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歴史には節目があり、そこには「ルビコン」が流れている。見た目は大したことのない川だが、渡ってしまうと再び戻ることはできない。今回の参議院選によって、日本はルビコンを渡る準備ができてしまった。が、まだ渡りきってはいない。
目の前にあるルビコンはTPP(環太平洋連携協定)だろう。巨大企業が送り込んだ約600名のアドバイサーの意見を聞きながらアメリカ政府がまとめているようだが、その内容は秘密にされている。 アドバイサーを送り込んでいる企業には、遺伝子組み換え作物で悪名高いモンサント、庶民の住む社会から富を搾り取って金融/投機/博打の世界へ資金を流し込む金融機関、例えばバンク・オブ・アメリカ、巨大石油企業のシェブロンやエクソンモービルなどが含まれているそうなので、それだけでも内容は推測できる。国を巨大多国籍企業に従属させる仕組みがTPPなのである。 今年、アメリカで成立した包括予算割当法の第735条は「モンサント保護条項」とも呼ばれている。遺伝子操作作物の作付けを規制、あるいはブレーキをかけることを禁止しているのだ。TPPでは、この条項が標準になると考えるべきだろう。 1980年代から加速度的に広がった「新自由主義経済」は強者総取りの仕組みで、富は一部に集中して大多数の人は貧困化、滞留した資金は投機市場に流れて金融が肥大化していく。この仕組みを作り上げる課程で、アメリカの政府や議会はグラス・スティーガル法(1933年銀行法)を廃止してしまった。投機の邪魔になるからだが、これを復活させることをTPPは拒否する。オフショア市場/タックス・ヘイブンに対する規制も無理になるだろう。 金融市場で行われていることは「転がし」にすぎず、市場への資金流入が細れば早晩、破綻する。そこで、庶民からカネを巻き上げて市場へ流し込む一方、カモを探す必要がある。1980年代にイトマンなど投機の素人企業が破綻したが、要するにカモになったのである。が、最近は破綻した企業を国が救済する。庶民のカネを渡すわけだ。すでに博打ではなく、喝上げの領域に入っている。 こうした金融の仕組みを問題視する人は増えているが、TPPは金融界に対する規制を許さない。低賃金で劣悪な労働条件で働かせたい企業としては、最低賃金の設定や労働環境の規制にも反発している。大きな事故が起こると殊勝なことを言うが、口先だけ。 生物にとって最も大事な「食」も巨大資本に支配されつつある。すでにアメリカでは家族経営の農家が潰されているが、日本でも同じことが行われようとしている。飲料水も企業が支配しようとしている。 公的な健康保険や年金はすでに日本の政治家や官僚は潰しにかかっている。社会保障システムが破壊されるだけでなく、労働条件、環境汚染、食糧の安全などに関する規制、あるいは健康保険や年金など社会保障の仕組みを各国政府が最終決定することはできなくなる。「著作権」を突破口にして、インターネットから自由を奪い、監視下に置こうとしている。 言うまでもなく、TPPのポイントはISDS(国家投資家紛争処理)条項である。民主主義を破壊する条項だとも言える。この仕組みを守るため、監視システムを強化し、武装警察を充実させ、軍事力を強化しようとしている。この仕組みに刃向かう人間、あるいは国が出てきたならば、力で押さえつける必要がある。 最初に新自由主義経済を取り入れた国、チリで行われたことを思い起こせば、TPPが何をもたらすかが推測できる。軍事クーデターの後、反対勢力を拘束、拷問、虐殺し、この経済システムを導入したのだ。排除すべきだと判断した勢力を攻撃するのは簡単。「テロリスト」というタグをつけるだけだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2013.07.23 14:48:40
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