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未熟な作家の気まぐれファンタジー小説blog

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2007.03.23
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カテゴリ:落雷疾風記
「・・・・・・ヴァンス殿。少し御用件がありまして・・・・・・。」
ヴァンスがドアを開けると、磁神ガウセルが片足を立てて跪いていた。
「おや。どうしました、ガウセル。・・・・・・とりあえず中へどうぞ。」
と、ヴァンスが部屋の奥へ手を差し伸べると、ガウセルは遠慮無く、という一言を加えて中に入った。
「話は過去に戻ります。先程、ローレライのカルディスに遭遇されたと思われますが、相手が去った時に相手がこういう物を落としまして・・・・・」
ガウセルは手を出すと、掌(てのひら)に羽がレリーフの小さな指輪が。そして、その指輪をテーブルの上に置いた。
「この指輪です。一見鉄の様に見えますが、よく見ていてください。・・・・・・『ロンガスト』!」
ロンガストは、磁霊の金属反応魔法で、もしも唱えた者に物が引き寄せられれば、それは磁力に反応するかしないかを判別する事ができる。
しかし、その指輪は動かない。逆に、その部屋の小さい鉄物を引き寄せた。
「このように、この指輪は磁力に反応しないことが分かります。」
「うむ。どうやらそのようですな。しかし、それがどうかしたのですか?」
ガウセルはその指輪をまた手に取り、ヴァンスに手渡した。
「・・・・・・それを指に着けてください。」
ヴァンスはその指輪を右手の薬指にはめると、ガウセルが頷いた。そしてまたロンガストを唱えると、ヴァンスが引き寄せられた。
「しかしながら、この指輪を着けると、磁力を発するのです。この指輪は普段は磁界を張ってないものと思われますが、中に物、つまり、先程のように指を入れますと、磁力を発するという特殊金属です。」
「ほぅ。しかしその指輪と、我々とは何の関係があるのですか?」
ガウセルは指輪を受け取ると、その裏を見せた。
「ん?『カイラマ&セライ』と記してあるな・・・・・・つまり、『カイラマ島とセライ島』と言うことですか。」
このラグナロク諸島には、7つの島々があり、その1つはヴィルム島。その他の6つの島々の名前を、ヴァンスは知っていた。
「ヴィルム、カイラマ、セライ、ディヴァル、メイリル、ウォンバー、フェイギルの内の2つですね。」
ガウセルは頷き、続けた。
「つまり、これらの2つの島々はローレライか、カルディスになんらかの関係があると思われます。しかも・・・・・・」
そういうと、ガウセルはその指輪を粉々に砕いてしまった。
「なっ・・・・・・ガウセル。これは一体・・・・・・」
床に落ちた粉々になった指輪を見ると、どんどん元の形へと戻ってゆく。ヴァンスはしばらく動揺していたが、ハッと見ると、もう指輪は亀裂(きれつ)すら残ってはいなかった。
「これらは装着し、外してから4時間磁力を発します。なので、すぐ外れた場合ならしばらくの間は砕いても、磁力の力で元に戻ります。つまり、一時の『不砕(ふさい)の指輪』ということが発覚しました。」
ヴァンスはしばらく悩み、口を開いた。
「つまりその情報は、例え身元を離れても、少しの間なら存続しているが、相手が指輪に対して諦めを抱いた時に、効力を失う。ということはなにかメッセージを残した可能性があるな。」
ガウセルが頷くと、指輪を拾い上げ、もう一度テーブルの上に置いた。
「しかもこれは、隙間に精霊石を仕込んであったのですが、その精霊石は蒼かった為、水霊石と見なしました。しかし、相手が水霊石を持っている事はおかしいのです。多分、その2つの島々で採れた物か、ロリヤックかライトエルフ、ラレスの誰かから盗んだ可能性があります。が、中には何も入っていなかった為、どこかで採ったものと思われます。」
ヴァンスは椅子に深く腰を掛け、ガウセルが来る前の飲みかけだった氷水を一気飲みし、顔を横に振ると、深く深呼吸し、テーブルの上に置いてある指輪を手に取り、眺めた。
「そうか。では今度攻めて来るローレライを払ったら、その島々へと行ってみる事にしましょう。」
ガウセルは顔を縦に振ると、ヴァンスの部屋から出て行き、アルメ達の部屋に置いてある鋼色の精霊石へ戻った。ヴァンスは軽く笑い、部屋の時計を見た。
「・・・・・・10時48分か。まだ少し早いが、寝るとしよう。」
そしてヴァンスは床に就いた。





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Last updated  2007.05.23 21:29:53
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