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COCOに幸あり PART2

COCOに幸あり PART2

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2006.11.10
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 北海道銭函駅。
 冒頭から別れの場面である。

 いしだあゆみ演じる直子が、いい。
 幼いわが子に何やら語りかけ、必死に笑顔をつくろうとするその演技が、たまらなく自然でいい。

 車中の人となる彼女は、やはり笑顔で…泣きながらの笑顔で、見送る男に「敬礼」する。
 ちょっと前まで夫だった男の職業が、刑事だったからなのだろう。
 わざわざ、そんなポーズをとることで、直子は、泣き崩れそうになる自分を必死で支えようとしている。

 発車の時刻が来る。
 雪が…、雪が降りしきる駅。

 ほとんど泣きべそをかきながらも笑顔をつくろうとする直子…。

 見送る男の表情は、その背中で読み取るしかない。

 すべては無言である。

 おそらく、このような別れの場面は、洋画では味わえないのではないだろうか。
 こうした演技をさせれば、日本の女優は、飛び抜けているのではないかとさえ思えてくる。

 シナリオライター倉本聰が、高倉健のために書き下ろしたといわれる映画。
 「駅-STATION」



 オリンピックの射撃選手に選ばれるほどの腕前の男…。
 それが、三上英次(高倉健)である。
 英次の上司は、連続警察官射殺犯に射殺されていた。
 捜査に加わり、犯人を追い詰めたい英次であったが、オリンピックを優先するべきだという警視によって、それは許されなかった。

 時は無情に流れる。

 英次は、ただ職務を生真面目に遂行するしかない。
 彼は、職務のかたわら担当していたオリンピック強化コーチを解任される。
 きびしい指導が選手たちの造反を招いたらしいのだ。
 
 自分が逮捕した殺人犯の刑が執行される。
 1つの区切りが着いたということなのか、英次は故郷に帰るべく、増毛駅に降り立つ。
 そこから連絡船に乗るのだ。
 だが、折悪しく、船は欠航…。
 時間を持て余した英次は、目についた赤提灯の店に入る。
 「桐子」という名のその店に、客は誰もいない。
 たった1人で店を切り盛りしている女(倍賞千恵子)と話すうちに、英次は、自分と同じ孤独を感じ、心ひかれてしまう。


 外は、一面の白い雪。
 画面(スクリーン)全体から、その凍りつくような寒さが伝わってくる。
 だからこそ、その小さな飲み屋で、次第にあたたまっていく英次の心が、より一層、感じられるのである。

 ぽつり、ぽつりと言葉を交わすうち、彼の心が自然にほどけていく…。
 それは、おそらく本当に久しぶりのことなのだ。
 刑事としての自分を忘れ、彼はひたすら「暖」をとりつづける。
 このときの彼には、それが自然な心の動きだったのだろう。

 だが、いずれ別れは、またやってくるはずだ。
 倉本聰と高倉健の組み合わせで、ハッピーエンドを予想することなどできはしないではないか。
 問題は、いかに見る者を納得させてくれるかということになるわけであり…。


 飲み屋に置かれている小さなテレビから、歌謡曲が流れてくる。

 2人の言葉のすき間を埋めるかのように、実にみごとに使われている。
 まるで、この歌があったから、映画ができたのではないかと思えるほどだ…。


       181110station







    お酒はぬるめの燗がいい
    肴(さかな)はあぶったイカでいい
    女は無口なひとがいい
    灯りはぼんやり灯りゃいい
    しみじみ飲めばしみじみと
    想い出だけが行き過ぎる
    涙がポロリとこぼれたら
    歌いだすのさ 舟唄を

    沖の鴎に深酒させてヨ
    いとしあの娘とヨ 朝寝するダンチョネ

    店には飾りがないがいい
    窓から港が見えりゃいい
    はやりの歌などなくていい
    時々霧笛が鳴ればいい
    ほろほろ飲めばほろほろと
    心がすすり泣いている
    あの頃あの娘を想ったら
    歌いだすのさ 舟唄を

    ぽつぽつ飲めばぽつぽつと
    未練が胸に舞い戻る
    夜ふけてさみしくなったなら
    歌いだすのさ 舟唄を



   「舟唄」 作詞 阿久悠 作曲 浜圭介 歌唱 八代亜紀







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最終更新日  2006.11.10 22:29:49
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