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カテゴリ:演劇、観劇
ようやく、ようやくデヴィッド・ルヴォーの演出作品に再び出会うことができた喜びと言ったら!
『ナイン THE MUSICAL』を知る方には、少々趣が違うと思われるかもしれません。 幕が開く前の舞台を見ただけで感じる緊張感は、格別です。 今回は幕が開く瞬間までその感覚を楽しめる贅沢な演出でした。 ノラ・ヘルメル(宮沢りえ)の登場シーンは、彼女の立場を象徴しているようでした。 愛くるしく、その華奢な体が子供のように、世間の風に吹かれたら壊れてしまいそうに見えます。 しかし、幼なじみの女友達クリスティーネ(神野三鈴)との再会、大切にしてきたあるヒミツ、意外な人物の訪問、それら全てが同時に訪れた一日が、ノラをある岐路に立たせました。 その結末は、誰もが知るところですが、ノラ本人も気付かなかったある想いが表面に浮上した時、そこには今まで見たことのない彼女の姿がありました。 ノラの心の変化を全身で感じられる舞台は、迫力そのものです。 それはクリスティーネという慈しみ深い女性の存在があってこそのように思います。 ルヴォーは、女優の美しさとその変貌を、最大限見せてくれる演出家です。 そこに居並ぶ男性は、本当に優しい脇役(千葉哲也扮するドクター・ランクのような)、または横暴で情けない男(堤真一扮するヘルメル氏のような)でしかないように見えます。 耽美な舞台の上に、実にシンプルにその対比が描かれていました。 四方を取り囲む客席、多くの視線に見つめられるこの舞台こそ「人形の家」だったのかもしれません。 作・ヘンリック・イプセン、演出・デヴィッド・ルヴォー、英語版・フランク・マクギネス、翻訳・徐賀世子、 美術・磯沼陽子、照明・小川幾雄、音響・高橋巌、衣裳デザイン・伊藤佐智子 (シアターコクーン)にて ※公演詳細はBunkamuraのサイトで。 ☆作・ヘンリック・イプセン、訳・原千代海「人形の家」岩波文庫 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.09.08 18:19:52
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