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昭和47年(1972年)6月、佐藤内閣 退陣の直前、 “日本列島改造論” という本が全国書店の店頭に積み上げられました。著者は、当時の 通商産業大臣・田中角栄。
田中角栄
そして、その翌月の7月5日の 自民党臨時党大会 で、この 田中角栄 が総裁に選出され、国会での選挙で 総理大臣 に指名されて、田中角栄内閣 が成立しました。
私は、次の首相は 福田赳夫 になると思っていました。佐藤栄作 も 福田赳夫 を支持していると聞いていました。ところが予想に反して、自民党の票は 田中角栄 に集まりました。
福田赳夫
“日本列島改造論” は、日刊工業新聞社刊行 の 新書版219ページ、定価500円の本 で、著者は 田中角栄。私も早速買って読みました。
田中角栄著・日本列島改造論
日本列島改造論の目次抜粋
(田中角栄著・日本列島改造論より引用)
この本では、日本列島 を 新幹線・高速道路 などの 高速交通網 で結び、四国 には3箇所に本州とつなぐ橋を架け、九州・北海道はトンネルでつなぐ、そして地方に工業を分散して過密と過疎を解消すると、図入りで説明してあります。
全国新幹線鉄道網理想図
(田中角栄著・日本列島改造論より引用)
国土開発幹線自動車道網図
(田中角栄著・日本列島改造論より引用)
そして、日本の北部(北陸・東北)を工業地帯 とし、南部を農業地帯 とする、などなど・・・と書いてありました。これは、田中角栄 自身が新潟県出身で、豪雪寒冷地帯の貧困を身をもって知っていて、この解消を願って打ち出したものといわれます。
まことに結構尽くめの 改造論 ですが、これを読んで、こんな全国的大工事を実施するには莫大な建設費がかかるし、できたとしても 維持管理修繕費 にまた巨額の費用がかかる、この資金をどうしてまかなうのか、と思いました。
こんな持論を持つ人が、本の出版後1ヶ月もたたないうちに 総理大臣 になったので、“日本列島改造論” はたちまち現実味を帯びました。もっとも喜んだのは、全国の土木建築業者だったでしょう。そして、土地や建設関連資材がいっせいに値上がりし始めました。
田中・日本列島改造内閣 の発足を見て、ある評論家は、
「 この内閣は インフレ内閣、そして 短命内閣 」
と論評しました。私もインフレは進行すると思いましたが、なぜ短命なのかは、分かりませんでした。