042017 ランダム
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クライムアンドペナルティ

クライムアンドペナルティ

バレンタイン

――――ううぅ・・・こんなんじゃダメね・・・







バレンタイン








2月14日、男にとってある意味聖戦と言えるある種のイベントがある。
―――バレンタイン。女性が意中の男性へチョコを送る告白手段である。
男性にとっても一大事だが、女性もまた然り。彼女等もチョコ作りに必死なのだ。
―――そして、ここにもチョコ作りに悩める一人の女性がいた・・・。


「―――あー!もう駄目!難しすぎ!」

ミネルヴァの食堂の片隅で、ルナマリアは一人叫ぶ。

だいぶ前から作っていたのであろうか、そこら中にチョコの欠片やら失敗作やらが山のように積まれている。
味の方は・・・言うまでもないだろう。
ちなみに本の表紙には『初心者でもできるお菓子の作り方』である・・・。

「何が『初心者でもできる』よ!全然難しいじゃない。」

しかし本の内容を見ると、決してできないようなレシピの書き方ではない。チョコの練り方から熱し方、冷まし方まで丁寧に書いてある。
が、ルナマリアは生まれてこの方、お菓子はおろか料理すら実践で作った事がない。
その為、彼女は悪戦苦闘している。と、そこに・・・

「――――うわっ、何だこのチョコ臭は・・・誰か作ってるのか!?」

偶然食堂を通りかかったシンに直撃したものは、食堂からにじみ出るチョコの強烈なる臭いだった。

「(ゲッ、や、やば・・・;)シ・・・シン!?あ、え、えっと・・・;」

一番見られたくない人物に遭遇してしまったルナマリア。
そう。ルナマリアはシンにチョコを作っていたのだ。
「・・・・・・今日ってバレンタインだよな?」
少しニヤニヤしながら言い放つシン。と、同時にルナマリアがビクン、と体を震わせて反応する。
勘付いたシンは、
「もしかして、俺目当て?」
などとデリカシーの欠片も無い事を言う始末。最も本当の事ではあるが・・・。

「・・・う、五月蝿いわね!こ、ここは男子禁制よ!出てけーー!!」

と、顔を真っ赤にしながらシンを食堂からつまみ出すルナマリア。

「・・・こりゃ、脈ありか・・・。」

と、言い残してスタスタと立ち去るシン。








「・・・とは言ったものの・・・まだ出来ないで・・・これじゃ間に合わないよ・・・。」

シンとの痴話げんか(?)から3時間が経過・・・チョコは未だ満足になる出来に仕上がっていない。
それどころかチョコなのにすごく辛い味付けだったり、ビターチョコが甘く感じるほどの苦味を発する奇妙なチョコまで出来る始末。


「あれ?お姉ちゃんじゃない?」

と、そこへツインテールの赤毛の少女が食堂へとやって来た。

「メ、メイリン!?あ・・・お、お姉ちゃんはお菓子の勉強を・・・;」
額から冷や汗を垂らしつつ、嘘と言わんばかりの言い訳を漏らす。
「ふっふっふ・・・誤魔化したって無駄ですよお姉ちゃん。私がバレンタインを知らないとでも思ってるの~?」
「そ、それは・・・!」
「そしてそれは・・・えっと・・・シンにでも渡すつもりでしょ!」
「うぐ・・・!」
図星をつかれて本を落とすルナマリア。
「・・やっぱりねぇ・・・お姉ちゃんってお菓子作ったこと一度もないからね・・・私でよかったら手伝ってあげようか?」

助け舟を出すメイリン。ただルナマリアは顔をしかめ、

「結構。私はまだまだ・・・!」
「・・・このままじゃ出来ないよ~?」
「むっ・・・!」

本当の所ならメイリンの手助けを得たい、得たいのだが、彼女のプライドがそれを許さなかったのだ。だが背に腹は換えられなく・・・

「・・・お願いします。」
その場で土下座するルナマリア。
「よろしい。」

その瞬間、パパパっとチョコを作りこなすメイリン。神業である。
普通なら30分以上かかるチョコも、ものの20分で仕上げるスピード製法。味もバッチリだ。
「―――――う~ん・・・これならいいかな?」
「わぁー!ありがとう!流石私の妹だわ~w」
などと言ってメイリンに頬ずりするルナマリア。

「―――それじゃ、行ってらっしゃい。」
食堂からクスクスとメイリンの笑い声が聞こえたが意に介さないルナマリア。
時刻はとうに夜の11時を回っているからである。








「―――あ・・・あの・・・シン・・・。」
「・・・はいはい、なんでしょうか?麗しの戦乙女様?」
分かりきった口調のシンと、余りの恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら俯いて、手を腰に回してチョコを隠すルナマリア。
「あ、あああ、あ・・・こ、これっ!!!!!」
ドン、とシンの胸に突かれたチョコをシンは何とか受け取り、その瞬間ダッシュで個室に戻るルナマリア。

「(・・・ったく、すんげえ馬鹿力;)・・・うん、まぁ美味いな。」

チョコのラッピングを取り出しチョコを頬張るシン。





ホワイトデーに、お返しでもしてやるか・・・。




END・・・ですが、ここからはややギャグオチなので、『このままの終わり方がいい!』って言う方はもうブラウザで戻るを押して下さい。『いや、ギャグオチがいい!』という覚悟のある方はどうぞスクロールして下さい。

































































































「―――チョコか。」
横からの声に驚くシン。

「なんだ、レイか・・・はっは~ん・・・お前さてはチョコ貰えなかったから悔やんでるんだな~?」
頭の上に掲げチョコを誇示するシン。
「――――いや、それが・・・;」
レイは徐に立ち上がり、机の引き出しを開けると、そこには・・・

「ぶっ!」

目の前の光景に折角ルナマリアから貰った食べていたチョコを吹き出してしまった。いや、今の彼にはそんな事考える余裕などなかった・・・。

「これ・・・全部チョコ?」
「ああ・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・お前も食べるの手伝ってくれないか?」
「ブッ!」
更に吹き出すシン。まさか机の上から天井まで届きそうなチョコの山を食えなどとある意味自殺行為である。

「―――まぁ、食ったほうが・・・どうも捨ててしまうと・・・」
「・・・後味悪いからな・・・。」

そう言って二人は泣き泣き夜を徹してチョコを食す・・・





翌日・・・




チョコの食べ過ぎか、鼻血を噴き出して気絶している二人をヨウランが発見したとか、うわ言で『チョコはもういや』などと言っていたとか、生死の境を5日間彷徨ったとか、ミネルヴァ内で『怪奇!バレンタインチョコの悪夢!』などと噂が流れた。

なんにせよ、チョコの食べすぎには気をつけましょう。








    END


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