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《櫻井ジャーナル》

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2015.11.27
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 トルコ政府が独自の判断でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜できるとは考え難く、少なくともアメリカ支配層の一部が承認、あるいは命令して実行された可能性が高い。ジョン・マケイン米上院議員らがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に対し、国防総省はバラク・オバマ大統領と対決する用意ができていて、これを知っているロシアはシリアから手を引くと伝えたとする情報がアメリカから流れているのだが、これが事実なら、トルコ政府は騙されたと言えるかもしれない。

 今回のロシア軍機撃墜は事前に計画されていた可能性が高いが、アメリカの支配層がトルコ軍にそうしたことをさせるメリットは何だろうか?

 現在、アメリカの戦略は1992年の初めに国防総省のネオコン/シオニストが作成したDPGの草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づいている。1991年12月にソ連が消滅、ロシアを属国化することに成功、中国支配層は買収済みという前提で書き上げられたもので、旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰すと同時に、ライバルを生む出しかねない膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようという計画だ。

 フランス国王ルイ11世は「分割して支配せよ」と言ったそうだが、イギリスやアメリカの支配層もこの教えを守っている。潜在的なライバルが本当のライバルに成長することを防ぐため、当然、ロシアとEU、あるいは日本と中国が手を組むことをアメリカの支配層は警戒しているはずだ。

 ロシアとEUを結びつける最大の要因は石油や天然ガス。バルチック海からドイツへつながる「ノード・ストリーム」、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへ通じる「ヤマル-ヨーロッパ」、ウクライナを通過する「ウレンゴイ-ウズゴロド」、アメリカ政府の圧力でブルガリア政府が建設許可を出さずに挫折した「サウス・ストリーム」、それに替わるパイプラインとして考えられた「トルコ・ストリーム」、やはりトルコへ運ばれていた「ブルー・ストリーム」がある。これからも機能しそうなのはノード・ストリームくらいだろうが、これも破壊活動の対象になっている。ロシアとトルコの接近を阻止することはアメリカ支配層にとって重要なテーマだった。

 シリアが安定しないかぎり、ペルシャ湾岸産油国の石油や天然ガスはスエズ運河を経由してタンカーで運ぶか、ヨルダンとイスラエルを横切るパイプラインで地中海へ運ぶしかないだろう。アメリカのシェール・ガス/オイルは信頼できない。将来的には、地中海の東部やゴラン高原の天然ガスや石油も考えられる。現在、イスラエルがパレスチナのガザ地区を攻撃を激化させている一因は地中海の資源、またアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)と手を組んでシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒して傀儡政権を樹立させようとしている一因はイスラエルが不法占拠を続けているゴラン高原の資源にある。

 ちなみに、ゴラン高原の資源開発に絡む利権をアメリカの会社、ジェニーが持っているようだが、その戦略顧問にはリチャード・チェイニー、ジェームズ・ウールジー、ウィリアム・リチャードソン、ジェイコブ・ロスチャイルド、ルパート・マードック、ラリー・サマーズ、マイケル・ステインハートなどが名を連ねている。

 イスラエルを建国したシオニストは今でも南はナイル川から北はユーフラテス川まで、西は地中海から東はヨルダン川まで(あるいはそれ以上の地域)を支配しようという「大イスラエル構想」を捨てていないようだが、これもエネルギー資源の支配という側面があるだろう。

 このイスラエルを出現させる上で重要な書簡がある。1919年にアーサー・バルフォア英外相の名義でウォルター・ロスチャイルド宛てに出された「バルフォア宣言」だ。この宣言を実際に書いたのはアルフレッド・ミルナーだというが、この3名はいずれもイギリスを動かしていた「選民秘密協会」の主要メンバー。

 この書簡が書かれる3年前、第1次世界大戦の最中にイギリスはフランスと「サイクス・ピコ協定」を結んだ。オスマン帝国を破壊して両国で分割しようという内容で、協定締結の直後にイギリス外務省アラブ局はアラブ人を扇動して反乱を起こさている。その部局にはトーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」も所属していた。この反乱工作の結果、サウジアラビアが建国される。イスラエルと同じように、サウジアラビアもイギリスの支配層が作り出したわけだ。

 トルコのエルドアン大統領を中心とする勢力は欧米諸国に破壊されたオスマン帝国の再生を夢想していると言われ、アル・カイダ系武装集団やISを使っている仲間、つまりネオコン、イギリス、フランス、イスラエル、サウジアラビア、カタール(エクソン・モービル)と利害が相反している側面がある。

 第1次世界大戦、サイクス・ピコ協定、バルフォア宣言などより前、1904年に発表されたのがハルフォード・マッキンダーの「ハートランド理論」。世界を三つに分けて考える理論で、第1にヨーロッパ、アジア、アフリカを「世界島」、第2にイギリスや日本などを「沖合諸島」、そして第3に南北アメリカやオーストラリアを「遠方諸島」と表現、広大な領土、豊富な天然資源、そして多くの人口を抱えるロシアを締め上げるため、西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」を、その外側に「外部三日月地帯」をマッキンダーは想定した。

 「世界島」の中心が「ハートランド」で、具体的にはロシア。そのロシアを支配することが最終目標だ。このロシアはすでに中国との関係を緊密化、アメリカとしてはロシアとEUとの関係は断ち切りたいだろう。そのためにもエネルギー資源の取り引きを壊したいはずである。

 ロシアとの核戦争で自分たちが破滅することを考慮しなければ、あるいはロシアに勝つためなら世界戦争も辞さないと考えているなら、トルコ軍機によるロシア軍機撃墜はアメリカ支配層の利益に叶っている。EUにとってロシアとの関係悪化はメリットがないのだが、そのEUは米英支配層に操られた人びとによって動かされてきた。エルドアン体制が続く限り、EUを取り巻く環境は悪化していきそうだ。





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最終更新日  2015.11.27 17:00:05



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