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《櫻井ジャーナル》

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2012.10.31
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 多国籍企業や富豪たちには資産を隠し、課税を回避するシステムが存在する。その一端を明らかにする資料をHSBCのプライベートバンクに勤めていた元従業員が入手、その中には約2万4000人の外国人口座に関する詳細な記録が含まれているのだという。

 債務危機を口実にして国民に重い負担を押しつけようとしているギリシャでもエリート層がそうした口座を持っている。HSBCのジュネーブ支店にはギリシャ人の口座が2000以上あるそうだが、その氏名をギリシャで出されているホット・ドック誌の編集者、コスタス・バクセバニスは28日にツイッターで明らかにした。

 船主、実業家、芸術家、政治家などを含むリストをギリシャ政府は2010年にフランスの財務大臣だったクリスティーネ・ラガルデから提供されながら、ギリシャの当局は調査していない。そこで、バクセバニスはリストの公表を決断したという。

 脱税の捜査には消極的だったギリシャの当局だが、編集者の逮捕は迅速だった。逮捕の理由は「市民の個人情報」を公開したからなのだという。日本のマスコミなら、こうした政府の動きに同調、リストを公開したジャーナリストは孤立してしまうだろうが、ギリシャでは連帯する動きがある。

 HSBCはロンドンに本店がある金融グループで、1991年に香港上海銀行を母体として創設された。香港上海銀行はアヘン戦争(1840年から42年)とアロー戦争(1856年から60年)の後、1865年に香港でトーマス・サザーランドによって設立された。つまり、東アジアにおけるイギリスの植民地支配を支えるために作られた銀行で、麻薬取引とも関係がある。1866年には横浜にも支店ができている。

 本ブログでは何度か指摘したように、1970年代にロンドン(シティ)を中心とするオフショア市場のネットワークが整備されて以来、世界の地下経済はイギリスの首都を中心に動いている。そこに伝統的なタックス・ヘイブン、つまりスイス、ルクセンブルグ、オランダなどともつながり、兄弟企業や富豪たちの資産を守っている。

 かつて、ジョン・D・ロックフェラー、J.P.モルガン、アンドリュー・カーネギー、エドワード・ヘンリー・ハリマン、アンドリュー・W・メロンなどの資本家は「泥棒男爵」と呼ばれた。庶民から富を搾り取り、貧困化させたことからそのように名づけられたのだが、彼らは儲けを投資に回し、結果として経済発展に寄与した側面はある。

 彼らが儲けを新たな投資に回した理由は、そうするしかなかったからである。今ではオフショア市場/タックス・ヘイブンによって資産を隠すことが容易になった。庶民から搾り取った富は地下経済へ流れ込み、そこから投機市場へ噴出することになる。必然的に社会は破壊され、経済は衰退していく。

 投機は所詮、博奕にすぎないわけで、遅かれ早かれ破綻する。その破綻の尻ぬぐいを強制されるのは勿論、庶民。ギリシャでもそうした尻ぬぐいを庶民が押しつけられようとしている。そうした強欲な支配層に対する怒りが大規模な抗議活動になって現れている。

 HSBCの口座リストが公表されたことで人びとの怒りはさらに高まるだろうが、当然のことながら、巨大企業や富豪が使っている口座はHSBC以外にも無数にある。こうしたオフショア市場/タックス・ヘイブンのネットワークは「西側」支配層の手先になっている王室や独裁者の資産隠しにも利用されているが、それだけでなく、麻薬取引など犯罪組織も重要な顧客になっている。犯罪者の巣窟だと言われても仕方がない。

 ギリシャで債務問題が明らかになったとき、事態を深刻化させたゴールドマン・サックスをはじめとする銀行、あるいは投資ファンドの責任を問わず、ギリシャ庶民に原因を求めていた「報道」も少なくなかった。権力者に媚び、おもね、お零れにあずかりたいという姿勢が国外の問題でも出てくる。「習い性となる」ということなのだろう。

 ちなみに、シカゴ大学のマルガリータ・ツツラ教授によると、ギリシャの脱税額は280億ユーロで、同国のGDP(国内総生産)の最大15%に達するのだという。





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最終更新日  2012.10.31 14:20:12



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