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《櫻井ジャーナル》

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2015.11.04
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 燃料タンクか爆弾が爆発してロシアの旅客機A321は墜落したことを示す衛星写真があるという。航空機が離陸したシャルム・エル・シェイク空港があるシナイ半島の南端はエジプトの領土。周辺にはサウジアラビア、ヨルダン、そしてイスラエルがある。爆発物が仕掛けられたとするならばその空港だった可能性が高く、どこかの国の情報機関が関与したことが疑われる。破壊活動を実行するにしろ、防ぐにしろ、今回の場合、エジプトの情報機関に人びとの目が向くのは当然だろう。

 しかし、エジプトの情報機関であるEGIS(エジプト総合情報局)はイスラエルやサウジアラビアと関係が深く、そうした国の影響下にあるという。例えば、ホスニ・ムバラク大統領が排除された際、後継者として名前の挙がったオマール・スレイマン副大統領は1993年から2011年にかけてEGISの長官だった人物だが、アメリカで特殊部隊の訓練を受けた経験があり、WikiLeaksが公表した文書によると、イスラエルとも緊密な関係にあった。(例えば、ココココ)こうした関係がムバラク後に消えたとは思えない。

 今回、旅客機を爆破したのではと疑われているサウジアラビアもアメリカやイスラエルと関係が深い。その象徴的な人物がバンダル・ビン・スルタン王子。1983年10月から2005年9月まで駐米大使を、12年7月から14年4月まで総合情報庁長官を務め、ブッシュ家と緊密な関係にあることから「バンダル・ブッシュ」とも呼ばれている。駐米大使に就任する前から国王の特使としてアメリカで活動していた。

 アメリカの情報機関はジミー・カーター政権下、1979年にアフガニスタンで秘密工作を開始するが、その黒幕は大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーだ。カーターはブレジンスキーとデイビッド・ロックフェラーによって見いだされた人物で、少なくとも外交や軍事はブレジンスキーが政策の中心にいた。

 ブレジンスキーは「危機の弧」という概念を使ってソ連の脅威を煽っていたが、その考え方の源流は、1904年に「ハートランド理論」を唱えたハルフォード・マッキンダー。彼は世界を三つに分け、ヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」を第1、イギリスや日本のような「沖合諸島」を第2、そして南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」を第3に分け、「世界島」を「ハートランド」と呼び、世界制覇の核心だと考えていた。そのハートランドとはロシアと重なる。

heartland

 広大な領土、豊富な天然資源、そして多くの人口を抱えるロシアを締め上げるため、西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」を、その外側に「外部三日月地帯」をマッキンダーは想定しているが、この考え方はブレジンスキーが主張した「危機の弧」と重なる。

 現在、アメリカの好戦派はベトナム、フィリピン、日本を軸にして中国に軍事的な圧力を加えようとしているが、これは「内部三日月帯」の一部で、この枢軸に韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしているのも必然であり、こうした戦略が日韓対話の再開された背景。こうした戦略に安倍晋三政権は日本を引きずり込んだわけだ。

 こうしたブレジンスキーの戦略に基づいてCIAは1979年4月にイスラム武装勢力の編成と支援プロジェクトを開始(Alfred W. McCoy, “The Politics Of Heroin”, Lawrence Hill Books, 1991)、7月にカーター大統領はアフガニスタンの武装勢力に対する秘密支援を承認した。そして12月にソ連軍をアフガニスタンへ引きずり込むことに成功した。

 後にフランスのヌーベル・オプセルヴァトゥール誌からブレジンスキーはインタビューを受け、ソ連を挑発するために実行した秘密工作について質問され、戦争を始めたことに後悔はないかと聞かれた。それに対してブレジンスキーは後悔していないと答え、「秘密工作はすばらしいアイデアだった」とも語っている。(Le Nouvel Observateur, January 15-21, 1998)

 このブレジンスキーの秘密工作にはパキスタン、サウジアラビア、そしてイスラエルが協力した。その後、パキスタンとの関係は微妙になるが、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いた記事によると、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3カ国はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したという。この工作の中心にはアメリカのリチャード・チェイニー副大統領やエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官のほか、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタンもいたとされている。

 こうした工作の前に立ちはだかったのがロシアのウラジミル・プーチン大統領。そこでバンダルは2013年7月末にロシアを極秘訪問、ロシア政府の首脳に対し、シリアからロシアが手を引けば、ソチで開催が予定されている冬期オリンピックをチェチェンの武装グループの襲撃計画を止めさせる、つまり手を引かないと襲撃させると脅したという。これを聞いたプーチンは激怒、バンダル配下の武装勢力を掃討する作戦を展開したと伝えられている。

 そして10月にバンダルはイスラエルを訪問、その直後からウクライナの首都キエフでは反政府の抗議活動が始まる。その背後にアメリカ政府が存在していたことは本ブログでも繰り返し、指摘してきた。

 その後、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルなどの支配層はEUや日本を巻き込んでロシアを刺激してきたが、プーチンは挑発に乗らない。メディアを使ったプロパガンダも続けているが、ロシアが挑発に乗らないために西側メディアが偽情報を発信していることを多くの人びとが知るようになり、信頼度は低下している。

 マッキンダーを生んだイギリスでは1891年に一握りのエリートが「選民秘密協会」を創設、世界制覇に乗り出している。発案者は南アフリカで巨万の富を築いたセシル・ルーズで、ナサニエル・ロスチャイルド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)、ウィリアム・ステッド、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)、ミルナー卿(アルフレッド・ミルナー)がメンバーになっている。彼らの考え方のベースにはアングロ・サクソンの優越性がある。つまり、彼らは人種差別主義者だ。

 当時、このグループはロシア支配を狙うと同時に、急成長していたドイツを警戒していた。その対策として国外の兵力を倍増させる必要があると判断、そこで目を付けられたのが日本。そして1902年に日英同盟が締結され、日本の海軍や重工業の育成を支援、04年に日露戦争が始まる。その際、戦費としてロスチャイルド系のクーン・ローブが日本に対して約2億ドルを融資、この取り引きを機に同銀行のジェイコブ・シフは日銀副総裁だった高橋是清と親しくなっている。

 その後、関東大震災で資金調達に協力したウォール街のJPモルガンが日本に大きな影響力を持つようになる。このJPモルガンと最も緊密な関係にあったのが井上準之助で、アングロ・サクソン系の巨大金融資本仲間という点でクーン・ローブとつながっている。

 アメリカの金融資本は通貨の発行権を政府から奪うため、1910年11月22日にジキル島クラブで秘密会議を開いているが、そこにはクーン・ローブとJPモルガンの代理人も参加していた。そして1913年12月23日、連邦準備法を成立して連邦準備制度ができあがる。

 中東/北アフリカやウクライナでの戦乱は、こうした時代からの世界制覇プロジェクトが背景にある。「戦後レジーム」を攻撃している安倍首相がアメリカの好戦派に従属している理由も根は同じだ。

 ところで、この安倍首相が地盤にしている山口県はかつて長州藩と呼ばれていた。この藩主は幕末、1863年にトーマス・グラバーの協力で、ジャーディン・マセソン商会の船を利用して5名の若者、つまり井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)をイギリスへ送り出している。勿論、物見遊山が目的ではないだろう。






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最終更新日  2015.11.04 18:39:32



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