041905 ランダム
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クライムアンドペナルティ

クライムアンドペナルティ

COOK!4-ROUND

1人の青年は今、絶望の淵に立たされている。


宇宙暦772年―・・・邪悪な十賢者の野望を12人の英雄が阻止してから400年余り―・・・
無限に広がる星の海原。人間は宇宙船に乗り、その未知なる宇宙を隅々まで探索している、そんな時代。
その宇宙という名の海原に、ポツン、と小さな宇宙船があった。
その船の名は『ディプロ』反銀河連邦組織、『クォーク』が所有する航宙艦である。


その船員である、1人の青年は目の前に広がる異世界に我が目を疑う程である。
一見、おかしくもなんともない光景なのだが、その光景を意味するもの、そして自分が今、どういう状況に立たされていること、そしてそれがもたらす『死』という名の終曲。
彼の額から汗がタラリとつたり落ちる。無論、暑くてかいてる汗ではないが・・・

「・・・リーベ・・・リーベル!どうしたの!ボーっとしてないで、手伝って!」
「・・・!え、あ、は、はい!」

目の前で青髪の少女が、包丁を片手に必死こいてあちこち動き回っている。
その光景は彼にとって外宇宙に等しい程の未知なる光景であった。

彼女に話を聞いたところ、味見役を探していたらしく、フェイト→クリフ→ソフィア→ミラージュ→ランカー→スティング→・・・とたらい回しされた挙句、彼のところへと来たらしい。
彼が彼女に好意を抱いている。そんな事は周りから見て周知の事実。そんな彼が彼女の頼みを断れるはずもなく・・・

こうして仲良く厨房でお料理・・・と、いう事になったのだが・・・
本来ならば絶好の機会なのだ。好きな女の子と料理なんて、そうそう滅多に出来るものじゃない。
ただ・・・それが『料理』という枠に収まるのやら・・・
リーベルはマリアに話をもちかけられた瞬間、









今度は死ぬかも!??!?!?!










と、計らずも思ってしまったという。
というのも以前、彼もやはりマリアの食べた料理で瀕死に陥っており(3-ROUND参照)幼い頃、死んだはずのおばあちゃんの面影が見えたとか見えなかったとか。
そんな思い出したくもない過去がある為、普通ならば断るべきだったのだが・・・


「ねぇ、リーベル?」
「はい?何ですか?」
「・・・えっとさ、私の料理の味見をして欲しいんだけど・・・?」
「(!?!今度は死ぬかも!?!??!)え、はい!勿論!喜んで!」



不意に出てしまった言葉・・・






そして今に至る・・・。
逃げ出したい。逃げれるもんならとっくに逃げている。
何故なら・・・マリアの楽しそうに料理を作ってる姿を見ると、どうしてもいじらしくて、逃げられないようである。
そして、


「出来たわっ!」
元気そうなマリア嬢の声に、リーベルはもうあきらめた表情でいた。
「あの・・・・これぇ・・・・?」

あの・・・スープの煮汁が目にも鮮やかな緑なんですけど・・・?
「これって・・・?この緑色は何をベースに・・・?」
リーベルの思った素朴な疑問。もっともな質問だ。
「あら、そんな細かいこと・・・。」


イヤ、細かくないし!!!!!!!!



「え、えっと・・・じゃあ、よくかき氷にある緑色のあのシロップですか?」
「ええ。そうね。そういう事にしておくわ。」


そういう事にしておくわってどういう意味だぁ~~~~~!!!!!!!!




「!リーダー!?ってことは違うんでしょ!?教えて下さいよ!」
「え、えっと・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・ベースというか、・・・ちょっと隠し味を加えたらこんな感じになっちゃたのよね。」
「隠し味!?!」
イヤ、全然隠れてないって、とは思いつつもさっきよりは的を射た答えに少し安心するリーベル。
「隠し味は隠し味なんだけど・・・言ったら真似されると・・・。」
「真似しませんから!!!リーダー!!!教えて下さい!」
「・・・・・・そうね・・・・。」
リーベルの真剣(必死)な眼差しにマリアも少し揺らいできたらしく。
「えっとね・・・ちょっと・・・アルティネイションをね・・・・。」








リーベルは頭の中が真っ白になった・・・・。








※アルティネイション※・・・マリアが宿している紋章遺伝子学の産物。物質を可変させる能力。







んなもん真似出来ないわ!ボケェ~~~~~~!!!!!!!







「じゃ、召し上がれ!」
「・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・?」
彼は彼の両手を見つめて途方に暮れた。
今度こそ・・・ダメだな・・・・と、








その日、彼はまたしても瀕死におちいり、2週間後、意識が戻った折、お花畑の向こうにおばあちゃんだけでなくおじいちゃんまでもが手を振っていたと話していたらしい。
これ以降、彼女に料理の話を持ちかけられるとわき目も振らず必死に逃走するようになったという。








                 






                 END


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