慄きながら咄嗟に壁に目を走らせれば、剣は、いつも通りの場所に静かに立て掛けられたままである。
モスコーソは、安堵とも疲弊ともつかぬ、深い息をついた。
眠っている間に、首をどこかに打ちつけてしまったのに相違無い、と己を懸命に宥めながら、椅子からフラリと立ち上がる。
そのまま、重い体を引き摺って、ヨロヨロと窓辺に向かった。
窓外には、クスコの街を囲むアンデスの山々が見晴らせる。
しかし、その霊峰群を包むように広がる上空も、今は大量の血を流し込んだように、不気味にドス黒い色をしている。
「ええい!!」
モスコーソは吊り上った目元をわななかせながら、荒々しい足取りで机にとって返した。
そして、先ほど捻り潰した紙片をまた乱暴に取り上げ、さらにビリビリに引き裂いていく。
(このようなもののせいで!!
アリスメンディ…トゥパク・アマルめ――!!)
【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆
≪トゥパク・アマル≫(インカ軍)
反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。
インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。
インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。
「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。
清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。
≪モスコーソ司祭≫(スペイン軍)
植民地ペルー副王領におけるカトリック教会の頂点に立つ最高位の司祭。
単に宗教的な意味合いで高位に君臨する存在というだけでなく、植民地統治においても絶大な発言力を有する政治的権力者。
キリスト教の名を笠に着て、いかなる冷酷な所業をも行う一方で慈愛深げに振舞う、奇態な人物。
◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆
◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆
目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら
★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!
(1日1回有効)
(随時) 