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2008年09月09日
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# 517

【 前回のおはなし 】

公園で生まれ、母を失った3匹の子猫たち。 私たちと出会い、このままの毎日が続くと思っていた

呑気な私の知らぬところで、 くつしたはひとりぼっちになっていました。



  
 2004年9月11日、土曜日。

本来 その日は休みでしたが、仕事のスケジュールが立て込んでいた私は午後から出勤すべく、近くのコンビニでミネラルウォーターとチョコレート それに栄養ドリンクを買って、
昼前に出かけました。


まるは私を見送ったあと、しばらく部屋でのんびりしていましたが、窓の外のいい天気を見て
せっかくの休みに部屋で閉じこもっているのはもったいないと思い、車で出かけることにしました。
近場の店でちょっと遅めの昼食をとり、どこへ行くともなしに日が傾くまでドライブを楽しみ、その後 本屋へ寄って少し立ち読みをしたあと、出たばかりの釣りの雑誌を買って帰りました。



アパートに着いたまるは、駐車場で車から降りました。

すると待ち構えていたように くつしたが現れ、
しっぽを立てて小走りで近寄ってきました。

くつしたは近くまで来ると、その人間がまるかどうか確認するように小さく一言
「にゃ・・・」 と声を出しました。


   「おう、くつした。 どうした?」

まるが声をかけると、
くつしたは確信したように

   「 にゃーー 」

と力強く大きな声で鳴きました。

くつしたの鳴き声を聞いたのは、これが初めてでした。


何となくいつもと違うくつしたの様子を不思議に思い、まるは辺りを見回してみましたが、
他の2匹の姿は見えません。

   「どうした? ひとりか」

と聞いてみると、くつした『ぐるぐる…』 と喉を鳴らす音を発しながら
まるの足元をグルグル回りました。


今まではキャットフードを食べているときぐらいしか体を触らせることはなかったのに
このときのくつしたは、自分から まるの足に体をすり寄せてきました。


   もしかして、2匹はいなくなってしまったのではないか・・・。

くつしたの落ち着かない様子を見ながら まるは何となくそんな気がしました。


   


   「すぐごはんを持ってきてやるからな。」

そう言って、甘えるくつしたをどうにか落ち着かせながら まるはさっとアパートへ走り、急いで
台所のキャットフードを持って部屋を出ました。

くつしたは階段の下で待っていました。


怖がらせないよう 静かに階段を下り、公園まで一緒に歩きました。
そして いつもの植え込みのブロックの上にキャットフードを盛りました。

くつしたは、ごはんを食べるのも忙しい、でも甘えるのも忙しい、
そんな風にまるにすり寄ったり まるがどこへも行かないか確認するように顔を上げたりしながら 少しせわしなくキャットフードを食べました。


やはり クロちゃんしっぽの姿はありません。
夜遅いわけではなく、他の住人からもまだエサをもらっていないであろう夕方のこの時間帯、
いつもなら少し遅れてでも みんな集まってきていました。

くつしたの今までにない甘え方や寂しがる様子を目の当たりにして
そのときまるは、くつしたが一人ぼっちになったのだと分かりました。


くつしたの背中を撫でながら、
まるは無性に くつしたを連れて帰りたくなりました。

でも勢いだけで連れて帰ることは出来ません。

   「どうしようねぇ・・・」

まるくつしたの見上げる目を見つめながら呟きました。




しばらく公園で一緒に過ごしました。

空腹が満たされたくつしたはちょっと安心した様子で、いつものように葉っぱを追いかけたり
木の根っこの周りを走ったりしながら一人で遊び始めました。

ずっとくつしたのそばに付いていたい気持ちはありましたが、このまま一緒にいると帰るタイミングを無くしそうな気がしたので
まるはそっと部屋に戻りました。



夜になって私が帰ると、

   くつした、ひとりぼっちになっちゃったみたい。」

まるは まずこう切り出しました。
そして夕方の様子を細かく教えてくれました。

くつしたがひとりぼっちになってしまった、
その言葉を聞いた瞬間から 私にはピンとくるものがありました。

その頃はもう、夜の公園に現れるときも3匹そろっていないこともあったので、
もしかするとこの一日二日の間に1匹ずつ どこかへもらわれて行っていたのかも知れない。

そういえば、階段の下に置かれていた小さなお皿もなくなっていた。

きっとアパートの住人の誰かが、それぞれのお気に入りを部屋で飼うことにしたのだろうと想像しました。


あぁそうか。
そう思うと同時に、私は瞬間的に小さな怒りを覚えました。

あの台風の日 、私たちは私たちなりに考え、議論して、
誰かを選べば 残った誰かが今以上に辛くなるからと連れ帰ることに慎重になったのです。
それをいとも簡単に、自分によくなつく可愛い子だけを手元に置くなんて・・・。


でもその勝手な怒りを堂々と口に出来るほど、私は
子猫たちに何かをしてやっていた訳ではありませんでした。
そして子猫たちの将来についても、何を考えていた訳でもないのです。

いつか3匹とも共倒れになってしまうよりは、1匹ずつでも面倒を見てもらえる場所があるのなら、その方がいいのかも知れません。
否、いいに決まっている。


それでも、

寂しさのあまり まるに鳴き寄ってきたくつしたの姿を想像して、
私は胸が苦しくなりました。


きっと頼るものは 私たち以外にないのです。


   「 どうしようか・・・。」

私たち二人は それぞれに呟きました。
私もまるも、ある一つの結論を頭に浮かべていました。


   まるは・・・、もう連れて来たいんでしょ?」

私は聞きました。

   「そりゃあね・・・」

まるは答えました。


もうその選択しかないのかも知れない。
私もくつしたのことを考えると、やはりうちに連れて来たい気持ちは まると同じでした。

ただその選択は、私には非常に大きな決断を必要とするものでした。


まるは私の判断に任せているようでした。

食事の用意、お金の管理、部屋の掃除など、暮らしの主導権を握る私が
「よし」と決断できない限りは、きっとうまく行かないと思ったのです。

私も そう自分で思っていました。


まるは、かつて動物に携わる仕事をしていたことがあり、動物の扱いや飼育については豊富な経験や知識を持っていたので、そういう面では 何ら心配することはありませんでした。

しかし今の日常生活において、いつも先に出かけるまるよりは、私の方がくつしたの世話をする時間が長くなるはずで、
毎朝出かける前にエサの用意をしたり、トイレ用の砂を換えたり 部屋の中を片付けたり、

帰ってからも 散らかされているかもしれない部屋の掃除や
わずかではあっても洗う食器の量が増えたり・・・。

食事をする時間も 眠る時間もギリギリのこの日常で
そんな細々としたことが きっと負担に感じることもあるでしょう。

私に出来るだろうか。

今よりさらに自分の時間を削られ、それがこの先何年もずっと続く。
それに耐えられるのだろうか。


しばらく私は沈黙して考えました。


色んな場面を思い浮かべてシミュレーションしてみましたが、
実際に家の中で動物を飼ったことのない私には、現実味を伴って想像することは難しく
すぐに結論など出せるものではありませんでした。


   とにかく、少し時間をとって考えることにしました。














* この話の登場人物 *


ネコチビーズ
子猫たち

グレーの尾長「しっぽ」
真っ黒「クロちゃん」
足先だけ白「くつした」




○○さん
仮に「まる」とする

人間のオス











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Last updated  2011年09月02日 16時56分22秒
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さくらもち市長

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くーちゃんが生まれ変わって帰ってきたときのこと



「3ヶ月すっとばして、ご報告。」


 


「会ってからと、初日」






生まれ変わりを待つ日々


 
「二日で終わったペットロス」





くつしたの体の寿命が突然きた


「夏のこと(ご報告)」

 
 
 
  
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