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《櫻井ジャーナル》

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2016.02.05
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 サウジアラビア国防省の広報担当は、同国の地上部隊をシリアへ派遣する用意があると表明した。「ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)と戦うため」だという条件をつけているが、この戦闘集団を生み出し、訓練し、武器/兵器を含む物資を供給している勢力の中にサウジアラビアも含まれている。意味のない条件であり、単に地上軍を派遣できるという宣伝。その直後、アメリカのアシュトン・カーター国防長官はサウジアラビアの表明を歓迎すると発言している。勿論、アメリカはダーイッシュを生み出し、訓練し、武器/兵器を含む物資を供給している勢力の中心的な存在。サウジアラビアに派兵の意思を宣言させたのはアメリカ政府だということだろう。

 このサウジアラビアでは現在、権力をめぐる争いが始まっていると言われている。すでにサルマン・アル・サウド国王は引退状態で、ホマメド・ビン・ナイェフ皇太子が国王代理として動いているのだが、国王は自分の息子であるホハマド・アル・サウド国防相に嗣がせたいと考えているようなのだ。規定では皇太子が優位なのだが、国防相は国王の息子というだけでなく、軍や国家警備隊を掌握しているという強みがある。

 こうした権力抗争の背景には原油価格の下落による財政の悪化がある。同国の2014年における財政赤字は390億ドル、15年には980億ドルへ膨らんだようだが、そうした状況に変化がなければ、同国の金融資産は5年以内に底をつくと予測されている。そうなるとドルを支えているペトロダラーの仕組みが崩壊、投機市場も収縮して金融パニックになる可能性があるだろう。

 相場引下げはロシアにダメージを与えるためにアメリカやサウジアラビアが仕掛けたと言われている。WTI原油の場合、2014年6月に1バーレルあたり110ドル近かった価格が年末までに大きく値下がりし、年明け直後に50ドルを切り、今年1月15日には30ドルを割り込んだ。今でも30ドルそこそこの水準だ。2014年9月11日にアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王が紅海の近くで会談した理由のひとつは相場下落の相談だったとも推測されている。

 1980年代にも原油価格は大幅に下落、それがソ連経済にダメージを与えたが、そうした「成功体験」がアメリカ支配層を動かしたとも見られている。21世紀に入ってアメリカを破綻へと導いているのは、こうした「成功体験」だ。

 ソ連消滅後、ボリス・エリツィン大統領の時代にアメリカはロシアの属国化に成功、その状態は未来永劫、続くと考えたようだが、ウラジミル・プーチンを中心とするグループがロシアの再独立に成功、状況は大きく変化する。アメリカ支配層の世界制覇プロジェクトは崩れ始め、それを立て直すため、「成功体験」に頼っているのだろう。

 アメリカにとっての「成功体験」はロシアにとっての「失敗体験」であり、ロシア側は対策を練っていた。「成功体験」をアメリカが再現しようとすれば、失敗する可能性が高いということだ。ロシア人蔑視がロシアの過小評価につながり、アメリカ支配層の打つ手は裏目に出て、自分たちの置かれた状況を悪くしているということも言える。

 現在、アメリカを動かしている好戦派は巻き返しのため、また昔の手法を使っている。リチャード・ニクソンは自分たちが望む方向へ世界を導くため、アメリカは何をしでかすかわからない国だと思わせようとした。いわゆる「凶人理論」だ。また、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように振る舞わなければならないと語ったが、その意味するところは同じだ。こうした「凶人理論」や「狂犬戦術」をバラク・オバマ政権も使い、妥協しないとアメリカ/NATOとの戦争になるとロシア政府を脅している。

 それに対し、ロシア側は戦争でアメリカ/NATOは勝てないことを悟らせようとしている。例えば、2014年4月にアメリカ軍はイージス駆逐艦のドナルド・クックを黒海へ入れてロシア側を威嚇しようとした際、ロシア軍は電子戦用の機器を搭載したスホイ24を米艦の近くへ飛ばし、イージス・システムを機能不全にしたと言われている。その直後にドナルド・クックはルーマニアへ緊急寄港、それ以降はロシアの領海にアメリカの艦船は近づかなくなった。

 ロシアが電子戦能力を示したと言われている出来事には2013年9月のミサイル墜落がある。この年の8月に西側の政府やメディアはシリア政府軍がサリンを使ったと大合唱、軍事介入の理由ができたとしていた。このサリン情報が嘘だったことは本ブログで何度も説明したので、今回は割愛する。

 イラクを先制攻撃する前と同じように西側は好戦的な雰囲気を作りだし、NATOによるシリア攻撃が迫っていると言われていた。そうした中、地中海の中央から東へ向かって2発のミサイルが発射されたのだが、これらは途中で海へ落下してしまう。ミサイル発射はロシアの早期警戒システムが探知、その事実はすぐに公表された。

 その後、イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射テストだと発表しているのだが、ジャミングなどの手段で落とされたのではないかと推測する人もいる。テストなら事前に周辺国へ通告しているはずだが、そうした事実はない。

 昨年9月30日にロシア軍はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュに対する空爆を始めたが、この攻撃でもロシア軍の高い能力が誇示された。カスピ海の艦船から巡航ミサイルで正確にシリアのターゲットへ命中させるということも示している。それまでアメリカ支配層がロシアにはない能力と考えていたものだ。

 内部告発支援グループのWikiLeaksによると、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がロシア軍機の撃墜を決めたのは10月10日。トルコ軍のF-16戦闘機が待ち伏せ攻撃でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜したのは昨年11月24日。(詳細は割愛する。)トルコのアンカラではトルコ軍幹部とポール・セルバ米統合参謀本部副議長が11月24日から25日にかけて会談していた。ロシア軍機撃墜の黒幕はアメリカの好戦派だったと考えるべきだろう。

 トルコはNATO加盟国であり、ロシア軍はNATOとの開戦を恐れて反撃できず、シリア北部での作戦遂行も諦めるとアメリカ側は考えていたとも言われている。その目論見通りになれば、シリア北部に「飛行禁止空域」ができ、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュは自由に活動できる。

 ところが、ロシアはミサイル巡洋艦のモスクワをシリアの海岸線近くへ移動させて防空体制を強化、さらに最新の防空システムS-400を配備し、約30機の戦闘機を「護衛」のために派遣してシリア北部の制空権を握ってしまった。さらに、アメリカが供給している対戦車ミサイルTOWに対抗するため、T-90戦車も送り込んだ。

 アメリカ、サウジアラビア、トルコ、イスラエルなどが傭兵として使ってきたアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュでシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すことが困難になり、侵略勢力は体勢を立て直さなければならなくなった。そこでスイスのジュネーブで和平交渉が始まるが、国連/アメリカは交渉を中断させた。

 和平交渉が始まる直前、1月23日にジョー・バイデン米副大統領はトルコを訪問、シリアで続いている戦闘を軍事的に解決する用意があると語っている。アメリカの好戦派は話し合いが大嫌いで、2014年にはウクライナの混乱を話し合いで解決しようとしていたEUに対し、アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補は「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている

 サウジアラビア国防省やアメリカ国防長官の話だけでなく、シリアとの国境近くでトルコ軍は戦争の準備をしているかのような動きを見せているようで、ロシア国防省はトルコがシリアへの軍事侵攻を準備していると疑っている。トルコはイラクへ軍事侵攻、拠点を建設している。

 また、シリアの北部では使われていなかった空軍基地の改修工事が行われているようである。情報会社のストラトフォーが公表した昨年12月28日に撮影されたという衛星写真には、700メートルの滑走路を1315メートルに延長する工事をしている様子が写っている。アメリカ軍は空軍基地の建設を否定、これが本当なら、特殊部隊が作戦遂行のために基地を建設している可能性がある。カーター国防長官は1月22日、陸軍第101空挺師団から1800名ほどをイラクのモスルやシリアのラッカへ派遣すると語ったが、すでにシリアではアメリカ海軍の特殊部隊SEALSを含む暗殺チームが活動中で、シリア入りしているイラン人やロシア人の殺害を目指しているという。

 アメリカの好戦派、サウジアラビア、トルコ、イスラエルは窮地に陥った。その窮地から脱出するため、全面核戦争の脅しをかけている。安倍晋三政権の狂気もこうした動きと無縁ではないだろう。





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最終更新日  2016.02.05 23:13:25



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