カテゴリ:カテゴリ未分類
アメリカの軍事情報機関、DIAは2012年8月に作成した文書の中で、シリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)であり、反シリア政府軍を西側(アメリカ/NATO)、湾岸諸国、そしてトルコが支援しているとしている。文書が作成されたときにDIA局長だったマイケル・フリン中将は文書が本物だと認めた上で、そうした勢力をアメリカ政府が支援してきたのは政府の決定だと語った。
サラフ主義はサラフ(イスラム初期の時代)を理想として掲げるイスラム改革運動で、その中にサウジアラビアの国教であるワッハーブ主義も含まれているが、今のサラフ主義者がイスラムの教えに従っているとは思えず、殺戮と破壊を好む何か別のカルト集団のようにしか見えない。 ムスリム同胞団は歴史的にイギリスとの関係があり、AQIは2004年に組織された武装集団。2003年にアメリカを中心とする軍がイラクへ軍事侵攻し、アル・カイダ系武装集団を弾圧していたフセイン体制を倒したことが影響しているのだろう。2006年にAQIが中心になってISIが編成され、今ではISと呼ばれている。シリアではアル・ヌスラというアル・カイダ系の武装集団が存在しているが、この名称はAQIがシリアで活動するときに使っていたとDIAは書いている。 シリアで武装勢力が反政府戦争を始めたのは2011年3月のことだが、その前の月にリビアでも同じことが引き起こされている。民主化運動への弾圧だと西側の政府、メディア、あるいは「人権擁護団体」は宣伝していたが、2013年にハーバード・ケネディ・スクールの科学国際問題ベルファー・センターが公表した報告書ではアメリカ政府の主張を間違いだと断定している。リビアで蜂起したのは武装勢力であり、ムアンマル・アル・カダフィ政権は反撃しただけだということだ。これは国連や「人権擁護団第」も認めている。 2011年3月にNATOはリビアを空爆しはじめるが、NATOと連携して地上で戦っていた部隊の主力、LIFGは自他とも認めるアル・カイダ系の武装集団。この年の10月にカダフィが惨殺された直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた(その1、その2)のは象徴的だ。西側の支配層がテロの象徴として使っていたアル・カイダと西側は連合していたことが明白になったのである。その後、戦闘員は武器と一緒にシリアなどへ移動する。 反政府軍が増強されたシリアでは2012年5月にホムスのホウラ地区で住民が虐殺され、西側はシリア政府に責任があると宣伝するが、すぐに嘘だと発覚する。ロシアのジャーナリストだけでなく、ローマ教皇庁の通信社やドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙も反政府軍が実行したと伝えたのだ。 現地を調査した東方カトリックの修道院長は反政府軍のサラフ主義者や外国人傭兵が実行したと報告、「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている。」と語った。また、現地で宗教活動を続けてきたキリスト教の聖職者であるマザー・アグネス・マリアムも外国からの干渉が事態を悪化させていると批判している。つまり、西側の政府やメディアが真実を語らないため、シリアは戦乱で多くの人びとが殺され、社会が破壊されていると言っているのだが、これは事実だ。 2013年3月にシリア政府はアレッポの近くで化学兵器が使用されたとして調査を求める声明を出したが、8月になると、西側の政府やメディアはダマスカスの近くでシリア政府軍がサリンが使ったと主張、シリアを攻撃すべきだと叫び始める。 この主張は早い段階からロシア政府が否定、国連へ報告書を提出しているが、その際に反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事が伝えられ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。 こうしたことは本ブログで書いてきたことだが、今でも知らない振りをしている人が少なくない。「民主化」の弾圧、虐殺を阻止するため、「人道」的な見地から軍事介入するべきだと主張する勢力がアメリカには存在しているが、実態は単なる軍事侵略。破壊と殺戮の主犯は「民主」や「人道」を掲げているアメリカ人たちだ。 安倍晋三政権が実現しようとしている集団的自衛権とは、こうしたアメリカの侵略に荷担するために仕組み。「人道」という嘘で始めたユーゴスラビアへの先制攻撃、大量破壊兵器という嘘で始めたイラク侵略、民主化弾圧という嘘で始めたリビアやシリアに対する攻撃、ウクライナでのネオ・ナチを使ったクーデターを直視しようとしない人びとが本気で集団的自衛権に危機感を持っているとは思えない。アメリカ政府も認めている大量破壊兵器の嘘は別として、そのほかのケースではアメリカの宣伝を丸呑みしているのが日本のメディア、「リベラル派」、「革新勢力」だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.08.08 15:37:20
|