佐原健二刑事また失敗か?「加山版高校教師」映画本「終わりなき航路」
加山雄三版「高校教師」の「さらば、番長」巻。 例によって、このころレギュラーメインの話(通常の展開)と、ゲストメイン(レギュラー生徒ほとんど活躍せず・・・つまり、他の回を撮影しているわけです)が交互です。 今回は、ゲストの梅田智子さん(「金メダルへのターン」はじめこのかたも70年代ドラマの女優さんとして欠かせません)と、 中村俊男さん(のちに「中村ブン」に改名、刑事ドラマなどで余り強くないチンピラ役、特撮の世界では「ジャンボーグA」の立花ナオキさんのライバルなど)の話です。 荒谷さん、村松さんという先生のレギュラーは欠席。 中村は、白雪学園のライバル高校を中退してヤクザの道に進もうとしています。最初、梅田にからむのですが、例によって、尋問能力に疑問がある佐原健二刑事が処遇に困っているところを、加山の説得(まただ!)に負けて、加山のもとへ身柄預かりとなります。 まじめに、とはいえないものの、加山下宿先のスナック(ママは日活出身の藤江リカさん)で働いていますが、ヤクザの兄貴が「ピストル」を預けにきて快く受け取ります。チャカとかハジキとか呼称しないところが東宝ドラマです。 加山は、中村が隠してあった「ピストル」を発見、自分のポケットに入れて、ヤクザの兄貴分のところへ、中村から手をひくようにでかけます。 案の定、けんか騒ぎになりますが、剛達人(本番組では、結構おいしい役が多いですね)が警察に知らせたおかげで加山の命は助かります。 さすがに今回は少年係でなく、暴力団担当の刑事さんに取り調べを受ける加山。すさまじい迫力で追求を受けますが・・・加山は中村をかばい「ピストルは道でひろった」で通します。 取調べ室をたずねてきてくれた佐原刑事。久々にカッコイイ場面が見られるのか・・・「私は管轄外なんですが、悪いようにはしません。先生(加山のこと)本当のことを言ってくれませんか」とソフトに迫ります。が、ここで場面はすぐ釈放された加山に移ってしまいます。 またしても、佐原刑事いいところなし。 ところが、番組も終盤、ヤクザの兄貴一派が、加山と中村を殺そうと広場で格闘、そこへマル暴刑事たちとかけつける佐原刑事。(ちなみに、その他大勢の警官の一人は「古川登志夫」とクレジットされています。のちの「ラム~」のかたですか?) 佐原刑事は戦闘では活躍しませんが、加山に一言。「防犯協会で事務員の採用があるのですが・・・いい人、いませんか」?。 実は、家庭環境が複雑という露骨な理由で就職がなかった梅田智子のために、勤め先を紹介してくれたのでした。 いいですよ、佐原刑事 やっぱり、あんたは肉体勝負より、星川航空のパイロットとか、西部警察の裕次郎の情報係とか、知的な仕事向きです。 佐原さまもいいところをみせたし、これから本シリーズは怒涛の最終回に向って進みます。 eigabon「終わりなき航路」加山雄三著 世界文化社と、いう加山さんの半自伝は、倒産・自殺未遂から始まるこの本をご覧になればわかるのですが、この「高校教師」の頃の加山さんは、何十億という負債をかかえています。 福田純監督のeigabonでも触れましたが、短期間で収入を増やすため、また映画の斜陽もあり、加山さんは仕事を映画から割のいいテレビに仕事を移します。 ちなみに「終わりなき航路」では、この倒産まで、「女とお金には不自由したことがなかった」と堂々と(能天気に)書いているところが、「映画界の長島茂雄」たるゆえんでしょう。晩年のお父上(上原謙さん)のスキャンダルについても赤裸々に語られています。おついでの時にご近所の図書館でご覧下さい。 ですから、「加山版高校教師」のサラリーマンを辞めて「教師」に転職する主人公というのは、裏テーマとして加山さんを象徴しているのです。明るい表情を作っても、どこか影があるのは加山さんが「死」を考えていたからでしょう。 ちなみに負債はありませんが、スタジオシステム崩壊により、佐原さまも早々に銀幕から撤退、この頃からテレビ時代劇の悪代官とかに多数出演されています。こちらも、どちらかというと司令塔。実行犯など悪い事はすべて、今井健二さんあたりにさせる役多し、です。 まさか、「ゴジラ」や「ウルトラ」シリーズが復活して、熱烈ファンから復活熱望されるとは思われなかったでしょう。 禍福はあざなえる縄の如し、塞翁が馬。人生希望を捨てずにいたいものです。