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《櫻井ジャーナル》

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2015.08.20
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 5月20日、朝鮮半島の軍事境界線付近で砲撃戦があったようだ。現地時間で午後3時52分に朝鮮軍が韓国軍が設置しているプロパガンダ用のラウドスピーカーを砲撃、韓国軍が報復として155ミリ砲を撃ち返したとされている。砲撃戦の前、韓国側は11年ぶりにラウドスピーカーを使ったプロパガンダを再開すると表明、それに朝鮮側は反発し、ラウドスピーカーを撤去するように要求していた。また、17日からアメリカ軍と韓国軍の合同軍事演習が始まっているが、その中止も求めていた。

 今回の砲撃もベースにはネオコン/シオニストが描く世界制覇プランがある。そうしたプランが作成された背景にはソ連の消滅があるのだが、その当時、アメリカ政府の国防総省はネオコンに押さえられていた。大統領はジョージ・H・W・ブッシュで、国防長官はリチャード・チェイニー、次官はポール・ウォルフォウィッツだ。

 そのネオコンが1992年に作成したDPG(国防計画指針)の草案、いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンはアメリカが「唯一の超大国」なったという前提で、ソ連のようなライバルが出現することを防ぐため、潜在的なライバルを潰していく意思を示している。ソ連の消滅、冷戦の終結で世界が平和になると思った人がいるとするならば、それはアメリカ支配層の本質を知らず、歴史を学んでいなかったということだ。世界支配を妨害していたソ連が消えたことでアメリカの支配層は世界制覇に向かって暴走をはじめた。

 この指針は国防総省のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めてきたアンドリュー・マーシャルの戦略をベースにして、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官、I・ルイス・リビー、ザルメイ・ハリルザドといったネオコンが書き上げたもの。マーシャルはONAが創設された1973年から今年1月まで室長を務めた親イスラエル派で、冷戦時代はソ連の脅威を誇張して発信、ソ連消滅後は中国脅威論を叫んでいた。

 マーシャルが退任した後、後任は彼の弟子ではなく空軍のジェームズ・ベーカー退役大佐が選ばれている。つまりONAのプロパガンダ色は薄くなったのだが、その一方で国防長官は戦争に消極的なチャック・ヘーゲルから好戦的なアシュトン・カーターへ交代、5月には次の統合参謀本部議長としてバラク・オバマ大統領は、ロシアをアメリカにとって最大の脅威だと主張しているジョセフ・ダンフォード海兵隊大将を指名した。カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張した人物だ。

 ウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成された後、アメリカは日本もアメリカの戦争マシーンへ組み込もうとする。その始まりが1995年に発表された「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」。その後の展開は何度も書いてきたので、今回は割愛する。

 そして1998年、アメリカでは金正日体制を倒し、朝鮮を消滅させて韓国が主導する新たな国を建設することを目的とした作戦、OPLAN 5027-98が作られた。この年の8月、朝鮮は太平洋に向かって「ロケット」を発射、翌年の3月には海上自衛隊が能登半島の沖で「不審船」に対し、規定に違反して「海上警備行動」を実行している。

 日本で「周辺事態法」が成立した1999年になると、金体制が崩壊、あるいは第2次朝鮮戦争が勃発した場合に備える目的でCONPLAN 5029が検討され始めた。日本は朝鮮戦争に備えるためにアメリカ軍が日本や太平洋地域に駐留することを認めたという。なお、この5029は2005年にOPLAN(作戦計画)へ格上げされた。このほか、朝鮮への核攻撃を想定したCONPLAN 8022も存在している。朝鮮占領の準備が着々と整えられ、あわよくば中国を支配しようとしているようにも見える。

 2003年3月、アメリカ軍がイギリス軍などを引き連れてイラクを先制攻撃した頃に空母カール・ビンソンを含む艦隊が朝鮮半島の近くに派遣され、また6機のF117が韓国に移動し、グアムには24機のB1爆撃機とB52爆撃機が待機するという緊迫した状況になった。

 こうした動きを韓国の盧武鉉やアメリカ支配層の一部がブレーキをかけるのだが、その盧大統領は2004年3月から5月にかけて大統領としての権限が停止になり、08年2月には収賄容疑で辞任に追い込まれた。次の大統領は軍需産業と結びついている李明博だ。

 李政権時代の2009年10月に朝鮮は韓国に対し、韓国軍の艦艇が1日に10回も領海を侵犯していると抗議、11月には韓国海軍の艦艇と朝鮮の警備艇が交戦し、10年3月には、韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域で韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没する。

 2010年5月頃から韓国政府は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始め、11月に韓国軍は領海問題で揉めている地域において軍事演習を実施、朝鮮軍の大延坪島を砲撃につながった。そして12月にKORUS FTA(自由貿易協定)の締結が合意された。

 2010年11月にWikiLeaksが公表した2009年7月付けの文書によると、韓国の玄仁沢統一相はカート・キャンベル米国務次官(当時)と会談、朝鮮の金正日総書記の健康状態や後継者問題などについて説明している。

 金総書記の健康は徐々に悪化、余命はあと3年から5年だと低いとしたうえで、息子の金正恩への継承が急ピッチで進んでいると分析していた。確かに金総書記の健康状態は悪かったようで、2011年8月に死亡している。

 この会談で玄統一相は朝鮮が11月に話し合いへ復帰すると見通していたのだが、実際は10月に韓国の艦艇が1日に10回も領海を侵犯、11月に両国は交戦、話し合いどころではなくなった。玄統一相の分析が正しいなら朝鮮が自ら軍事的な行動に出る可能性は小さく、同相もそうした流れを望んでいるように読めるのだが、そうした流れを止めるようなことを韓国軍はしている。

 以前にも書いたことだが、現在の朝鮮政府は軍事的な緊張を高めたくはない環境の中にある。天然ガスを韓国へ送るパイプライン、資源の開発、あるいは鉄道の建設を考えているロシアは2年ほど前から朝鮮に接近し、朝鮮がロシアに負っている債務の90%(約100億ドル)を帳消しにし、10億ドルの投資をするとロシア政府は提案しているのだ。朝鮮がこの提案に合意すれば、韓国にとっても利益になる。つまり、アメリカの好戦派にとっては許しがたい事態だ。

 その好戦派は安倍晋三政権に対し、「安全保障関連法案」を成立させ、集団的自衛権を行使できるようにしろと命令しているはずだが、日程通りには進んでいない。沖縄の問題も迷走し始めている。「今、日本には危機が迫っている」というイメージはアメリカの好戦やは安倍政権にとってはありがたいはず。

 アメリカと中国との経済的な関係から、アメリカが中国と軍事衝突するはずはないと高をくくっている人もいるようだが、マーシャルと同じようにアメリカの戦略に大きな影響力を持っていたフリッツ・クレーマーは内政より外交を優先、外交の本質は政治的な強さと軍事力だとし、経済面は軽視していた。これはネオコンのメンタリティーだ。相手を屈服させれば問題ないということなのだろう。





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最終更新日  2015.08.21 20:00:21



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