042037 ランダム
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クライムアンドペナルティ

クライムアンドペナルティ

花嫁修業

それはある日、とある街中での出来事。
「ラクスって料理上手だねぇ。」
「え?そうですか?」
「ええ。いいお嫁さんになれるわねぇ~♪」
「や、やだミリィさんってば!」
そんな女の子な会話を1人、すぐ向こうで耳をそばたてて聞く女性が1人。
「料理が上手なら、いいお嫁さんになれるのね。」
カガリは1人、ガッツポーズ。
それなら私は大丈夫だな。きっと、いいお嫁さんになれる。
しかし、それを他の者が聞いたら全力で否定されてしまうような腕前なのだが。
「でも・・・ミリィさん?料理だけじゃダメじゃないんですか?」
「そうねぇ・・・炊事、洗濯、掃除、育児に家計に・・・主婦は大変ね。」
さしものカガリも少し唸る。そうだな。料理だけじゃだめなんだな・・・。
将来の明るい未来のためにも、今から花嫁修業しておくに越したことはない。
カガリは何かを決意し、その場を後にした。







「キラ♪」
異常な猫なで声に、顔をしかめてそちらを向くキラ。
そこには、やはり異常ほど爽やかな笑顔でこちらを見ているカガリの姿。
キラは猛烈に嫌な予感を覚える。
「・・・・何?カガリ・・・・。」
カガリは何も言わず、ただじろじろと眺める。
「キラ・・・この服汚れてるわね。私が洗ってあげようか?」
キラはガカリの目を見た。何かを企んでいるかのような色を放っている。
猛烈に嫌な予感がした。ゆえに、
「・・・いいよ・・・別に・・・。」
「なんでよ。いいから~・・・。」無理矢理衣服を奪い取ろうとするカガリ。
「いいって言ってるだろう!!!」
つい、思いっきりまとわりつく腕を振りきるキラ。
ハッとして彼女を見ると・・・俯き気味になっていた。
「・・・あっ・・・ごめん・・・。」
「・・・キラ・・・そんなひどい人だったとは思わなかった・・・!」
顔に手を当てて、泣き崩れるカガリ。一方、あわてるキラ。
「わっ!わわっ!ご・・・ごめんって・・・。」
「なら」上目遣いでキラを見やるカガリ「洗わせてくれる?」
「う」嫌だ。しかしこのまま泣かれるのも・・・。
「分かったよ。今回だけだよ。」
「ありがとう、キラ!」






1時間後、何気に散歩していたサイは街の広場の片隅に半裸姿の男の姿を発見する。
「・・・何してんだ?キラ?」
キラは壁にもたれて、ため息をつく。
「・・・あれを見てよ。」
キラが指指した先には何故か公園の水道でジャブジャブと洗っているカガリの姿。
「・・・何してんだ?カガリさんは・・・?」
「さぁ・・・洗濯欲に目覚めたらしい・・・。」
「へぇ~・・・。」
そんな会話がなされてるとは露知らず、1人楽しく洗濯しているカガリ。
しかし、水洗いで簡単に落ちるような材質の服ではない。
キョロキョロと見渡したカガリ。キラは少し嫌な予感がした。
カガリは何かを思いつき、とある店に立ち寄った。
「あそこは・・・・!」
キラの嫌な予感は更に増す。
やがて妙に嬉しそうなカガリの手の内には、小さなビンが握られていた。
キラの嫌な予感は確信に変わった。
「ちょっと待てーー!カガリーーー!!!」
彼女の企みが実行される前に全速力でカガリに駆けよりビンを奪う。
そのビンのラベルには赤い種のようなものが描かれていた。
「カガリ!よりにもよって唐辛子ジャムかよ!」
「一番キレイになりそうかなぁ~って。」
「そもそもジャムを洗剤代わりに使おうとするなよ!」
これ以上は自分の服が危ないと悟ったキラは、自分の服をひったくった。
「カガリはもう何もしないでいいから・・・わかった?」
納得いかない表情で唸るカガリ。
だが、
この程度で諦める少女ではない。別に他の方法で頑張ればいいのだから。




カガリは今度は領主らしき屋敷に来る。次なるターゲットを発見し、ほくそ笑む。
廊下を歩いている、白髪の男。
「ねぇ、イザーク?」
面倒臭そうに振り向くイザーク。
カガリの企みの笑みに、眉をひそめる。
「ねぇ、ちょっと聞いてみていいかしら?」
「・・・・・・・・何だ?」
「キレイ好きな女の子は好き?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
かなり想像を絶する質問だ。
「キライ?」
「・・・・・・・何で俺がそんなこと答えなきゃいけないんだよ。」
   ジャキ    
下方で何かを構える金属音
「・・・どうなの?」
構えられる銃に目を向けつつ、カガリからは目をそらして言うイザーク。
「・・・汚ねぇよりはキレイ好きなほうがいいがな・・・。」
「そうか・・・そうよね。悪いわね。何だか当たり前な事聞いちゃって・・・。」
「(何を企んでやがる?)」
「・・・これなら、ワックス代わりになりそうね・・・。」
「?」
「ねぇ、これ借りていい?」
と、なんとカガリは整髪料に使うワックスを手にしていた。
「ま、待て!貴様、何する気だ!」
「お掃除w」
「笑って答えるんじゃねぇ!誰が貸すか!さっさと出ていけ!!」
ポイっと、屋敷の外に追い出されるカガリ。





「あのさぁ」
後ろから聞こえた声に見やると・・・キラとその他大勢の顔ぶれが。
「・・・さっき何で洗濯しようと思ったわけ?」
「え・・・そ、それは・・・・。」
すると、屋敷から出てきた一人の人物が。
「しかもこいつ・・・掃除しようとした。」
『!!!!!!!』
恐れおののく。キラも、ラクスも、アスランも。
「まさか・・・家事なんか一つもやりたくなかったあのカガリが!」と、アスラン。
「『掃除なんて手が汚れるから嫌だ』って常々言っていた、あのカガリさんが!」と、ラクス。
「(・・・カガリ、そんな理由で掃除したくなかったのか・・・。)でもなんで・・・?」
彼らの考えは見事に一致した。
「(変なものでも食ったか(のかしら)?)」
しかし、実際には違うのだが。







「花嫁修業!?」
キラの大声に一同はカガリに目をやった。
一方カガリは顔を真っ赤にしながらそっぽを向いていた。
「・・・へぇ~・・・そうか、カガリさんが・・・。」
「それでか・・・洗濯欲の理由は・・・。」頭を抱えるキラ。
「でも限度ってもんがあるだろうが!」と、イザーク。
「ねぇカガリ?」ミリィが歩み寄ってくる。「私でよかったら協力するよ?」
「あ・・・私も手伝います。」と、ラクス。
「・・・お願いできる?」今だに赤面状態のカガリ。
うつむきながらも少し照れて、彼女達はうなずき、笑い合う女性陣。
「・・・・花嫁修業・・・ねぇ・・・。」苦笑するアスラン。
「まぁ、やっとカガリにもそういう道に目覚めてくれて・・・兄としては嬉しいな・・・。」と、ちょっぴり嬉しそうなキラ。
ぽつり、とイザークが呟いた、果てし無く、余計な一言を・・・














「相手もイネェのに何が花嫁修業だ。」














戦慄が走った。




皆が思ってても口には出せなかった・・・いや、出さなかった一言を。
そしてその直後聞こえた金属音に皆一斉に逃げ出した。



結局、カガリの花嫁修業とやらは一向に進まなかった。
そこで、まずは相手探しとやたらと青髪の青年に構うようになり、ラクス嬢との折り合いが悪化の一途を辿ったのも、また仕方の無い話・・・。





                  END






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