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《櫻井ジャーナル》

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2016.05.16
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 自分たちの手先が劣勢になると停戦を持ちかけ、その間に体勢を立て直そうとするのはアメリカの常套手段だが、シリアでもこの手口を使っている。シリアの場合、昨年9月30日にロシア軍が始めた空爆が効果的で、アメリカの好戦派が予想したよりも早くアレッポなどの要衝をシリア政府軍に押さえられてしまったが、それでも戦闘員を増派し、対戦車ミサイルTOWや携帯型防空システムMANPADを含む武器/兵器を急ピッチで供給している。

 つまり、アメリカの好戦派、サウジアラビア、トルコ、イスラエルなどはシリアでの戦闘を継続し、あくまでもバシャール・アル・アサド体制を倒して傀儡政権を樹立するつもりだ。ロシア軍を再び引っ張り出せば、アメリカの大統領選挙で好戦派が担いでいるヒラリー・クリントンの追い風になるという読みもあるかもしれない。

 2月19日付けシュピーゲル誌に掲載されたサウジアラビア外相へのインタビューでは、シリアの戦況を変えるため、地対空ミサイル、つまりMANPADを供給しはじめたと公言していた。また、昨年10月、BBCのフランク・ガードナーはTOW500基を反シリア政府軍へ提供したことをサウジアラビアの高官は認めたとツイッターに書き込んでいる。

 武器/兵器をアル・カイダ系の武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)に供給しているのはサウジアラビアだけでなく、アラブ首長国連邦やカタールの名前も挙がっている。ロシア軍の空爆で大きなダメージを受けたものの、シリアを侵略している武装勢力へトルコから延びている兵站線は今でも存在、シリアやイラクで盗掘した石油のトルコへの輸送も続いているようだ。

 トルコの野党議員、エレム・エルデムが入手した治安当局の盗聴テープによると、昨年9月22日から10月17日の間だけで戦闘員やその家族約1400名がトルコからシリアへ入ったと見られ、またダーイッシュの戦闘員は負傷するとトルコへ運び込まれ、治療されている。

 以前から盗掘石油の売りさばきにレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子が所有するBMZ社が重要な役割を果たし、ダーイッシュの負傷兵はトルコの情報機関MITが治療に協力、秘密裏に治療が行われている病院はエルドアン大統領の娘が監督しているとされていた。

 こうした軍事侵略をめぐる対立もあってか、トルコやサウジアラビアでは内部対立が激しくなっている。こうした侵略の黒幕であるアメリカの好戦派もかつてのような影響力はなくなった。

 そうした好戦派に担がれているヒラリー・クリントン当ての電子メールが公表され、アメリカがリビアを攻撃した理由は保有する金143トンと石油利権だったことを暗示するものが含まれていたが、それだけでなく、シドニー・ブルメンソールからクリントンへ送られた2013年2月16日付けのメールには、12年9月11日にベンガジの領事館が襲撃されてクリストファー・スティーブンス大使を含むアメリカ人4名が殺された事件に関する情報も含まれていた。

 リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が崩壊した後、リビア軍の倉庫から武器/兵器が持ち出されてトルコへ運ばれているが、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。つまり武器の輸送はCIAが黒幕だった。そうした事実をアメリカ国務省は黙認、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。

 ベンガジにはアメリカの領事館があるのだが、そこが2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺された。スティーブンスは戦闘が始まってから2カ月後の2011年4月に特使としてリビアへ入り、11月にリビアを離れるが、翌年の5月には大使として戻っていた。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている

 運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれていた。これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、介入する口実に使用としたと言われている。リビアで行ったようなことをしようとしたわけだが、スティーブンスの行動を見ると、彼はこうした工作を熟知していたと考えられる。彼が知っていたということは、上司の国務長官だったヒラリー・クリントンも報告を受けていたはずだ。

 2012年11月、デイビッド・ペトレイアスがCIA長官のポストを辞しているが、この人物はクリントンと緊密な関係にあることで有名。スティーブン大使から報告されるまでもなく、ベンガジでの工作をクリントンは知っていたと見るべきだ。ペトレイアスの辞任はペトレアスの伝記『オール・イン』を書いたポーラ・ブロードウェルとの浮気が原因だとされているが、これはカモフラージュだった可能性がある。

 トルコ経由でアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの手に渡った化学兵器はアレッポで使われているとする情報もある。2013年8月21日にダマスカスの近くで化学兵器が使用され、西側の政府やメディアはシリア政府軍の仕業だと主張、それを口実にしてNATOは軍事介入しようとした。

 西側の主張が間違いだということはすぐに指摘された。まず、攻撃の直後にロシアのビタリー・チュルキン国連大使はアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出、その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。

 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

 2013年8月の化学兵器使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。





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最終更新日  2016.05.17 00:03:33



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