ボックスアート

ゲームボード

パブリッシャーはポーランドのSINONIS。国内ではほとんど流通していないが、さまざまな音楽ジャンルでアーティストを育てる「ショウビジネス」や、一部にマニアがいる株式ゲーム「経済の達人」といった、かなり難解ながらもやりこみ甲斐のある重量級ゲームを作っているところだ。このゲームは「経済の達人」のデザイナー、Andrzej Kurekによる2作目。前作同様、かなり間接的なアクションで活動主体(国家)を操り、自身の利益を獲得するゲームとなっている。
プレイヤーは北極圏で燃料や鉱物資源を採掘する企業のお偉いさんとなる。時代は近未来(とはどこにも書かれてないが、たぶんタイトルの2019ってのは2019年ってことだろうw)ということで、合衆国、ロシア、カナダ、ノルウェー、EUに加えて、中国がこのエリアでの利権を得ようとしのぎを削っている。何しろ近未来なので、現代とは違って武力による衝突も頻繁に起こり、合衆国がEUの船を破壊するとかざらにある。まあそうするには条件が整っていないと駄目なのだが、中国だけは北極圏に国土が近いわけでもないのに乗り込んできている悪い奴なので、いつでも殴ることができるし、中国も他の国をいつでも殴ることができる。うーん、半端にリアルだなw
しかしプレイヤーはしょせん一企業人。ぶっちゃけどの国がどうなろうと関係ない。自分の企業が儲かればそれでいいのだ。このため、各国政府にロビイストによる働きかけを行い、自社に有利なアクションを実行させることになる。資金をつぎ込んで強い圧力をかければ、それだけ早く狙った国に狙ったアクションを実行させることができる。武装探査船を建造させて他国の船を蹴散らしたり、認可を得て自社の採掘施設を建設したりといったアクションはターンごとに1回しか実行できないので、先手を取るのは重要だ。しかしそれには資金がかかる。利益を上げるのが目的なのだから、無駄な資金は1ドルも費やすわけには行かない。他プレイヤーと狙いがかぶらないと確信できるなら、あえて投資を抑えて後手を踏むのもありだろう。
費やした投資額順に各国にロビイスト駒を置いたら、今度はそのロビイスト駒の順番に各国のアクションを実行する。アクションを実行する順番は国ごとに決まっており、ロシアが最初で合衆国が最後だ。ただし、決して「プレイヤー=国」ではないことを忘れてはいけない。たまたま最初のターンにロシアに肩入れしたとしても、ずっとそうする義理はない。自社の利益にならないと判断したら即座に他国に乗り換えるべきだ。もちろん、自社の採掘施設が戦争に巻き込まれそうなとき、敵対する2国にロビイストを送り込んで危機を回避したり、逆に他社の利益を減らすため、相手が手を組んでいる国の力をそぎ落としたりする必要もあるだろう。各国の成長は手段であり、目的ではないのだ。
実行できるアクションは多岐に渡り、正直言ってどうすれば自分の利益になるのか、さっぱり分からないw 1つだけ言えるのは、自社の採掘施設をできるだけ早く(そしてできるだけたくさん)建設する必要があるということだ。各国のアクションによって、プレイヤーはその国が支配している区域に合法の施設を建設したり、その国が支配していないけど船がこっそり入り込んでる区域に非合法の施設を建設したりする。どちらも機能的には変わらないが、非合法の施設は国に利権料を支払わずにすむ。しかし非合法なので、他国に破壊されそうになったときに国が守ってくれないw どちらにするかは懐具合と区域の空き具合(1区域に1つしか建設できないのだ)によるだろう。また、国際法(北極評議会での投票で決まる)が変わると区域の支配国が変わることもあり、そうなるとそれまで合法だった施設がいきなり非合法になったりもするので気が抜けない。法律を変えることも、破壊されそうな施設を政治的に保護することもできるが、すべては各国のアクションの結果であり、すなわちプレイヤーのロビイスト活動次第だ。漫画やドラマの中以外ではなかなかお目にかかれない「高度な政治的判断」を常に強いられることになるだろうw
全国家のアクションが終わったら、ようやく企業の出番。建設した施設から対応する資源を採掘し、それを売却して資金か得点を得る。9ターンプレイしたら(または中国が北極点を支配したら)ゲーム終了。所持資金、建設した採掘施設などから最終得点を得る。ここで各国に置いたロビイスト駒から追加収入や得点を得たりできるのだが、北極点を支配した国に置いているロビイスト駒はなんと1個10点にもなる(結構高い)。しかし北極点自体には採掘施設も建てられず、何の価値もない。どの国が北極点を支配するかを見極め、できれば他プレイヤーにそれを実行させて、自分は他の必要なアクションを実行するのが理想的だろう。
株ゲーではないが、それと同じ匂いのするゲーム。得点主体(この場合は企業)を直接操るのではなく、別の活動主体(この場合は国家)を操って企業が得点を上げるよう仕向けていく。この手のゲームには相当な慣れが必要だし、ルールを読んだだけで勝ち筋が見える人はなかなかいないんじゃないだろうか。しかし株ゲー(たとえば「1830」とか)に熱烈なファンがいるように、これも好きな人にはたまらないゲームとなるかもしれない。
ここまで書いておいてなんだが、実はあまり購入はお勧めできない。何しろこのSINONISのゲーム、どこで作ってるのか知らないがコンポーネントの出来が最悪なのだw 駒の欠品は当たり前で、色移りがあるくらいならまだ可愛い方。塗料がくっついてペンチでもはがれないとか、逸話は枚挙にいとまがないw 前述の「ショウビジネス」「経済の達人」が国内流通しなくなったのもこのせいだろう。さすがにアフターサービスにも限度があるからねw
色の選択もひどい。プレイヤーカラーだと、白はいいとして、茶、焦茶、黒って何でそんな見にくい色にするのかw 国別カラーでも紫と紺を一緒に使うとか、ちょっと考えればとうていありえないと思うんだが。BGGでも「黒と焦茶がほぼ同じ」「紺と紫の見分けがつかない」など、阿鼻叫喚の声が上がっている。他にも「多言語版なのに各国のルールごとに書かれている駒数が違う」といった編集上のお粗末さも見られる。
ゲームとしてはよさそうなので、実に惜しいところだが、「欠品した駒は自分で用意すればいい。見にくい駒の色は自分で塗り直せばいい」という豪傑にしかお勧めできない。早いところ他の製造ルートを模索して欲しいものだ。
BGGの和訳ルール