テーマ:猫のいる生活(135585)
カテゴリ:★ちょっとした読み物
# 072
毎晩、子猫たちにキャットフードを持って行くのが日課となり、それが毎日の楽しみになりました。 朝はどこにも姿の見えない子猫たちが、夜になるとずっと待っているのか何時に帰っても 呼べばすぐに現れ、うれしそうに足元へ寄って来ました。 また、私たち以外の人間になついている様子もなく、それが一層 可愛らしく思え、さらには私たちの中に独占欲とも言える感情が生まれていました。 ほかの誰にも触らせたくない・・・ 黒チビちゃんから託された 私とまるだけの子猫たち。 私たちだけがその存在を知り、私たちが子猫を守っている。 そんな風に思っていました。 しかし、いくら私たちが運命を感じ 愛情を持ったところで、それは第三者から見れば 気まぐれに猫にエサをやる無責任な人間と何ら変わりなく、 実際 ペット禁止のアパートへ連れて帰ることも出来ず、 また一度に3匹とも手元に置いて育てて行けるような自信もありませんでしたので、私たちはただ夜の闇に紛れて こっそりと子猫たちに会っていました。 3匹の様子は相変わらず、 クロちゃんは甘えん坊で鳴いたりすり寄ったり、 しっぽはおっかなびっくり 食べたり見上げたり、 そしてくつしたは食べずに動き回ってばかり。 そう、くつしたは遠くから回り込んでのぞきには来るのですが、近くまで寄ってキャットフードを確認すると クルッと向きを変えて走り出し、近くの木に登ってみたり、落ち葉と追いかけっこしたり、まるで落ち着きがありません。 しまいにはクロちゃんやしっぽも それに触発されて、みんなでその辺を走り回る。 なんだかもう3人で楽しそうだから・・・、 「 じゃあね。 また明日ね。」 と、帰りかけると いち早くクロちゃんがそれを見つけ、スタタタッ…と追いかけて来るのです。 「 ついて来ちゃだめだよ。 追いかけっこの相手はあっちでしょ。」 言い聞かせても、無邪気で楽しそうな目は 私たちを見上げるばかりです。 仕方なく また公園の中へ引き返し、しばらく3匹が遊ぶ様子を眺めてから 「今だ!」と隙を突いて走って帰らなくてはなりませんでした。 次の日、同じようにくつしたをはじめ3匹が、食事もそこそこに遊び始める様子を見て あることに気付きました。 これって、母猫のそばで遊ぶ子猫の様子に似てるよね・・・。 私の頭の中には、かつて私が幼い頃 家の庭に来ていた野良猫タマとその子供たちの光景が思い浮かんでいました。 タマが留守の間、草むらに隠れて姿を現さない子猫たち。 タマが戻りテラスの端に寝転ぶと 7匹の子猫たちはプロレスを始めたり、追いかけっこしたり・・・。 きっとそれは、タマがそばにいて安心できるからなのでしょう。 そして今、私の目の前にいるこの子猫たちは、どうやらまると私がいることに安心して、まるで母猫が帰ってきたかのような感覚でいるらしいのです。 急に母を失い、寂しさと怖さでいっぱいだった数日間。 食べ物を持って現れる私たちに「母」を重ね合わせているのかもしれません。 そうか・・・、と思い知りました。警戒してばかりだと思っていたくつしたが、実は一番うれしさを 体いっぱいで表現していたのです。 他の2匹より少しだけ発育が進んでいるくつしたは、 きっと その心理も少しだけ複雑なのかも知れません。もちろん警戒心もありますから 素直にすり寄って来ることは出来ませんが、それでもうれしさは抑えられず、食べることよりも 遊ぶという行動が優先されるみたいなのです。 風に揺れるだけの草を相手にくつしたは全速力で駆け寄り、そして全速力で逃げるという遊びを繰り返しています。目はきらきらと輝き、足は力強く地面を蹴ります。その姿に「怯え」は見えません。 私たちは ただエサを運んでいるだけじゃないんだ・・・ 食べ物以外にも与えているものがある。私たちの存在意義を見出したようで、「気まぐれで無責任な人間」 は 少しだけ黒チビちゃんに応えられたような気がしました。 はじめましての方 * この話の登場人物 * ネコチビーズ 子猫たち グレーの尾長「しっぽ」 真っ黒「クロちゃん」 足先だけ白「くつした」 大人その1 人間のオス ○○さん 仮に「まる」とする 大人その2 人間のメス 私(me) 仮に「みー」とする 子猫たちの親らしき かつての迷い猫 仮に「黒チビ」とする 野良猫・捨て猫の今 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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