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《櫻井ジャーナル》

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2015.06.19
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 安倍晋三政権が言うところの「後方支援」は「兵站」であり、その兵站を軽視していた日本軍が戦場で盗賊と化し、第2次世界大戦の終盤に兵士を餓死させることになったことは少なからぬ人が指摘している。兵站は戦争の帰趨を決する重要な要素のひとつであり、敵の兵站線を潰すことは戦争の基本だ。自衛隊がアメリカ軍の兵站を担当するなら、当然、敵から激しい攻撃を受ける。

 この常識を西側の政府もメディアも中東におこる戦闘では無視してきた。IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)も兵器や弾薬だけでなく、食糧がなければ戦闘を継続することはできない。つまり、ISに勝ちたいなら、まず彼らの兵站を叩かなければならない。兵站を叩かないということは、ISを倒す気がないということだ。

 ベトナム戦争でアメリカ軍はカンボジアやラオスを「秘密爆撃」したが、これも兵站線(ホー・チミン・ルート)を断つため。1969年3月から70年5月にかけて、アメリカ軍は戦闘状態にないはずのカンボジアを3600回から3900回にわたって空爆、60万人を殺したと言われている。この爆撃による病死者や餓死者は100万人とも200万人とも推計されている。なお、このアメリカ軍による攻撃で台頭してくるクメール・ルージュ(ポル・ポト派)が1975年4月から78年にかけて処刑した人の数は7万5000名から15万名と言われている。また、後にアメリカはベトナムに対抗するため、クメール・ルージュと手を組んでいる。カンボジアやラオスに対する攻撃が許されるかどうかはともかく、アメリカも兵站の重要性を認識していたことは確かだ。

 以前にも書いたが、トルコからシリアへ武器や戦闘員だけでなく、食糧や衣類などの物資がトラックで運び込まれ、その大半の行き先はISだと見られているとドイツのメディアDWは昨年11月に伝えている。イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキもISをペルシャ湾岸産油国が支援していると主張していた。

 この兵站線をシリア軍は叩こうとしているが、思うようにはいっていない。トルコ軍に守れているからだ。例えば、昨年3月23日にトルコ軍のF-16戦闘機がシリア軍のミグ23を撃墜したのだが、シリア政府によると、シリアの戦闘機は反政府軍を攻撃中だった。

 トルコが反シリア軍に拠点を提供していることは早い段階から知られている。2011年3月にシリアで戦闘が激しくなった頃から、トルコにある米空軍インシルリク基地で反シリア政府軍は軍事訓練を受けていた。教官はアメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員。そこやヨルダンからシリアへ侵攻、支配地域を広げてきた。イギリス、アメリカ、フランス、カタール、ヨルダン、トルコも特殊部隊をシリア領内で活動させていると疑われている。

 この反シリア政府軍はFSAと呼ばれてきたが、あたかもシリア国内の反乱軍が存在するかのように装うため、西側がつけたタグにすぎない。2012年8月にアメリカの軍事情報機関、DIAが作成した文書によると、反シリア政府軍はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI。

 AQIは2004年に組織されたアル・カイダ系の武装集団で、2006年にISI(イラクのイスラム国)が編成された際には中核になった。今ではISと呼ばれている。DIAによると、AQIは当初から反シリア政府軍の支援を受け、戦闘員の訓練もそこで行われ、訓練終了後にイラクへ送り込まれていたという。

 また、FSAの幹部、アブデル・ジャバール・アル・オカイディによると、FSAの約10%はアル・カイダ系のアル・ヌスラ。DIA文書によると、アル・ヌスラはAQIがシリアで活動するときに使っていた名前にすぎず、アル・ヌスラはISと同一組織ということになる。FSAがISと連携している可能性はきわめて高い。

 イスラエルが反シリア政府軍を支援するため、シリアを何度も空爆していることも知られている。今年1月18日にはISを追い詰めていたシリア政府軍とヒズボラの部隊を攻撃、イラン革命防衛隊のモハメド・アラーダディ将軍を含む幹部を殺している。

 2013年9月には、退任間近の駐米イスラエル大使、マイケル・オーレンが公然とシリアのバシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている。イスラエルはアル・カイダやIS、つまりサラフ主義者/ワッハーブ派を中心に集めた戦闘集団との関係を隠していない。

 アメリカを中心とする「有志連合」がISを攻撃すると称し、初めてシリア領内で空爆したのは昨年9月のことだが、そのときに破壊されたビルは15から20日前の段階で蛻の殻だったとCNNのアーワ・デイモンは翌朝の放送で伝えている。その後、「ミス」でアメリカは物資をISへ供給、今月13日にはイラク西部でISと戦っている部隊の駐屯している基地を攻撃したと伝えられている。

 イラクの首相だったヌーリ・アル・マリキは今年3月、サウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供しているとして両国を批判し、ロシアに接近、アメリカ軍の永続的な駐留やアメリカ兵の不逮捕特権を認めなかったこともあり、選挙で勝利したにもかかわらず首相には指名されなかった。ISがファルージャやモスルを制圧して新たな「テロリスト」として売り出したのは昨年6月のことだ。アメリカはイラクへ部隊を増派したようだが、これはIS対策なのか、あるいはイラク政府のロシア接近を押さえるためなのか、それはわからない。





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最終更新日  2015.06.19 21:04:44



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