漆黒の瞳の奥に蒼い閃光が走ったかと見えた次の瞬間、トゥパク・アマルの握る重厚な剣の切っ先が、司祭のたるんだ首筋にピタリとあてがわれた。
それは、先刻、司祭自身がアリスメンディに斬りつけた、あの聖剣と同じものであった。
今、その剣は、トゥパク・アマルの手の中で、直視できぬほどの眩い黄金色の覇光を放っている。
かたや、司祭は飛び出さぬばかりに目を剥いて、口から泡を吹きながら悲鳴を上げた。
「ひぃ…い……!!
な、何をするのじ…ゃ…!」
その司祭を冷徹に睥睨するトゥパク・アマルの能面のような表情が、濃さを増す闇の中に蒼白く浮かび上がる。
「あくまでお気持ちが変わらぬというのであれば、ご覚悟を決めてもらわねばなりますまい。
あなた様たちによって虐げられ、命を奪われた、民の深き悲しみと無念の刃、お受け頂くことになりましょう」
次の瞬間、トゥパク・アマルの手に握られた剣先が、己の首筋にさらに強く押し付けられる感触――!!
「ギャアアアアアアアア―――ッッ!!!」
モスコーソの半狂乱の絶叫が室内に反響した。
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≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪モスコーソ司祭≫(スペイン軍)
植民地ペルー副王領におけるカトリック教会の頂点に立つ最高位の司祭。
単に宗教的な意味合いで高位に君臨する存在というだけでなく、植民地統治においても絶大な発言力を有する政治的権力者。
キリスト教の名を笠に着て、いかなる冷酷な所業をも行う一方で慈愛深げに振舞う、奇態な人物。
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