Weblog / 2004年12月15日 04時43分44秒 2004年12月14日
昨日13日に、私の事務所があるインターの人と一緒にダイヤモンドホテルで催された会議に行って来ました。日本の招聘機関が組織する各協会の代表とフィリピンのプロダクション協会やその他の有力者が出席する、今回の日本政府が進めているフィリピン芸能人を削減するための法改正について議論する会議です。参加費は1500Pで段取りの悪い軽食付きでした。
最初に我々は短いプロモーション・ビデオを観ました。フィリピン女性が家族の生活を助ける為にトレーニングして歌手になりOFW(Oversea Fillipino Worker)として日本に行くというストーリーで、オリジナルの歌が付けられています。このビデオの趣旨はもちろんフィリピン芸能人は家族を助けるために練習して芸能人となり日本に行くのであって、新聞などで報道されるように、連れてこられて無理やり売春をさせられたりするのではないのだというアピールです。引き続き、会議は各協会の代表の発言が続くのですが、まあ、内容はみな同じです。「我々は売春斡旋業ではない」「フィリピン芸能人を削減されるとその家族を含め多くのフィリピン人が生活に困る」「我々は一致団結しなければならない。しかし時間が無い」等です。会議の全体を通して、業界全体の本質的危機を前にして未だに組織としてまとまることができず、国の政策に対して何も働きかけることができないという強い焦燥感だけがひしひしと感じられるのですが、やはり有効な提案や決議は何もなかったです。この会議で発表された具体的な行動計画は三日間にわたる街頭デモだけでした。
こんなときに誰かが立ち上がり協力し合って事態を打開すればプロジクトXのネタとなるのでしょうが現実では無理ですね。一般の方にはこの業界がどのような仕組みになっているがまったく分からないと思います。だからこそ我々もマスコミのネガティヴ・キャンペーンに対して有効なアピールができないのです。このケースは本質的に捕鯨問題や森林乱伐採などの問題と同じなのですが、違うのは、我々が最初から最後まで欠席裁判を行っている点です。これはこの業界の発生過程に原因があるのですが、このBLOGで業界の歴史から説き起こすのは私の能力をはるかに超えていますし、また私は立場上それができません。まあ、ひとつだけ言わせてもらえますが、この前NHKの討論番組で森林の無計画な伐採のため森林が減り水害が起こりやすくなっている問題が取り上げられていました。このとき、1人の学者か議員か忘れましたが、伐採を減らした場合に仕事を失う多くの人のための受け皿が必要だと述べていたのです。そして同じ事を我々プロモーターのために言ってくれる人は皆無なのです。
極めて少ないですがこの業界に関するルポタージュなどは書籍で見つけることが出来ます。しかし私が知っているのは、ヤクザが仕切っていた昔の特殊なケースが紹介されていたりして、これだけでは読者に誤解を与えるだけです(タイトル、著者とも忘れました。立ち読みしただけですが、著者がフィリピンに某大物プロモーターを尋ねて行き、ホテルのスイートで彼と会のですが、そこには女がずらっと並んでいて「どれでも好きなのを連れて帰れ」といわれたと書いてある。ウソくせー!)。この業界の成り立ちと歴史、タレントたちの徹底的なインタヴューや具体的なさまざまな数字を含んだ本格的ルポタージュというのは残念ながら皆無です。ホント、どなたか書いてください。軍司貞則あたり取材してくれんか、、、。
さて、そこでタレントです。確かにこの措置で影響をもっとも受ける人々、そしてもっとも数が多いのがタレントです。日本政府は興行VISAの入国を8万人から8千人に減らすと言っているので、単純に考えて7万人以上の人が収入を失うわけです。この数字はちょっとスゴイのではないですか。それだけでなく、フィリピンに詳しい人なら良く知っていると思いますが、この7万人のひとりひとりには平均5人から6人の家族がぶら下がっているのです。つまり7万人掛ける5人として35万人の生活が窮地に陥ることになります。日本政府はこの削減法案を実行するならば引き換えにフィリピンのこの35万人のために経済援助を行うべきでしょう。少なくとも北朝鮮や中国への支援よりはるかに必要で、またその義務があると思うのですが、、、。
そうです。35万人となるとこれは人道問題です。なんなら国連で審議しても良い。アメリカの向こうを張るにはもう国連しかないですから、、、。ところで、これは一般の方に言っておかねばならないですが、今回の日本政府のフィリピン人タレント削減措置は、発端がアメリカによる日本の「人身売買」に対する警告からなのです。これはもちろん根拠の無いことで、アメリカが今なぜコレを言い出したのか、また日本政府がコレを受けてなぜフィリピン人芸能人のみを俎上に乗せたのか、まったくのナゾなのですが、これに関してはここでは問いません。それよりフィリピンという国の矛盾、というかどうしようも無い有様が今回の件で露呈されたように思われるのです。なぜフィリピン人は多くが海外に職を求めなければならないのでしょうか。もちろん日本へのタレント活動だけではないです。アメリカ・カナダへの看護婦・看護師、香港・台湾へのメイド、アラブ諸国への建築労働者など、海外で多種多様な仕事に多くのフィリピン人が就業しています。国内では何の産業も育たず、当然市場には外国の製品ばかりで、フィリピン人は海外で働いて稼いだお金をフィリピンに持ち帰りフィリピンで外国の製品を買うという、自分自身の国にとって将来的になんのプラスにならない経済活動を続けているのです。昔、1人のタレント志望の女性になぜタレントになりたいか聞いたところ、彼女は「外国に行かない限り私の人生に何も起こらない」と答えたのです。20歳のうら若き女性にこのようなことを言わせる国家とはいかなる国家なのでしょうか。もちろん何事でも一面だけで捉えてはいけないのは分かります。フィリピン人の家族に対する忠誠心は並大抵のものではなく、そこから生まれる無償の思いやりは時には我々を感動させることもあり、もちろん自国や自民族への愛情もなみなみならないようなのですが、しかし彼らが比較的平気で外国人と結婚したり外国に移住したりするのも事実で、やはりフィリピンという国が、国家として自国民に対して十全に責任を果たしているとは、残念ながら言えないのではないでしょうか。他国で働かねば家族を養うことができないこの国の現状を憂慮する声が、今回の招聘業者の会議において、日本側とフィリピン側両方の出席者から全く聞かれなかった事実が我々の業界の卑小さを物語っているように私には思えるのです。
ジャパユキ、とはタレント達が自分自身を自嘲をこめていう時のコトバです。彼女達は自分の家族とともに生きる延びるためにタレントになります。タレントは普通若い女性なので当然仕事の上でいろいろなことが起きます。それに耐えて彼女達は異国の地で働くのです。そして自分達の仕事がなにか正当でないことも自覚しています(これは他の移民労働者の成り立ちと同じく、自国民が嫌がる仕事を移民にさせる、という現実から引きおこされる不平等感です)。しかし勘違いしないで欲しいのですが、またこれは比喩的に誇張して言うのですが、彼女達はそもそも売春婦になりたくないために日本に行くのです。最終的な堕落を避けるためにジャパユキになることを受け入れる、ということです。日本では、誰でも若さと美しさがあればそれだけで価値が発生するので商売になります。テレビタレントも同じで、真の芸能性を持つタレントなど100万に1人もいません。若さと美しさでお客を呼び寄せるのが本来の芸能人なのです。その仕事をする者を「売春婦」と呼ぶならば、心の中で姦淫を犯したことのない者だけが彼女達に石を投げるが良い。アメリカ人よ、自らの建国の血塗られた歴史を我々の血で洗い流せると思っているのか? 「人身売買」とはオマエらが500年前に始めた生業だろうが!
もちろんこの業界はタレントにとってフェアではないことも多くあります。特に金銭的な面です。これらの悪い面はこれを機に改善していかなければなりません。はっきり言ってARB/ACCが無くなってもいいのです。このカードシステムが利権を生み出し、たくさんのクズを呼び寄せます。とにかく、願わくば、フィリピン人がフィリピンで誇りを持って仕事が出来るようになる未来まで彼女達に日本で働く場を提供していかなければなりません。また、彼女達自身にそれが無理ならば彼女達の子供達がそうなるまで、我々は招聘業を続けるべきなのです。それが、この仕事に一度でもかかわってしまった我々の最後の使命なのではないでしょうか。