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confuoco Dalnara

オアシス

ハヤン・ナビ(白い蝶)のオアシス
魂の楽園、純粋結晶。


感覚が研ぎ澄まされていく。
はじめはコンジュ(ムン・ソリ)の表情がいつも怒り悲しみ恐れているように見えた。

コンジュがジョンドゥ(ソル・ギョング)と出会い恋をしていくにしたがって
彼女の表情の繊細な変化を追い、
彼女の発する言葉を聞き取ろうとするようになった。

この映画をみるまでは、コンジュのような脳性麻痺の人たちの
感情が顔にあらわれていることを意識していなかった。
彼らが表情や行動でなにかを訴えようとしていたとしても
(自分にはわからない)と思ってしまっていただろう。

Matthew 13 の一節、
Though seeing, they do not see;
though hearing, they do not hear or understand.
(見ているようで見ていない、
聞いているようで聞いていないし理解していない)
が思い浮かんだ。
映画を観るまではまさにこのような状態
彼らと私たちには壁がある、意思の疎通はできない
という意識が根底にあった。

でもジョンドゥは違った。コンジュの周りの人たちと違って
彼女の話を聞き、彼女を尊重し、無償の愛を注ぐ。
コンジュの口のまわりについたチャジャンミョンのソースを拭いてあげるのも
まず自分の手をきれいにふいてからコンジュの口のまわりを触る。
深い愛情と尊敬がなければ男性が女性に対してできないだろうしぐさが象徴的だった。
たとえジョンドゥが前科者で常識はずれな行動をしていても
コンジュを愛し、守っている姿を見るとそんな事実は吹き飛んでしまう。

コンジュとジョンドゥふたりの会話は恋するきらめきに満ちている。
社会から疎外されたようなふたりの物語だが
ユーモアにあふれている描写もあり、
観ていてふんわりとやわらかく繊細な気持ちになる。
コンジュの女らしい感情の表出やしぐさに魅了された。
例えば、好きな色はなに?とジョンドゥに聞いてから
自分が先に「白が好き」とこたえるコンジュ。
ジョンドゥも白が好き、と知ったときのうれしそうな得意そうな顔。
好きな季節は?とまたコンジュが聞いて、ジョンドゥが答える。
ジョンドゥの好きな季節は夏だった。
夏のきらいなコンジュはジョンドゥの答えを聞いてがっかりしたようなちょっと怒ったような表情を見せる。

コンジュが脳性麻痺のない姿になって
ジョンドゥとデートしているコンジュの夢想のシーンがいくつかある。
辛い現実から自由になりたい、という思いからだろうか
楽しそうな空想の場面は観ていて少し心も痛む。
その夢想の場面のひとつ、地下鉄の駅でコンジュが歌う歌は
ムン・ソリが施設で会ったオンニ(お姉さん)が好きな曲だという。
ムン・ソリは脳性麻痺の女性を演じるために実際に施設で過ごし、
ふたりのオンニと特に親しくなって食事や映画などにも出かけるようになったと言う。
演じることの困難さやプレッシャーを感じた時も
(大好きなオンニを演じるのだからうまくいく)と思ったそうだ。
麻痺を表現するための無理な姿勢のために骨盤や脊髄の辺りが麻痺してしまい
撮影後に治療を受けたとも言う。

一方、役柄に応じて10キロ太ったり、今度は1ヶ月の間に18キロも体重を落とす、
まるでロバート・デ・ニーロのように変幻自在なソル・ギョングは
この映画ではひたむきな愛情を繊細な表情で見せてくれる。

ムン・ソリが記者会見で
「私の人生で最大の葛藤」と語っていた通り
体を捻じ曲げ、顔を歪める役を演じることを決意するのは容易ではなかっただろう。
周囲の人からもこの役は女優としてマイナスだと言われたそうだが、
「監督とギョングさんがいなければ、この演技は出来なかったと思います」
と話していたように、イ・チャンドン監督の前作『ペパーミント・キャンディ』に続いての
イ・チャンドン、ムン・ソリ、ソル・ギョング3人のコラボレーションが際立つ映画だ。

白が心に残る。
白は無垢の色、そして自由の象徴のようだ。
蝶は魂の化身と聞くが、
鏡の破片が映す白い光が天井で踊って、やがて蝶に変わって飛び立つ場面は
コンジュの魂が不自由な肉体から解き放たれ自由になったことを象徴しているようだった。
映画の終わりのほうで部屋の中に白い塵が舞う場面も
蝶のようにふわりとした飛翔に見えて、
ふたりの魂もふたりの愛も自由なのだという希望を抱かせる。

ムン・ソリが映画について
「2人の愛は、彼らの人生において唯一のオアシスだったのだと思います」
と語っていたように
ふたりが愛をまっすぐに伝え合う姿は
砂漠のオアシスのようにみずみずしい輝き。
ふたりの絆、魂の楽園を描いた愛の賛歌。
観終わった後も余韻がしばらく消えない作品。

ムン・ソリの歌う「私がもし」の第一声は鳥肌がたつ。
イ・ジェジンのテーマ音楽は子象のタンゴ♪みたいにユーモアのあるメロディではじまり、
棍棒を持つシヴァの手(「アンコールワットとクメール美術の1000年展」)のような
丸い指先の描く曲線に変わっていくよう。
Brown Eyesの「白い蝶」という歌もなぜか思い浮かぶ。映画に合っているような気もする。

to be continued...!?

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