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ときどき思いつき日記

ときどき思いつき日記

 『スルメ三兄弟は見た』

どーなつさんのページで
*美日々を語る・あんこーる* 第9回 
『スルメ三兄弟』は室長の頭上でいったい何を思ったか?

っていうのをやっています。

すぐには思いつかなかったので 自分のページに持ち帰ってアップしました。

例によって私の作るストーリーはマイナーチェンジしつづけます~


それでは本編、どうぞ~

美しき日々 第9話より 『スルメ三兄弟は見た』
ざざ~っ。ざざ~っ。
寄せては返す波の音が聞こえる。
ざざ~っ。ざざ~っ。
その音は決して近づくこともなく 遠ざかることもなく 一定のリズムを繰り返し続けている。

ヨンスは そっと(派手な)掛け布団から出た。
傍らではミンチョルが(派手な)掛け布団を被って寝ている。

夕べ 二人がこの宿に入ると、ミンチョルはヨンスと
”一つになりたい”というような仕草を見せた。
ヨンスが緊張して拒むと
ミンチョルはヨンスの肩を抱き
壁にもたれかかって しばしの時間を過ごした。
「寒くない?布団に入ろう」
ミンチョルにそう言われて 二人は布団に入った。

隣にミンチョルがいる。
自分の鼓動と息の音だけが部屋に響いているような気がして寝付けなかったが、明け方になってようやく浅い眠りについたようだった。
多分それはミンチョルも同じだろう。

ヨンスはミンチョルを起こさないようにそっと戸をあけ、靴に足を滑り込ませた。
潮の香りがした。

軒下にはイカが干してある。
イカの下をくぐり、砂浜に足を踏み入れた。
ヨンスのローファーに容赦なく砂が入り込んでくる。
砂に足をとられて歩きにくさを感じたヨンスは
思い切って靴を脱ぎ 素足で波打ち際に歩み寄った。

朝日が海面を照らしている。

海に来たのは何年ぶりだろう。
子どもの頃、天使の家の旅行で来て以来だった。

一度はソウルに戻ろうとバスに乗ったものの
ミンチョルの姿を見たらいてもたってもいられずにバスを降りた。
そして、ここまできた。

全身が海の水で濡れるのも厭わずに海に入って抱き合ったこと、
車の中でのキス。
思い出すだけで頬が かあっと熱くなるのがわかった。

あんなに自分の気持ちに正直になれたのに、
どうして 夕べはミンチョルを拒むようなしぐさをしてしまったんだろう。
そんなヨンスの様子を見てもミンチョルはがっかりしたような素振りも見せずに優しく抱きしめてくれた。


後ろにだれかがいる気配を感じて振り向こうとするとミンチョルがヨンスを背中から抱きしめた。
「おはよう よく眠れた?」
「ええ」
本当は二人ともあまり眠れなかったのだった。



ミンチョルは気がつくと隣に眠っていたはずのヨンスがいなかったのであわてて宿の戸をあけた。
軒下のイカ越しに海岸にたたずむヨンスが見えて なぜかほっとした。

上りかけた朝日が低く差し込み 海面に反射してまぶしかった。
「私、この景色を忘れません」
ヨンスの言葉に
ヨンスと一緒にここに来て、気持ちを確かめあったことを確信したミンチョルだった。

「朝食は何にしようか。近くに市場があるから買い物に行こう」
「食事、私が作ります。これでも料理にはちょっと自信があるのよ」
家への土産にイカを買おうか と考え、秘密の旅行だから土産は買えない・・・と考え直すミンチョルだった。


【スルメ3兄弟のキモチ】
秘密の旅行や失恋傷心旅行、恋に終わりを告げる旅行・・・
こういう民泊に来るカップルはワケアリが多いんだよな。
おれたち いろんなケースを見ているけど口は堅いつもり。
大体、ここに入ってくるカップルを見ると事情がわかる。
だが この二人はよくわからん。
昨日 突然海に入った様子をみると盛り上がっているカップルのようだが、
夕べは何もなかった。
女が「イカくさいからいや」って言ったのか?
そういうカップル おおいからな。
俺たちって意外に嫌われ者。

今朝の様子じゃあ、ラブラブ。
よくわからん。

土産は無理だけど、
スルメでも焼いて食べたら?
もっともお泊りのあとスルメっていうのも変か。
おれたちゃ、酒の肴だから。


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