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カテゴリ:演劇、観劇
新国立劇場 開場10周年記念フェスティバル公演として、「三つの悲劇 ギリシャから」というテーマで三作品が上演されます。
その第一弾がこの作品。 ギリシャ悲劇の中で、今回の主人公はエレクトラとオレステスの母親クリュタイメストラ。佐久間良子が扮します。 稽古日直前、上演のため悲劇を書きたい、けど書けないと苦悩する作家・島岡(中村彰男)。 路上でギリシャ悲劇の三大作家の一人、ボロを纏ったエウリピデス(小林勝也)に出会い、「悲劇の書き方」を乞います。 なぜ、今、悲劇なのでしょう? そこに、悲劇へと向かいつつある現代に対する警鐘なのか、という想いを抱きました。 『ロープ』(作・野田秀樹)も、『エレンディラ』(脚本・坂手洋二)も、その要素を充分に含んでいました。 半世紀を生きてきた作家が鳴らす警鐘。 この作品の作は川村毅。 さて、舞台の上でその悲劇をどう表現しようかと、作家・島岡は試行錯誤しています。 ちょっと意外なオープニングの理由も(その手法は却下されましたが)、理解できる気がします。 そんなにまで悩んで書いた本は、エレクトラと母親クリュタイメストラの確執と悲劇の物語。 ただ、何か様子がおかしい。 現代を生きる悲劇の登場人物たちには、もうかつての殺意はありません。 どうやって名のある人々の生き方として決着をつけるのか。 そこに至るまでを川村毅は、もっとダイレクトに私たちの生きる日常をえぐって描きました。 正味2時間半の作品に、ギリシャ悲劇に端を発して様々な感情と情報が織り込まれ、正直なところ、その場の出来事を受け止めるのに精一杯でした。 そんな中、頭のフィルターを通して自分に残ったのがこれです。 『エレクトラ』というギリシャ悲劇の登場人物の関係を知って観たら、もしかしたらパロディに思えるところもあるかもしれません。 知らなくても、劇中のエレクトラ(小島聖)の叫びに耳を傾けていれば、現代に生きる彼らが何にこだわり、苦しんでいるのかを知ることができるでしょう。 今をときめく作家が次々と鳴らす警鐘に、私たちは何を考え、何をすれば・・・。 作・川村毅、演出・鵜山仁、美術・島次郎、照明・服部基、音楽・久米大作、衣裳・原まさみ (新国立劇場 中劇場にて) ※公演詳細は、新国立劇場のサイトで。 ☆作・ソポクレス「ギリシア悲劇(2)」筑摩書房 「エレクトラ」を収録。 ☆作・エウリピデス、訳・山形治江「オレステス」れんが書房新社 劇中に登場するエウリピデスの書いた作品。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.09.22 01:25:46
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