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ジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長が10月20日にイラクへ乗り込み、イラク政府からロシアへ支援要請をしないという言質をとったようだ。シリアでロシアが行っている空爆はIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)やアル・カイダ系武装集団に対して大きなダメージを与えているが、それを見て今月初め、イラクのハイデル・アル・アバディ首相は同国もロシアに空爆を頼みたいという意思を見せていた。そうした動きを止めるため、ダンフォードは恫喝したのだろう。
ヌーリ・アル・マリキも首相時代、アメリカやその同盟国に批判的な姿勢を見せ、サウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると2014年3月に両国を批判している。 ISがモスルを制圧したのは6月の初めだが、その際、アメリカは傍観していた。スパイ衛星、偵察機、通信傍受、地上の情報網などで動きはつかんでいたはずだが、反応していない。しかも、武装集団がトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレードするのを許した。なお、この小型トラックはアメリカの国務省がシリアの反政府勢力へ提供した43台の一部だという。 この出来事に限らず、アメリカ政府はISやアル・カイダ系武装集団との戦闘に消極的。そこでマリキ政権は不満を抱き、ロシアへ接近している。マリキによると、反政府軍を押さえ込むため、2011年にアメリカ政府に対してF-16戦闘機を供給するように要請、契約もしていたのだが、搬入されなかった。しびれを切らしたマリキ政権はロシアに戦闘機の提供を求め、昨年6月下旬に中古ながら5機のSu-25近接航空支援機がイラクへ運び込まれている。 ISが攻勢を掛ける2カ月前、イラクでは選挙が行われ、アル・マリキを支える「法治国家連合」が第1勢力になり、全328議席のうち92議席を獲得した。ムクタダ・サドルが率いる勢力の34議席とイラク・イスラム革命最高評議会の31議席を加えたシーア派連合は157議席に達し、スンニ派連合の59議席、クルド連合の55議席を大幅に上回る。本来ならマリキが次期首相に指名されるはずだが、アメリカ政府の意向を受けて大統領は指名を拒否している。 本ブログでは何度も書いてきたが、ISの歴史をさかのぼると1979年7月に始まったアメリカの秘密工作に行き着く。当時のアメリカ大統領はジミー・カーターだが、その補佐官を務めていたズビグネフ・ブレジンスキーのプランに基づくもので、ソ連を刺激して軍隊をアフガニスタンへ誘い込み、そこでイスラム武装勢力と戦わせるという内容だった。そのため、アメリカの情報機関は戦闘員を集め、地対空ミサイルを含む武器を与え、訓練している。ソ連の機甲部隊は1979年12月にアフガニスタンへ軍事侵攻した。 1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックが指摘しているが、こうした訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルがアル・カイダ。アラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳としても使われている。 アフガニスタンへソ連軍が侵攻した当時からアメリカはサウジアラビアやイスラエルと手を組んでいるが、この同盟はその後も続き、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2007年3月5日付けニューヨーカー誌で、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始した書いている。 その中でサウジアラビアと緊密な関係にあると指摘されているのがムスリム同胞団とサラフ主義者。工作の実行部隊ということになる。WikiLeaksが公表した文書によると、2006年にアメリカ政府はサウジアラビアやエジプトと手を組み、宗派対立を煽ってシリアを不安定化させる工作を始めたとされている。 イスラエルはシリアでISやアル・カイダ系武装集団を守るために空爆を繰り返してきたことも本ブログでは何度も書いてきたが、イラクでISの部隊に参加、指揮していたイスラエル軍のユシ・オウレン・シャハク大佐(准将とも報道された)が拘束されたとも伝えられている。 イラクでもアメリカに対する反発が支配層にも広がっている中、ISとイスラエルとの関係を再確認させる出来事が起こったとするならば、中東でアメリカを拒否する雰囲気はさらに強まるだろう。アメリカ軍トップの脅しが効果を持つ期間は長くないだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.10.23 01:36:52
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