|
カテゴリ:歌舞伎・古典、観劇
今月は、中村信二郎改め中村錦之助の襲名披露があります。
演目は『実盛物語』『口上』『角力場(すもうば)』『魚屋宗五郎』。 通常上演されている作品でも、例えて言えばカメオ出演のように、ほんの少し出る役にも有名俳優が配される贅沢なキャスティングも見られます。 本日は『口上』について述べることにしましょう。 観客を大名に見立てて襲名を報告するのが口上なのだそうです。(イヤホンガイドの情報より) 「とざい、と~ざぁ~い」(東西東西=お静かに、の意味)の掛け声がかかり幕が開くと、襲名する本人を中央に総勢23名が客席に向かって一列に並び深々と頭を下げていました。 中村富十郎がまず、信二郎が二代目錦之助を襲名するに至った経緯や「錦之助」という名前への想い入れを語り、そして次々と関わりの深い俳優たちが、二代目の人となり、エピソードなどを一言ずつ述べ、観客に末長くお引き立てをと、お願いの言葉を述べていきます。 そこで聞いた襲名にあたっての話とは、初代の中村錦之助は歌舞伎の俳優として舞台に立っていましたが、早くに映画の世界へ移り、そこで世間も周知のとおり萬屋錦之介という映画スターになりました。 二代目からすると叔父にあたる初代ですが、このままだと錦之助の名前が忘れられてしまう、という想いから、歌舞伎の世界でその名を継ごうと決意したということです。 私が観客として中村信二郎を知ったのは、2005年に歌舞伎座で上演された蜷川幸雄演出のNINAGAWA『十二夜』の舞台です。 信二郎はオーシーノ公爵にあたる大篠左大臣を演じていました。 その時の様子は以前記しましたが、開演直後に東京近郊で震度5の大きな揺れがありました。 3階席で観ていたのですが、これが思いのほか揺れて、場内に悲鳴があがりました。そんな最中でも、信二郎は長いセリフを想いを込めて語り続けていたのです。 その役者魂に、セリフが一区切りついた後、大きな拍手がありました。 その時以来、注目の俳優として、その確かな芝居と存在を見てきました。 襲名というのは、推薦があり、周囲に認められて初めてできることのようです。 そういう意味でこの襲名を、観客として喜ばしく思いました。 さて、『口上』後の『角力場』では、二代目が初のつっころばしの役に挑戦しています。(上方特有の、お金はあるけど力はない、二枚目の若旦那の役です) 二代目中村錦之助、これからもより一層、観客を魅了する芸を見せてくれることでしょう。 (歌舞伎座にて)上演時間詳細はこちら。 ※写真のような「襲名披露」にちなんだ品々が、歌舞伎座2階ロビーに展示されています。 追記:歌舞伎公式ウェブサイトに、二代目錦之助襲名披露口上の様子が写真入りで掲載されています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.04.08 22:14:12
[歌舞伎・古典、観劇] カテゴリの最新記事
|