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《櫻井ジャーナル》

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2015.04.04
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 イランが核兵器を開発していないことはアメリカの情報機関も12年以上前、イラクがアメリカの率いる軍隊に攻撃される前から認識していた。CIAはイランの「大量破壊兵器」について調査していたのだが、イラク同様、イランにもそうした種類の兵器は存在せず、開発計画もないと判断していたと言われている。

 今回、イランの核開発問題について、ロシア、中国、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカはイランと「枠組み」で合意したというが、こうした背景を考えると、真剣に話し合えば平和的に解決されることは明らかだった。問題は、ネオコン/シオニスト、イスラエル、サウジアラビアがイランを軍事的に破壊したがっていることにある。

 ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任して間もない頃、イランの「大量破壊兵器」について調べていたチームを率いていたと言われている人物はバレリー・ウィルソン(通称、バレリー・プレイム)。イランは核兵器を開発していないという結論の報告書を作成すると見られていた。

 その直前、2000年2月にCIAは核兵器の部品に関する改竄された設計図をイランへ渡していた。「マリーン」という暗号名のロシア人科学者を介してイランへ核弾頭の「欠陥青写真」を渡したのだ。

 イラン側が改竄部分に気づく可能性はあるわけで、イランが本当に核兵器の開発を進めていたなら、開発を促進することになった。つまり危険な工作。そこでCIAのオフィサーだったピーター・ジェンキンスは2003年に上院情報委員会に接触、この危険な工作について通報した。

 内部告発だが、その工作が2006年に出版されたジェームズ・ライゼンの著作『戦争国家』(日本版のタイトルは『戦争大統領』)の中に書かれている。裁判所は証拠を示すことなくスターリングが情報源だと認定し、機密情報を漏らしたとして有罪判決を言い渡した。

 イラクへの先制攻撃が始まった3カ月後、2003年6月12日にリチャード・チェイニー副大統領がルイス・スクーター・リビー副大統領首席補佐官に対し、バレリーがCIAの対核拡散部門で働いている事実を伝え、それを7月8日にリビーはニューヨーク・タイムズ紙のジュディス・ミラー記者にリークする。

 バレリーの夫、ジョセフ・ウィルソンは元駐ガボン大使で、CIAの以来でイラク政府がニジェールからイエローケーキ(ウラン精鉱)をイラクが購入するという情報の真偽を調査、そうした事実はないとCIAに報告していた。実は、この情報の証拠とされた文書は基礎的な事実関係を間違えている稚拙な代物で、IAEAも偽物だと見抜いた。

 この明らかな偽情報をジョージ・W・ブッシュ大統領は2003年の一般教書演説で事実として主張する。イラクを攻撃するために展開していたプロパガンダの一環だったが、世界的に嘘だということは認識されていた。その演説にショック受けたジョセフは7月6日付けのニューヨーク・タイムズ紙に署名記事を書き、事実を公表する。リビーのリークはその2日後。

 バレリーとCIAとの関係が明らかにされたのは7月14日のこと。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ロバート・ノバクの書いた記事の中で「ふたりの政府高官」から聞いた話として、バレリーがCIAで大量破壊兵器を担当していると暴露したのだ。

 アメリカ巨大資本の代弁紙であるウォール・ストリート・ジャーナル紙だけでなく、日本では「リベラル」に分類されているワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙を日本のマスコミを批判するために引き合いに出すのは滑稽だと言うことでもある。

 この当時、イギリスのトニー・ブレア政権もオバマ政権に協力して大量破壊兵器に関する偽情報を流していた。同政権は2002年9月に「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書、いわゆる「9月文書」を作成、その中でイラクは45分でそうした兵器を使用できると主張しているのだが、これはある大学院生の論文を無断引用したもので、内容もイラクの脅威を正当化するために改竄されていたことが後にわかる。

 この文書をBBCのアンドリュー・ギリガンは2003年5月29日のラジオ番組で内容が粉飾されていると語り、サンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。

 ギリガンが「45分話」の疑惑を語って間もなく、彼の情報源が国防省で生物兵器を担当しているデイビッド・ケリーだということがリークされ、そのケリーは同年7月15日に外務特別委員会へ呼び出され、17日に「自殺」している。

 その後、執行役員会会長とBBC会長が辞任し、ギリガンもBBCを離れた。これを切っ掛けにしてBBCは政府(ネオコン)のプロパガンダ機関化が急速に進み、今では「戦意高揚」のため、アメリカの有力メディアと同じように、平然と偽情報を流している。NHKと同じことが起こっているわけだ。つまり、NHKを批判するためにBBCを持ち出すのは根本的に間違っているということ。

 今回の合意でイランが核兵器を開発しているという主張は崩れた。もともと「砂上の楼閣」だったわけで当然なのだが、イランからの核攻撃を口実にNATOがロシアとの国境近くに配備してきたミサイルが撤去されることはなさそうだ。

 もっとも、この口実を信じるような「お人好し」は少ないだろう。フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文でも主張されていたが、ネオコンなどアメリカの好戦派はロシアと中国の長距離核兵器を第1撃で破壊できると信じ、「戦略」を立ててきた。

 シーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いたレポートによると、この論文が出た頃、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国は、シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始していた。中東での軍事侵略はロシア攻撃とリンクしていると見るべきだろう。アメリカ/NATOのミサイル防衛とは、ロシアを先制攻撃、第1撃で破壊しそこなったミサイルなどで反撃された場合への備え。イランの情勢には関係ない。日本のミサイル防衛も目的は同じで、攻撃的なものだ。





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最終更新日  2015.04.04 19:22:59



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