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October 9, 2007
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カテゴリ:ファンタジー日記
豪華なクルーザーが幾層も停泊しているムルクア港の港湾事務所の、海に面した最も目立つ壁面に大きく「6日」と掲げられている。祭りまでの日数をカウントダウンするパネルだ。数字のところだけパネルを張り替えられる仕組みになっていてるパネル台も、沈む夕日を左から受けて長い影を付けている。

そこに今、白いペイントのボディを穏やかなオレンジに染まった水面に浮き上がらせながら、ひときわ豪華なクルーザーが静にすべるように近づいてくる。オレンジに輝く雲とオレンジの太陽光を反射させる水面の間に、シンプルな曲面で構成された鋭角な印象の真っ白さが、威厳を誇示するように浮かび上がっている。ブリッジの側面にははっきりと王家の紋章が、共和制になって久しいこの国での王家の存在感をははっきり示している。

港には司教以下、クアの主だった顔が勢ぞろいしている。どの顔も緊張してはいるが、歓迎している表情である。クアにとって一大イベントであるこの祭りに、王族を呼べることは何よりの誇りであり、クアの権威を示すことにもなる。今日到着したのは、数十年前までは南部の諸侯として君臨したフォストール家に王子として生まれながら、即位するや政治の実権を議会に譲渡してそのまま政治家になったというクレスト・フォストール8世。今は老齢ですでに引退している。今年の来賓の中でもVIPで、民衆の人気も高い。そのため港は一目見ようという人々でたいへんな人だかりになっている。その群衆の中に、ダラたちが書庫でであったあの少女の姿もあった。

クルーザーが接岸し、幅の広いタラップがおろされると、ばらばらと人がおり始めた。また、港のほうから登っていく人もいる。しばらくしてクルーザーと同じ真っ白な衣装と真っ白な髪の老人がタラップを降りてきた。港が歓声に包まれる。老人もそれに応える。その後ろに続いて、フォストール家の若き王子や、一族と思わしい豪華な衣装が降りてくる。その何人かには、老人に対するのにおとらない歓声が上がった。

その後に老人と同じ真っ白な長く伸ばした髪を後ろに束ねた若者が続いている。目立つと言えば目立つが、目立たないと言えば目立たない。少女はその姿を確認すると指を組んで口元に当てると、なにやらつぶやいた。その瞬間、若者が少女の方をちらりと見た。少女はもう何事もなかったように、隣の教会関係者らしい人となにやら話しをしている。若者もそのままタラップを降りてみんなに従っている。簡単な歓迎式典が行われ、フォストール8世の挨拶があり、やがて一行は用意されていた通路を通り、港に隣接する迎賓館までパレードのように向かっていった。

少女もその後を付いていった。一行が迎賓会に入ってもまだ混雑している迎賓館の入り口で、少女と一緒にいた壮年の男性が門番になにやらやり取りをしている。やがて門番の横の小さな扉が開かれて、少女だけが中に入っていった。少女が中に入ると、あの白髪の若者が待っていた。少女が考えていたよりもはるかに柔らかい表情だったが、少女は一瞬凍りついた。おもわず目が合ってしまった若者の瞳はまるで炎のように揺れている。目を疑うまもなく、じわっと全身が汗ばむような感覚に襲われる。その炎は赤かとおもえば青にも見える。けして瞳に炎が移っているのではなくて、瞳そのものが揺れている。それは間違いなくあの聖獣の証だ。少女はなんとか緊張を隠して、いつものように表情を動かさないで「北学舎のヤナです。急いでお会いしたかったので、失礼しました。」と、普段どおり抑揚少なく話しかけた。若者の姿をした聖獣は「よく私が来るのがわかりましたね。」とにっこり表情を緩めた。






炎の瞳をちらちらさせながら若者はこちらへとヤナを誘いながら、語尾を延ばす独特の口調で話し始めた。
「どうも、ヴァシリオです。聖獣に会うのは初めてですよね? 今はヒューズと名のっています。ので、ヒューズと呼んで下さい。こちらにも色々あるので察してください。私を聖獣だと知っているのはほんの数名ですから。」
聖獣とは、彼らが好んで使う言い方だ。
「あの念話はどうやるのです? 私の知らない方法ですよ。」
「港で急に、びっくりしましたよ。」
「あのクルーザーきれいでしょ。私がデザインしたんですよ。」
「クルーザーの旅も案外楽しいものですよ。 イルカが意外なことを教えてくれたりもしたし。」
「西の果てにね、いまでもガンドゥールの一族がいきているって。」
「ガンドゥール知ってる? 私たちと同族の。」
「それにしてもクアは涼しいね。」
と、ヤナが、彼が来るのがわかった理由を説明する言葉を選んでいる間に次々と話題を変えていく。
そのうち「あぁ、あのカモメか。」と勝手に合点したように言った。北学舎なら鳥だもんねと付け加えた。

ヤナはここについてから色々と情報収集をしていた。特にクアに近づく存在には気を使っていた。聖獣の存在をキャッチしたときは驚いた。本当なら、何が目的なのか。とにかくあって目的を確かめるしかない。そう考え、後手に回るといけないと思い入港早々にコンタクトを試みたわけだ。「そうです。」と言いかけたところで部屋に着いた。

「ここなら落ち着いて話せますよ。私の結界が効いていますので。」ヤナは言われて初めて扉の存在に気づいた。ヴァシリオが結界をヤナにだけ緩めたためだが、ヤナは結界にも気づかなかったし、ヴァシリオがいつ結界を緩めたのか気づかなかった。自分との力の差を感じ、ヤナは警戒心を強めつつも、部屋に入った。

部屋に入るとヴァシリオは、ヤナに南部風のデザインのソファに座るように手で示して、自分もパレードの時から来たままのジャケットを脱いで、髪を解きながらソファに深く腰をかけた。ヤナが言葉を選んでいると、
「私がここにきたのも、君がここにいるのも、目的は同じようだね。」
ヤナの説明の手間を省かせるようにヴァシリオが言った。
「君が急いでいるって言うことは、あまり良くない展開なんだね。もう調査はしたの?」
ヤナがようやく座りながら「昨日見たところでは・・・」と言いかけると「ていうっか、見たほうが早いな。よし、今から見に行こう。」と遮って笑った。ちらちら揺れている瞳の炎をみるとヤナは何もいえず、すぐに立ってただそれに従うしかなかったが、脱いだばかりのジャケットを着るとヴァシリオは振り返って揺れる炎の瞳でヤナをみつめると言った。
「って、どこを見に行くの?」

ヤナが「あの・・・」といいかけると、「もうちょっとゆっくり説明して。座ってよ。」と言いながらヴァシリオはまたジャケットを脱いでソファに座った。






め、メモですから・・・ひとこと

ぶっちゃけ、ヴァシリオがなぜここに来たのかわかりません。彼は目的は同じといっていますが、わかんないんですよ。
なにせ人知を超えた存在でして、その説明は多分、話がここに至る前にしておくべきなんですよね。最初にダナたちが本の話をしている時に、彼の一族についての説明が入るはずなんですが、急遽登場が決まったもので・・・。

かれらの一族はかつて、人間社会に深くかかわっていました。その最大のものが大陸の分断と、英知の伝授でした。かつて彼らは人間と共に大学を作ったりもしてました。

どのくらいの数がいて、そのうちどのくらいが人間に関与していたのかわかりません。寿命は人間とは全く違う感覚で、自分が人間の単位で何年生きたとか知っているものはいません。

この話の現在で、どのくらいの数がいるのかもわかりません。ただ、王家と付き合いのあるものが一人いたことがわかった。

今回の話では彼らの存在をにおわすだけで、登場させるつもりはありませんでした。今も生きているけれど、昨今では人間の政治にはかかわっていないからです。

でも、来ちゃった。しかも彼は政治家とかかわりを持っている。
ていうか、これまた登場予定のなかった政治家を連れてくるし。
どうしよう。何しに来たんだろう?
どーしよーっ!?





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Last updated  October 17, 2007 11:10:46 AM
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