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テーマ:70年代英国音楽(238)
カテゴリ:キングクリムゾンメンバーズワーク
先月当ブログで2008年に亡くなられたティノ・リチニオさんを取り上げました。まだ10代のロバート・フリップやゴードン・ハスケルの学生バンド仲間で、レイヴンズやリーグ・オブ・ジェントルメンではリーダー格だったとか。
60年代半ば、バンドが他の連中と喧嘩した際にロバート・フリップが止めに入ってクチを引き裂かれ大怪我をした事件で、その時喧嘩していた張本人がこのティノさん。バンドリーダーとしてよほど腹に据えかねる事があったのかもしれませんね。彼も顔中ボコボコにされたそうですが、この事は陰に隠れてみていたゴードンの証言としてシド・スミスさんのクリムゾン本に収録されてましたね。 そんなティノさんと、フィールズ参加でも知られるアラン・バリー、そしてグレッグ・レイクとバンドを組んでたジョン・ディッケンソン。このボーンマス出身三人が組んで1977年に出したアルバムが、今回紹介する一枚。(2015年4月追記、英国での発売は1977年年末だったようです。日本盤や諸外国のは、もしかすると78年発売かもしれません。米国ビルボード1978年3月にハーベストレーベル広告で掲載を確認したのでアメリカ盤はその時期に出た可能性があります。) King Harry - Divided We Stand (1977)EMI EMC 3188 (EMI Japan EMS-80968) Side 1 Fighting Talk (Dickenson, Licinio) You Stand Accused (Dickenson) Keeping The Peace (Licinio) Grandpa's Farm (Dickenson) Side 2 Dear Mathew (Dickenson) Can You Hear The Music (Licinio) Dressed Up To Kill (Dickenson) Endless Miles (Dickenson) King Harry: Engineer, Keyboards, Producer, Vocals : John Dickenson Guitar, Bass, Vocals : Tino Licinio Lead Guitar, Bass, Vocals : Al Bowery Drums : Harold King Recorded At Movement Studios Mixed At Movement Studios King Harry Family Tree (※その後情報が出てきた分にて2022年4月8日加筆修正Ver.50) PDF版 http://chop100.doorblog.jp/King%20Harry%20202204b.pdf このファミリーツリーは、かなり大きな画像なのでダウンロードしてからみられることをお薦めします。情報を整理する為に作った上記のファミリーツリーで、彼らがどれほど複雑な人脈を絡ませていたかその一端を見られると思います。ただしあくまでもキング・ハリー中心なことを予めご了承くださいw (※ファミリーツリー編集時にグレッグ学生バンド時代の不明な点をツイッターにおいてKimmyさん、シャイ・リムズにフリップが関わった情報をにゃん玉99さんに、ザ・シェイムのシタール奏者をグレッグ・レイク・ウェブサイト管理人様他様々な方にそれぞれ提供していただきました。ありがとうございます。2015/4/10) レコーディングは、中心人物ジョン・ディッケンソンの作ったムーブメントスタジオ。ここでEMIに売り込む際のデモ録音を行い、そのテープがバンドが契約を勝ち取れた理由だとされています。 これが日本盤出てたんですねー。先月発見したときも驚きました。邦題が「音楽への招待」。ライナーを読んでみましたが、ライターさんもバンドがどれほど多くのプログレ人脈に結びついてるか当時知る由も無かったのか、全くの新人バンドとしてみて文章書いてますね。今読んでもインタビュー以外に情報源としての価値が乏しいですが、それでも出てたのは凄いw 77年の日本でですよ? ライナーではニューウェーブの登場で強者だけが生き残る時代に、こんなポップバンドを出すEMIという書かれ方をしてます。EMIが当時出していたバンドを引き合いにレーベルの独自性が解説され、キング・ハリーの紹介はほとんどありません。情報が無いから仕方ないですがw こちらは欧州盤シングルのジャケ写真 左からティノ、ジョン、アランと並んでいるようです。とにかく、3人とも有名なミュージシャンと古い関わりがありながらも、主流から外れた人物ばかりで情報というものが皆無に近いです。歴史に埋もれるというより最初からほとんど注目もされてこなかったということでしょうか。 スタジオを自ら作り、アルバム制作の全てを仕切ったのがジョン・ディッケンソン(キーボード・ヴォーカル) 彼はグレッグ・レイクの学生時代からのバンド仲間で、レコードデビューをグレッグと共に1967年のThe Shameで果たしてるのが知られてます。後に再編したバンドはShy Limbsとなりドラマーにはキング・クリムゾン加入前のアンディ・マカロックがいたりした初期クリムゾン周辺人物ですね。シャイリムズでは重厚サウンド作りをシングル二枚に残してましたが、このキング・ハリーにも所々のオルガンの音色などその面影をサウンドに残しています。アルバムでも多くの曲を書き上げてます。 次にティノ・リチニオ(ギター・ベース・ヴォーカル) 彼は、ロバート・フリップやゴードン・ハスケルと学生バンドを組んでいた事で知られますが、実はこのレコード以外に彼の関わった作品を知りません。レイヴンズからリーグ・オブ・ジェントルメンと活動した後、丸11年の間の活動歴が不明です。ただ、日本盤ライナーにはEMIからのプレスリリースを参考にしたのか、キング・ハリーの三人は「ボーンマウス」というバンドを過去に組んでいたと書かれてます。アルバムでは3曲に作者クレジットがあるので、それらの曲を歌ってるのは彼ティノ自身なのかもしれません。拙作ファミリーツリーに書いてあるように、彼の「ティノ」という呼び名は「ヴァレンティノ」のティノだけ抜き出した呼び名です。(2015年4月追記。本稿の最後に、その後判明したリチニオとバリーのバンド、アクトレスを紹介しています。) 最後にアル・ボウリー(リードギター・ベース・ヴォーカル) 彼のプレイがプログレファンには一番なじみがあるかもしれません。彼はフィールズに参加したアラン・バリー本人であり、ゴードン・ハスケルがインタビューで「世界的な腕を持ちながら注目されなかった悲運のギタリスト」と称してた人物。ハスケルのセカンドソロアルバム参加でも印象的なプレイを残してますが、実はハスケル自身がアルバムに呼び寄せたことが後のインタビューで判明してます。このキング・ハリー参加時には綴りを60年代初期にジャイルズ兄弟と共に在籍してたダウランズ時代の名に戻しています。アルバムではコーラスが多いのですが、一部アランがリードヴォーカルらしき部分も後半に聞き取れます。フィールズの「イーグル」で聞かせた苦もなく高速パッセージを弾きこなす一面は、このキング・ハリーでも健在です。またスライドプレイも披露しています。 ドラムスのハロルド・キングはスペシャル・サンクスあつかいで、正規メンバーでは無いようですが、彼もこのアルバム以外に活動した痕跡の無い謎の人物です。(2015年2月追記、セッションドラマーを何人か使ったとの事で、その総称としてのハロルド名義だそうです。アランスミシーみたいなものとでもいうかw。)(2017年8月23追記、キング・ハリーの制作を手伝った事をサポートドラマーだったデイヴ・ミューラー氏にFacebookで確認済。) アルバムの印象を海外では「パイロット」や「10CC」と比較しているひともおりますが、華やかさはあってもパイロットほどの洗練されたサウンドではないですね。誰かが黙って「これイタリアのバンド」なんていって聞かせたら信じちゃうかもしれない、そんな妙な明るいサウンドカラーを持っています。 日本盤での各曲タイトルは Side1 1 ファイティング・トーク 2 哀しみの人生 3 優雅な気分 4 農園の想い出 Side2 1 ディア・マシュー 2 キャン・ユー・ヒア・ザ・ミュージック 3 最高の気分 4 終わりのない道 このアルバム、CD化されていない・・・と思ったらなんとロシアでCD化していました。毎度の事ながらロシア恐るべしw ただ日本に入荷しているのかは不明です。LPはebayやGEMMといった海外通販で、今でも格安で購入できます。アルバムは英盤と欧州盤など様々、シングルも各国で出てたようですね。このバンドがどの程度まで活動したのか?その後の様子はわかっておりませんが、リーダーのジョン・ディッケンソンはその後自身のスタジオで80年代以降も多くのバンドをプロデュースしていたようです。 フィールズでみせたアラン・バリーのプレイを期待すると歌モノ中心のポップスに期待を外された感じを受けるかもしれませんが、よーく聞き込むと彼ならではのギタープレイ、独特なメロディ感覚が感じ取れるでしょう。パンクが芽吹いてベテランが冷遇された時代、ギリギリのタイミングでよくもアルバムを残せたと思います。 You Stand Accused (Dickenson) おまけ動画: ディッケンソンがグレッグ・レイクやアラン・バリー、アンディ・マカロックらとシングルを出したShy Limbsは、二枚のシングル盤を残してます。シングルA面の曲はどちらもプログレ臭がかなり濃い作品で海外でのプレミア価格も相当高いようです。 Shy Limbs - Reputation Shy Limbs - Lady in Black (1969) 2014年8月24日追記: 1969年2月にアラン・バリーとティノ・リチニオ、そして元リーグ・オブ・ジェントルメンのドラムス、スタン・レヴィが組んていたジ・アクトレスで発表したシングル曲です。 THE ACTRESS - IT'S WHAT YOU GIVE (14 Feb 1969) Shy limbsとLeague of gentlemen人脈がKing Harryへと至るキーパーソンがアラン・バリーだったのでしょうね。 THE ACTRESS 関連記事 http://plaza.rakuten.co.jp/chop100/diary/201408230000/ ※2015年10月追記 紙ジャケットCDとしてめでたくリイシューされました。 ※2017年5月追記 当時の映像が見つかりました♪ King Harry - Dear Matthew こちらも同じ内容の動画ですが予備でw 追加情報は以下にて https://plaza.rakuten.co.jp/chop100/diary/201705210000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 8, 2022 10:45:59 PM
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