ミィが9回全てを使い果たしてしまったのだ。


しかし、これもミッチャンは想定内と言わんばかりに慌てず堂々としている。





コハマン「もぅ・・・終わりでしょ?・・ハァハァ・・・・・」


ミッチャン「ミィは今頭痛いって。だからお手つきね。」


コハマン「・・はぁ?」


ミッチャン「ミィの『命』2回増やす。」


コハマン「は・・・」


ミッチャン「じゃ、十秒数えて?」


コハマン「わかった・・・・・・」





またもゃミッチャンの手によってコハマンは鬼脱出への第一歩をふみ出すことは出来なかった。


毎日がこれの繰り返し。


持ち越しなどはないのだ。


毎回鬼が新しく決められ、また1人ずつ3回といぅ『命』をもらう。


いつまでも終わらないこおり鬼。


名前のとおり、冷たく残酷な遊びであった。

















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