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カテゴリ:演劇、観劇
1935年11月14日、場所はアメリカのブロンクスのアパートの一室。
ここにユダヤ人の一家が住んでいます。正確には祖父ジェイコブ、父マイロン、母ベッシー、姉ヘニー、弟ラルフ、そして父の幼馴染のモーが居候してます。 この時代はアメリカの大恐慌の後。ユダヤ人の一家がこの地で生活することが困難である様子が、彼らの発する言葉に描かれています。 作・クリフォード・オデッツ。作品については「2006年トニー賞最優秀リバイバル作品賞受賞」(チラシより)。 時代というよりも、この作品の人物のあり方に、時代を超えたものがあると思いました。 働きづめの母ベッシーは、彼女の夫、そして自分の父親さえも差し置いて、この家の規律であるかのように自分の考えを家族に押し付け、家を仕切ってきました。 ここでの夫は、子供たちから見ても「大人になりきれていない存在」であり、ベッシーにとって自分の父親は「過去の人」という扱いです。 時を経て、娘のヘニーは気づくのです。自分が不幸に思うからって、相手まで不幸にする権利は自分には無いのだということを。 これは彼女が愛情と思いやりをかけてやれない夫への気持ちです。 この家族に残された希望は、自分の思うとおりの生き方をすること。 若い者は自分の足で人生を切り開く可能性があることを見せてくれました。 祖父の希望はどのようにして叶えられるのでしょう? 結果は、気持ちでしか描かれていませんが、冒頭からずっと、ヘニーとラルフが家族に問題が起こると向けていた視線の先に祖父がいたことを思い出しました。 できなくて発言を控えていたのではなく、祖父は家族の行方を見守っていたのだと子供たちは知っていたのかもしれません。 題名の『AWAKE AND SING!』は、「目覚めて歌え!」と訳すそうです。(文学座通信より) いつ目覚めるのか、何を謳歌するのか? ベッシーだって、目覚めなかったわけではありません。そういう生き方をしなければ家族を養えないと彼女自身に言い聞かせていたのです。 観ている人は、その家族の誰かに感情を投影して観ることになるかもしれません。 演出の上村聡史は20代。希望と力強さがみなぎる演出でした。 作・クリフォード・オデッツ、訳・黒田絵美子、演出・上村聡史、美術・石井強司、照明・金英秀 公演情報の詳細はこちら。 (文学座アトリエにて) ※文学座にチラシ画像掲載の許可を得ておりますので、画像の転載はしないでください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.12.17 01:26:44
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