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《櫻井ジャーナル》

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2010.07.20
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 7月19日付けのワシントン・ポストに掲載された情報機関に関する記事が話題になっている。2年間の調査に基づく調査報道で、そのタイトルは「トップ・シークレット・アメリカ」。2001年9月11日以降、アメリカの情報機関が「官」と「民」の壁を越えて肥大化し、制御できない状況になりつつあると警鐘を鳴らしているのだ。現在、1271の政府機関と1931の民間企業が「テロ対策」という名目で秘密裏に活動、85万4000名が最高機密保全許可を取得しているという。

 第2次世界大戦後、アメリカでは破壊活動を目的とする秘密機関OPC(政策調整局、当初の名称は特別計画局)が組織された。平和な時代に情報機関は必要ないという意見がアメリカ国内にはあり、1947年にCIAを創設するだけでも大変だった。そこで、CIA長官の影響が及ばない場所にOPCを1948年に設置したのである。その初代局長がフランク・ウィズナー。この人物は大戦中、アレン・ダレスの下で秘密工作に従事し、イギリスのロンドンやルーマニアのブカレストで情報活動を指揮した。戦後日本が進む方向を決めた、つまり「右旋回」させたジャパン・ロビーとも近い関係にある。(この辺の詳しい事情は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』で説明した。)

 ドイツとの戦争で疲弊したソ連を攻撃するべきだと考える勢力がイギリスやアメリカで台頭し、CIAやOPCが登場してくる頃から「冷戦」ということが言われるようになる。そして1950年10月にOPCはCIAの内部に潜り込み、翌年の1月にはアレン・ダレスが副長官としてCIAに乗り込んできた。そして「計画局」が1952年8月に誕生、1973年3月に名称は「作戦局」へ変更された。

 この名称変更の背景には、アメリカ議会の調査がある。情報機関の秘密工作にメスが入れられ、OPCに関する情報が不十分ながら明らかにされたほか、クーデターや要人暗殺など、さまざまな秘密工作が表面化している。ベトナム戦争で情報機関と特殊部隊が展開した「フェニックス・プログラム」もこの時に判明した。この作戦によって、特定の地域に住む農民が皆殺しにされ、都市部では「爆弾テロ」が展開された。(この辺のことも拙著では触れている。)

 こうした議会の調査、メディアの報道、そして内部告発に懲りた情報機関は議員の口を封じる方策を考え、自分たちの言いなりにならない記者を排除し、内部告発ができないようなシステムを導入していく。「情報活動の民営化」も議会や国民の目をかいくぐる手段のひとつだった。この問題は「イラン・コントラ事件」で発覚している。

 しかし、情報活動の民営化と肥大化が急速に進むのは2001年9月11日からである。同じように軍隊の民営化も推進されたが、軍や情報機関の仕事をする民間企業は秘密のベールに守られ、仕事の内容も資金の動きもわからない。

 CIAの破壊活動部門は麻薬取引に手を出してきたと信じられている。ベトナム戦争の時には東南アジアのヘロイン、ニカラグアの反革命工作ではコカイン、アフガニスタンではヘロインといった具合だ。そうした手段で得た資金を「洗浄」するためにCIAは銀行業にも進出、ロッキード事件で登場するディーク社やアフガン戦争の際に名前が出てきたBCCIも「CIA銀行網」の一部だとされている。つまり、情報機関の肥大化は犯罪活動を守ることにもなりかねない。

 ドワイト・アイゼンハワー大統領は1961年1月、退任演説の中で「軍産複合体」について警告しているのだが、現在では情報機関も加えなければならない。いわば「軍情産複合体」だ。こうした指摘は1980年代からなされていたのだが、体制派のワシントン・ポストがこの問題に取り組んだことは興味深い。何しろ、1996年8月にゲーリー・ウェッブがCIAと麻薬取引に関する連載記事を書いた際、同紙はウェッブ記者に罵詈雑言を浴びせたのである。体制を揺るがすほど、事態は深刻化しているのかもしれない。

 秘密の裏では腐敗が進む。「国家安全上の秘密」によって、アメリカは朽ち果てることになるのだろう。秘密という点で、日本はアメリカよりも状況は悪いかもしれない。官僚が情報を握り、主権者であるはずの国民は何も知らされていない。政権が交代しても情報開示は進まなかった。やはり、日本も秘密によって朽ち果てそうだ。





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最終更新日  2010.07.20 14:45:42



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