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《櫻井ジャーナル》

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2016.07.02
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 今年の3月までSACEUR(NATO欧州連合軍最高司令官)を務めていたフィリップ・ブリードラブは好戦派として知られ、ロシアとの軍事的な緊張を高めるため、嘘をついてきた。退役後、6月にはフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)に論文を書き、その中でも「ロシアの脅威」を主張、軍事的な緊張を高めようとしている。そのブリードラブが2014年当時、バラク・オバマ大統領を戦争へと導くためにコリン・パウエル元国務長官やウェズリー・クラーク元SACEURを含む人びとに相談していたようだ。そのことを示す電子メールがハッキングされ、公表されたのだ。

 2014年2月22日にアメリカの支配層はウクライナでクーデターを成功させ、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除した年。ビクトリア・ヌランド国務次官補が2013年12月13日に米国ウクライナ基金の大会で行った講演によると、アメリカ政府は1991年からウクライナへ50億ドルを投入、この国をアメリカを拠点とする巨大資本がカネ儲けしやすい国に作り替え、ロシア制圧の橋頭堡にしようとしていた。

 このクーデターを指揮していたグループに属していたヌランドは遅くとも2月4日の段階で「次期政権」の人選をしている。ヌランドがジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使と電話でその件について話し合っている音声がこの日、インターネット上へアップロードされているが、その中で語られていた。

 言うまでもなく、ウクライナはロシアと同じように、1991年12月にソ連が消滅するまでソ連の一部を構成していた。歴史をさかのぼると、ウクライナの東部は帝政ロシアが、また西部はハプスブルク家が支配していた。宗教的には東部が東方正教会であるのに対して西部はカトリック。

 このクーデターでアメリカ支配層は、クリミアにあるロシア黒海艦隊の拠点、セバストポリを制圧する予定だったようだが、2014年3月16日にロシアの構成主体になることを問う住民投票がクリミアで実施され、95%以上が加盟に賛成している。そのときの投票率は80%を超えているので、棄権した人も含めても全住民の4分の3以上が賛成したわけだ。

 ウクライナの東部や南部はロシアとのつながりが強いが、クリミアは1954年にニキータ・フルシチョフが独断でクリミアへ編入した地域で、その住民がロシアへ復帰したいと考えるのは自然な感情だった。

 クリミアのロシア復帰は平和的に実現したが、西側の政府やメディアは「ロシア軍の侵略」を宣伝、それを真に受けた人も少なくない。クリミアにロシア軍がいたことは事実だが、これはソ連消滅後、1997年にロシアとウクライナとの間で結ばれた条約に基づいて駐留していただけ。この条約では基地の使用と2万5000名までの駐留がロシア軍に認められ、実際には1万6000名が駐留していた。このロシア軍を侵略軍と呼ぶなら、日本に駐留、特に沖縄に居座っているアメリカ軍は侵略軍と呼ばなければならない。

 当時、西側では南オセチアへジョージア(グルジア)が奇襲攻撃した際、反撃のために出て来たロシア軍の戦車を撮影した写真をロシア軍のウクライナ侵略を証明するものだと宣伝するなど、西側の好戦派は軍事介入する気満々だった。

 その好戦派にブリードラブも属していたのだが、オバマ大統領はロシアに対する軍事的な挑発には消極的。そうした中、ブリードラブから相談を受けたクラークは1997年7月から2000年5月にかけてのSACEUR。

 アメリカ支配層がNATO軍を使ってユーゴスラビアを先制攻撃したのは1999年3月。つまり、クラークがSACEURだった時だ。アメリカを戦争へと導いたのは1997年1月に国務長官となったマデリーン・オルブライトで、このオルブライトを国務長官にしたのがヒラリー・クリントンだということは本ブログで何度か指摘した。

 そのクラークはブリードラブに対してアドバイスしているが、その中に広告会社を雇って「情報戦争」、つまりプロパガンダを始めるように言っている。実際、クーデター後、ロシア軍が侵略しているという偽情報を流し、軍事的な緊張を高めようとする動きがあったが、この偽情報の流布は西側支配層に不信感を広めることになる。

 クーデターの前段階、ウクライナで反政府運動が過激化しているとき、EUのエリートはすでに戦乱を懸念して話し合いでの解決を図っていた。それが気に入らなかったヌランドはパイアットとの電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしたわけだ。

 先日、ドイツ外相のフランク-ヴァルター・シュタインマイアーはNATOに対し、戦争を煽っていると批判した。ブリードラブやヌランドの言動は常軌を逸し、ヨーロッパどころか人類を含む生物を絶滅させかねないと考えている人はシュタインマイアーだけでないはずだ。ブリードラブの電子メールがハッキングされ、公表された背景には、アメリカの好戦派に対する懸念の広がりがあるだろう。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を生み出し、育て、支援、利用してきたのはこの好戦派だが、この武装集団への懸念もある。





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最終更新日  2016.07.02 22:09:51



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