|
カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
アレッチェの身体の表面を覆っている外壁――と感じられるものは、恐らく、彼の皮膚であろう――に近づくほど、辺り一面にはドス黒い墨状のものが充満していく。 気体とも液体ともつかぬ、その正体不明の暗黒色が、コイユールの目の中に飛び込んできて彼女の視界を奪い、さらには喉にも侵入してきて、息を詰まらせる。 恐らく、アレッチェの負った重度の火傷の酷い傷痕が、治癒する兆しも無く、こうして悪辣(あくらつ)な毒素を体の内外に吐き散らしているのだろう。 毒が目にキリキリ沁みるのと、殆ど息のできぬ苦しさと衝撃、そして、あまりにアレッチェが痛々しくてならず、コイユールの目からは涙がハラハラと零れ落ちた。 そうしながらも、彼女は、自分の魂の奥底から引き出すようにして、己の手の平に、黄金色に輝く光を灯す。 その光を両手で優しく玉状に丸めて、それに向かってインカのマントラの言葉を唱え、癒しの祈りを込めていく。 「Teqsetiti…Pachayachacheq…Teqsemuyuq……」 まるで生命を吹き込まれていくかのように、彼女の手の中で、光の玉は清(す)んだ輝きを強めながら、両手で抱えるのが精一杯なほどまで大きく膨らんでいく。 神聖なパワーを宿したその光の玉を、コイユールは、アレッチェの皮膚に向けて、渾身の思いを込めて投げ放った。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪コイユール≫(インカ軍) ≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.02.28 00:06:32
コメント(0) | コメントを書く
[第10話 遥かなる虹の民] カテゴリの最新記事
|