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今月の8日、アルゼンチンでは数十万が参加したという大規模な反政府デモがあった。腐敗に抗議する、ということになっているが、クリスティーナ・デ・キルチネル政権と巨大メディアとの戦いという側面がある。
アルゼンチンには圧倒的な力を持つメディアが存在する。「グルーポ・クラリン(クラリオン・グループ)」だ。このメディアが抗議活動を後押し、「アラブの春」を再現しようとしている。例によって、労働組合も協力している。 現在のクラリンは出版、新聞、テレビ、ラジオ、電気通信など幅広い分野に進出、情報の発信源として大きな影響力を持っている。筆頭株主は創設者の一族だが、巨大金融機関のゴールドマン・サックスも大株主として名を連ねている。カール・レビン米上院議員から詐欺的で反道徳的だと批判された、あのゴールドマン・サックスだ。 グアテマラにしろ、チリにしろ、アメリカ政府はラテン・アメリカに民主政権が出現すると、軍事クーデターて潰してきた。20世紀の初頭は「棍棒外交」で露骨に海兵隊を侵攻させていたが、戦後は現地の軍人を利用している。 そのため、1946年にパナマで創設されたのがSOA。対ゲリラ戦の技術、狙撃訓練、特殊工作、心理戦、情報活動、尋問/拷問などを教えることが目的だ。クーデターを実行したり、国内で「死の部隊」を編成してアメリカの巨大企業にとって都合の悪い人びとを虐殺してきた軍人の多くは、この訓練所を卒業している。なお、SOAは1984年にパナマを追い出され、2001年にはWHISECへ名称が変更されている。 アルゼンチンが経済的に苦しいことも確かだが、その原因を作ったのは軍事政権。つまりアメリカをはじめとする「西側」の巨大資本の操り人形。かつては豊かな国だった国を、巨大金融機関と手を組んだ軍事独裁者が破壊したのだ。 つまり、銀行から莫大な融資を受け、その資金をオフショア市場を使って自分たちの私的な口座に隠し、つまり金融機関に資金を還流させ、国民に債務の返済を押しつけたのである。アルゼンチンの軍事独裁者と最も親しかった銀行家はデイビッド・ロックフェラー・シニアだと言われている。 皮肉なことだが、こうして作られた債務が軍事政権をフォークランド/マルビナス諸島への軍隊派遣へと向かわせる。この戦争を利用してイギリスのマーガレット・サッチャーは支配基盤を固めるが、アルゼンチンでは軍事体制を崩壊させることになった。 前にも書いたことがあるが、世界の巨大多国籍企業や富豪たちの資産隠し、課税逃れを助けているのがオフショア市場のネットワーク。1970年代以降、その中心はロンドンである。 現在、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアをはじめ、多くの国々で財政問題を理由にして「緊縮財政」が強要されている。労働者の解雇、賃金の引き下げ、健康保険や年金システムの破壊などで巨大企業や富豪に貢げ、ということだ。ただ、EUでは日本とは違い、庶民が怒りの声をあげ、激しく抵抗している。 そうした中、HSBCの元社員が数千に及ぶ銀行の記録を盗み出した。この元社員は7月にバルセロナで逮捕されているが、記録はフランス政府の手を介して各国政府に渡され、脱税の捜査に使われ、各国で大きな成果が出ている。が、この情報をギリシャ政府は無視、国民に対するさらなる負担を強いる法案を議会は成立させた。 オフショア市場の本拠地、ロンドンでも巨大企業の課税回避が問題になっている。決算委員会でグーグル、スターバックス、そしてアマゾンが槍玉に挙がり、マーガレット・ホッジ委員長から、違法ではないが不道徳だと批判された。本来なら払うべき税金を「合法的」に回避しているというわけだ。その仕組みを作り上げたのはイギリスの金融界なのだが。 ちなみに、スターバックスの場合、コーヒー豆を仕入れる際にも適切な対価を支払っていないと批判されている。調査ジャーナリストのジェームズ・ヘンリーによると、3.50ドルのカフェラテで、農民の手に渡るのは3.5セントにすぎないのだという。 本来なら、日本でも庶民に負担を強いる前に、金融システムにメスを入れなければならない。言うまでもなく、日本では政府をはじめ、多くの議員や大企業の経営者、学者、マスコミ社員は強者総取りの仕組みを信仰、庶民からむしり取ることしか考えていないわけで、金融システムにメスを入れることはないだろうが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.11.14 03:27:02
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