テーマ:猫倶楽部(934)
カテゴリ:★ちょっとした読み物
# 070
その日は いつもより早くに仕事を片付け、 やや急いで家に帰りました。 まるはまだ帰っていなかったので、先に子猫たちを見に行きたい気持ちもありましたが、やはりまるを待つことにしました。 しばらくするとまるも帰ってきました。 「 もう見た? 駐車場の車の下にいたよ。」 とまるが言うので、 「 まだ。 まると行こうと思って。」 と言いながらキャットフードを用意して、まるがカバンを置くや否や子猫たちに会いに行きました。 「 いつもね、この辺で呼ぶと来るんだよ。」 公園の入り口に立って、チッチッチッチッ…とまるが舌を鳴らしました。 私もそれを真似て、チッチッチッチッ…とやりながら どこから出て来るのか辺りを見回しました。 すると、道を挟んだアパートの駐車場の方から タッタッタッタッ、と1匹の小さな影が現れました。 「 あっ、来た・・・。」 姿勢を低くして 小走りで近寄ってくる子猫は、暗がりの中シルエットだけでしたが その足先だけは白く、はっきりと浮かび上がって見えました。 「 ほんとだ、くつした履いてる。」 足もとまで走り寄ってくる子猫と目が合いました。 これが、私とくつしたとの初めての出会いでした。 続いて、手前の方にある車の下から ピョンピョンと走ってきた小さな影、クロちゃんでした。 「にゃ~んにゃ~ん」と甘えた声で足もとをぐるぐる回るクロちゃんは、本当に人懐っこい子でした。 しっぽ 来ないね・・・、と待っていましたが 「 そのうち出て来るよ。」 とまるが言うので、植え込みのブロックの上にキャットフードを出し始めました。 待ってました、とばかりにクロちゃんはポリポリとキャットフードをかじります。その体はほんとに小さくて、キャットフードの一粒が大きすぎるように感じるほどでした。 私たちの声と音を聞きつけたのか ようやくしっぽが現れ、いつもは見ない私の姿に戸惑っているように木の陰からこちらを見ていました。 「 大丈夫だよ。」 やさしく声をかけ しゃがんだままじっとしていると、ゆっくりこちらに歩み寄り 耳をピンと立てながらクロちゃんの隣で食べ始めました。並んでいるとしっぽの体はクロちゃんよりやや大きいようです。 そしてその2匹よりさらに少し大きいのがくつしたでしたが、一番はじめに走り出てきた割には、くつしたは木の根っこの上をぴょんぴょんと走り回り、キャットフードを食べる様子がありません。 「 くつした。」 「 こっちおいで。」 何度も声をかけますが、黙々と食べ続けるクロちゃんとしっぽを見るだけで 自分は寄って来る素振りを見せません。他の2匹より少しだけよく育っているくつしたは、知能や警戒心も他の2匹より発達しているのかも知れません。それから比べると、クロちゃんはほんとに無邪気で、まるで赤ちゃんのようでした。 ゆっくり落ち着いて食べさせてあげよう、ということで私たちはそっと帰りました。 私たちの住む部屋は、アパートの2階の角。 窓からは公園が目の前に見えます。子猫たちのエサ場にしている植え込みのブロックも見えます。帰ってすぐ、窓から子猫たちの様子を見ましたが、すでに3匹の姿はなく キャットフードだけ残っていました。 次の日の朝、また公園へ行って確認しましたが、まだ半分くらいキャットフードは残ったままでした。 まるの手でひと握りぐらいのキャットフードでしたが、子猫たちの小さな胃袋からすると多すぎるのか、それとも次の日まで食いつなぐために取ってあるのか、しかしその日の夜になるときれいになくなっていました。 そうやって、私たちと子猫たちとの交流は始まっていきました。 この先どうなるのか、どうするのか、まだ何の見当もつかない状況でしたが、子猫たちに母親がいないことは もはや明らかでした。昼間どうやって過ごしているのかは分かりませんでしたが、夜になると公園の入り口近く、もしくはアパートの駐車場に潜んで私たちが現れるのを待っていました。その姿を見ると可愛くて仕方ありませんでしたが、 どれほど苦労をして大きくなったのだろうな と、思ったりするのでした。 はじめましての方 * この話の登場人物 * ネコチビーズ 子猫たち グレーの尾長「しっぽ」 真っ黒「クロちゃん」 足先だけ白「くつした」 大人その1 人間のオス ○○さん 仮に「まる」とする 大人その2 人間のメス 私(me) 仮に「みー」とする 子猫たちの親らしき かつての迷い猫 仮に「黒チビ」とする 野良猫・捨て猫の今 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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