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《櫻井ジャーナル》

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2017.02.11
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ラリー・クリントンを担いでいた政治勢力や有力メディアは執拗にドナルド・トランプ政権を攻撃している。年が明けても沈静化しないのは珍しい。今回、選挙結果を操作すると懸念されていたのはクリントン陣営であり、難民問題を深刻化させる戦争に反対しているのはトランプの方だ。彼らがトランプ大統領を恐れているのはなぜなのか?

 ジョージ・W・ブッシュの勝利で決着がついた2000年の選挙では、キャンペーン期間中、有権者に関する怪しげなブラックリストが作られ、正体不明の「選挙監視員」が徘徊、投票妨害が報告され、投票機械やバタフライ型投票用紙など問題になった。投票数が出口調査と公式発表で大きな差が生じたことも疑惑を呼んだ。

 アメリカ以外の国でこうしたことが発覚したなら、西側メディアは選挙無効を主張するだろうが、そうしたことは起こらず、12月に連邦最高裁がブッシュ当選を確定する判決を出した。その後、選挙のコンピュータ化が進み、投票数の操作は容易になり、不正を見つけることは難しくなっている。そうしたこともあり、昨年の選挙では2015年の段階で支配層が次期大統領に内定していたクリントンの陣営が操作するのではないかと懸念する声が事前に出ていたのだ。

 しかし、執拗な攻撃が続いたこともないわけではない。例えば、1993年1月から2001年1月まで大統領を務めたビル・クリントンのケース。攻撃の口火を切ったのはニューヨーク・タイムズ紙だった。1992年3月のことである。

 この記事はジェームズ・マクドーガルなる人物の話に基づいていたとされているが、その直後にAPの記者に対し、マクドーガルは自分もビル・クリントンも違法行為はしていないと主張している。

 ところが、そのマクドーガルは後に証言内容を変更、クリントンに不利な証言をしはじめる。マクドーガルは心臓に深刻な病気を抱えていたことから、司法取引に応じて収監を回避しようとしたのではないかと見られている。もし収監されたなら鉄格子の中で一生を終える可能性が高かった。

 クリントンを攻撃する側がネタにしたのは不動産取引をめぐる「ホワイトウォーター疑惑」。この疑惑で検察側の切り札的な証人だったディビッド・ヘイルは架空融資容疑でFBIから家宅捜索を受けた人物で、捜索の直後に友人のアーカンソー州最高裁判事ジム・ジョンソンに連絡、ランディ・コールマンが弁護士としてついている。そこで持ち出された話がホワイトウォーター疑惑だった。この疑惑を調べるため、後に特別検察官が任命されている。

 この疑惑をメディアと連携して広めていた「市民連合」なる団体の中心にいた人物はロバート・ドール上院議員と近い関係にあった。(Trudy Lieberman, 'Churning Whitewater,' Columbia Journalism Review, May/June 1994)その反クリントン運動のスポンサーだったリチャード・メロン・スケイフはメロン財閥の中心的存在でCIAと緊密な関係にあった。

 特別検察官は4年間に4000万ドルをつぎ込んで捜査したものの、起訴につながるような証拠は出てこなかった。それだけでなく、1998年3月には検察側の有力証人だったヘイルが反クリントン運動を展開しているグループから多額の資金を受け取っていることが判明してしまう。この段階でホワイトウォーター疑惑によってクリントン大統領を起訴することは不可能になった。

 この疑惑と並行してセクハラ疑惑も浮上していた。元アーカンソー州職員のポーラ・ジョーンズがクリントン大統領のセクシャル・ハラスメントを訴えたのだ。1993年12月に「アメリカン・スペクテイター」という雑誌でデイビッド・ブロックがこの問題を取り上げると、有力メディアを巻き込んで大騒動に発展したのだが、このブロック自身が「エスクワイアー」の1998年4月号に「1993年の記事は間違い、あるいは誇張されていた」と謝罪する文章を書いている。なお、このアメリカン・スペクテイター誌はスケイフ系の雑誌である。

 最後に残ったのはモニカ・ルウィンスキーとの性的な関係の問題。リンダ・トリップなる女性が1997年10月、ルウィンスキーと電話で交わした会話を録音、公表したのだ。トリップにルウィンスキーとの会話を録音するように勧めたルチアーナ・ゴールドバーグは興味深い経歴の持ち主だ。共和党のリチャード・ニクソンと民主党のジョージ・マクガバンが争っていた1972年の大統領選挙で、ゴールドバーグはジャーナリストを装ってマクガバン陣営に接近、スパイしていたのである。当時、支配層は戦争に反対していたマクガバンの大統領就任を何が何でも阻止しようとしていた。

 その間、ネオコンなどアメリカの好戦派はユーゴスラビアを先制攻撃、解体しようと目論んでいた。その口実に使われたのが「人権」。例えば、1992年8月にボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたとニューズデーのボン支局長だったロイ・ガットマンはクロアチアのプロパガンダ団体の情報に基づいて報道しているのだが、事実でないことが別のジャーナリスト、アレクサンドラ・スティグルマイアーやマーティン・レットマイアーらによって確認されている。この偽報道が評価され、1993年にガットマンはピューリッツァー賞を贈られている。なお、ICRC(赤十字国際委員会)によると、戦争では全ての勢力が『不適切な行為』を行っているが、セルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はない。(Diana Johnstone, "Fools' Crusade," Monthly Review Press, 2002)

 このガットマンは昨年、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を組織したのはシリア政府だとする記事を書いている。本ブログでは何度も書いてきたが、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュの戦闘員はサウジアラビアなどが雇い、アメリカなどが訓練して武器/兵器を供給してきた。こうした事実はアメリカの政治家や軍人も認めている。ガットマンはシリアでも偽情報を流したわけだ。

 ところで、ビル・クリントン大統領に対する攻撃はルウィンスキーが登場したころから急速に下火になるのだが、その頃にクリントン政権の性格も大きく変化していた。当初は戦争に消極的だったのだが、1997年1月にズビグネフ・ブレジンスキーの教え子で好戦派のマデリーン・オルブライトが国務長官に就任するとユーゴスラビア攻撃に向かって進み始めたのだ。彼女は1998年秋に空爆支持を表明している。対ロシア戦争の幕開けとも言える。

 このオルブライトを政権に引き入れたのはビルの妻、ヒラリーだと言われている。そのほか彼女と親しくしていたネオコンのビクトリア・ヌランドも国務副長官の首席補佐官として政権に入っていた。

 そして1999年3月、NATO軍はユーゴスラビアに対して全面攻撃を加え、4月にはスロボダン・ミロシェビッチの自宅が、また5月には中国大使館も爆撃されている。中国大使館を爆撃したのはB2ステルス爆撃機で、目標を設定したのはCIA。誤爆でないことは確実だ。

 現在、トランプ大統領はロシアとの関係修復を目指している。すでにTPPを葬り去っているが、経済を破壊して投機市場を巨大なカジノにするために廃止されたグラス-スティーガル法(1933年銀行法:銀行業務と証券業務の分離)を復活させようとしているとも言われている。

 現在のアメリカは生産を放棄、基軸通貨であるドルを発行することで生きながらえているのだが、それを可能にしているのはペトロダラーの仕組みを使ったドルの回収や投機市場への吸収。グラス-スティーガル法が復活したらそうしたことが困難になってしまう。現在の金融システムで資産を膨らませている支配層にとっては由々しき事態だ。

 ちなみに、クリントンが大統領を辞めるとき、弁護費用などが嵩んで夫妻は多額の借金を抱えていたと見られているのだが、現在は大金持ちのようだ。





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最終更新日  2017.02.11 06:27:52



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